大型グッズショップ、新室内練習場がオープン ハード面でも躍進を目指す西武ライオンズ

大型グッズショップ、新室内練習場がオープン ハード面でも躍進を目指す西武ライオンズ

メットライフドームの環境を再現した内野フィールドで、バットを振る