「小説家になろう」、「カクヨム」小説投稿サイト隆盛のいま。連休は読むでも書くでも小説に挑む!?

「小説家になろう」、「カクヨム」小説投稿サイト隆盛のいま。連休は読むでも書くでも小説に挑む!?

イラスト/いらすとや

◆小説投稿サイトで100万字以上書いてみた

 先日、『やる気なし英雄譚』などで知られる津田彷徨氏の『なぜ「異世界転生」は若者にウケ続けるのか?』という記事が一部で話題になった。

 同作品は、MFブックスより書籍化されている。「小説家になろう」で掲載されている同作品の文字数は約114万字。実際にサイトを利用して書いている人の記事なので説得力がある。

 ちなみに小説だと、だいたい10万字で薄い文庫本1冊分程度の分量がある。約114万字ということは文庫本10冊程度の量になる。

 少し計算してみよう。400字詰め原稿用紙300枚にびっしり文字を書くと12万字。小説の新人賞の応募規定が、だいたい300枚以上〜450枚程度だ。それぐらいあれば本1冊分に足りる。10万字というのは、本の分量の目安として分かりやすいので覚えておくとよいだろう。

 さて、「小説家になろう」には、私も思い入れがある。松本清張賞の最終候補に2年連続残っていた頃、私も「小説家になろう」で120万字強の作品を書いていた。『部活の先輩の、三つ編み眼鏡の美少女さんが、ネットスラングに興味を持ちすぎてツライ』という1話完結、連作短編のコメディ作品だ。

 その時期私は、同作をほぼ毎日書いてアップしていた。そして季節に合わせて話を作り、クリスマスや正月など、リアルタイムの行事に連動させていた。同作品は、後にカクヨムにも転載した。

 一般文芸の新人賞に真面目な作品を送りながら、ネット小説でライトな作品も執筆する。小説投稿サイトは若者向けの場所と思われがちだが、高い年齢層の人間も多くいる。また、長年小説を書いている人や、プロ作家、セミプロ作家も多数いる。

「小説家になろう」は、日本最大級の小説投稿サイトだ。Similar Webにおける日本のウェブサイトランキングでは、記事執筆時点で21位となっている。ワールドワイドのグローバルランクでも208位だ。Similar Webの分析によると、1ヶ月あたりの合計本問数は16億、平均滞在時間は29分となっている。

 同サイトには圧倒的な訪問者の数がある。パイが大きいということは様々な人がいるということだ。多くの読者がいるということは、「読まれる」機会を求めて、色々な背景を持つ書き手が集まってくるということだ。

◆作家志望者の「精神と時の部屋」

 私が小説投稿サイトに小説を書き始めたのはフィードバックを求めてだった。出版社が主催する一般文芸の新人賞に送っても、最終候補に残らなければ選評すらもらえない。賞によっては、最終候補に残っても「落ちました」の電話だけで終わる。過去に、KADOKAWAの日本ホラー小説大賞で2回最終候補に残ったが、電話連絡だけでフィードバックはなかった。

 ライトノベルの新人賞はもう少しましで、全ての応募者に選評が付くものが多い。しかしネット小説なら、もっと簡単に反応が得られる。書いて公開すれば感想をもらえる。毎日公開すれば毎日フィードバックが得られる。そうなると、新人賞と小説投稿サイト、どちらがPDCAを多く回せるかという話になる。

 私は一時期、小説投稿サイトを「精神と時の部屋」(ドラゴンボールに登場する亜空間の修行場)と呼んでいた。短時間で、待ち時間ほぼゼロで、どんどん実験ができるからだ。

 ネット時代になり、イラストやマンガなど、フィードバックを短時間で得ることで若手が急成長する様子が見られるようになった。小説も、そうしたサイクルに入っている。しかし、そうした実情は利用者以外には知られていない。

 こういった話は、自身の体験を織り込みながら、拙作小説『#電書ハック』にも書いた。

◆「異世界転生」という言葉に代表される「異文化扱い」

「小説家になろう」の話がネットに登場する際は、だいたい「異世界転生」という言葉とセットで語られることが多い。この言葉を、蔑視の意味で使う人も一定数いる。

 異世界転生とは、以下のようなものだ。現代社会の人間が、事故などで異世界に転生して、現代知識を利用して活躍する。「小説家になろう」上で大いに流行り、亜種が多数生まれた。

 こうしたフォーマットが形成されることは、コンテンツではよくある。時代劇、西部劇、スペースオペラ、刑事物、オカルト物。「そうした作品である」と読み手に提示すれば、共通の知識があるものとして多くの説明を省略できる。それはフォーマットに馴染んでいる人には分かりやすく理解しやすい作品となり、手に取りやすいものになる。

 ネット小説、特に「小説家になろう」では、そうした新しいフォーマットが成立して共有された。それは特徴の1つではあるが、そうしたフォーマットとは無関係の作品も多い。同サイトを知らない人が、分かりやすいラベルとして「異世界転生」を選択して、利用しているに過ぎない。そうした人たちにとっては、ラベルを貼らないと説明できない「異国」「異文化」状態なわけだ。

◆「小説家になろう」「カクヨム」代表的な小説投稿サイト

 小説投稿サイトは複数ある。そして場所によって少しずつカラーが違う。筆者は一時期、それぞれの違いを確かめるために、多数のサイトに投稿していた経験がある。有名なところを中心に、いくつかのサイトを紹介しよう。

●【小説家になろう】

 株式会社ヒナプロジェクトの小説投稿サイト。2004年4月2日オープン。開設当初は個人サイトだったが、2010年に法人化した。昔からあるサイトなのでUIが古く、ガラケー時代のサイトに見える。

 同サイトに掲載された人気小説を、出版社が文庫化するというビジネスが出版界を席巻した。そうした作品群を「なろう系」と呼ぶこともある。

 読者評価によるランキングが常時公開されており、ポイントなどで外部からファン数が可視化される。出版社は、その数字を見て、見込み顧客数を確認してから書籍化を打診する。

 投稿者間で人気争いをして、その中で勝ち残った人の作品が書籍化されるわけだ。私はこうした形態のビジネスを、個人的に「蠱毒ビジネス」と呼んでいる。

 小説家になろうでは、コンテストなどで多くの出版社とコラボレーションをしている。ただ、先駆者である故のトラブルも多い。出版慣れしていない個人と、雑な対応をする編集者が接触した際のトラブルは、時折目にする。また出版後、続刊が出ないことで作者の心が折れ、連載が止まる現象も発生している。

●【カクヨム】

 KADOKAWA系列の小説投稿サイト。2016年2月29日オープン。物凄い勢いで伸びている。

 同サイトは、後発の強みを活かして、小説を投稿しやすいUIとなっている。単に小説をネットに投稿するだけなら、ここが一番楽だ。

 はてなブログなどを運営している株式会社はてなが開発を担当しているので、ユーザー投稿サイトの作り込みに慣れているのも大きいだろう。

 はてなは、マンガビューワの分野でも存在感を示しているので、今後も出版社とのコラボレーションは増えるだろうと思われる。

 また、カクヨムでは、投稿者のマネタイズに乗り出すことを発表している。そうした面でも、今後注目のサイトになるだろう。

●【アルファポリス】

 小説だけでなくマンガなど多ジャンル。2000年8月に設立。投稿された作品の書籍化ビジネスを手掛ける。

 他のサイトにはない変わったところとしては「出版申請」がある。同サイト上でのポイントが高くなったタイミングで出版申請ができ、出版の検討してもらえる。書籍化が中心のビジネスであることが、このシステムからもよく分かる。

●【エブリスタ】

 DeNAとNTTドコモとの共同出資企業。10年4月1日設立。

 恋愛、BL系に強い印象。ライトノベルというよりは一般文芸寄り。

 小説投稿サイトとしては珍しい「ページめくり方式」(多くのサイトはスクロール形式)。そういう意味では、Web小説よりも「紙」を嗜好しているイメージ。ただ、改行や1行の分量などからスマホ特化型と感じる。

 同サイトは1ページずつ文章をレイアウトしていく方式のため、小説の投稿時に、PCで書いたテキストをコピペでまとめて貼るという方法が使えない。複数のサイトに同じ小説を投稿しようとすると、この仕様で挫折する。

 エブリスタでは、1ページごと見栄えを考えて文章を練り込むことになる。そうした見せ方をこだわれるところが、男性よりも女性に受けている原因のひとつではないかと感じる。

◆「LINEノベル」の登場

 さて、こうした小説投稿サイトだが、その勢力図が変わりそうな発表が先週行われた。「LINEノベル」の登場である。

 国内最大級のSNSであるLINEのプラットフォーム上で、小説投稿サイトを運営するというものだ。

 新レーベル「LINE文庫」「LINE文庫エッジ」の統括編集長は、ストレートエッジの代表である三木一馬氏である。「LINEノベル」公式作家は、ライトノベルで著名な作家が多数並んでおり、本気度を窺わせる。

 また、「LINEノベル」は、「書籍化する出版社を選べる小説プラットフォーム」ということを謳っている。KADOKAWA、講談社、新潮社、集英社、実業之日本社、宝島社、東京創元社、文藝春秋が参画しており、出版界注目の取り組みとなっている。

 紙の本の部数が落ち、出版界の減収が報道される中、小説投稿サイトに出版界の注目が集まっている。特にライトノベルは、マンガ化、アニメ化など、メディアミックスがよく行われており、収益性の高いジャンルだと言える。

 私自身もこうしたライトノベルに参加してみたいが編集に伝手がない。小説を書いていくなら、どうにかしてこういう場所に絡んでいかないと将来はないのだろうと感じている。

◆ゲーム開発者が見たギークニュース

<文/柳井政和 photo by Ken Yamaguchi via flickr(CC BY-SA 2.0)>

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。

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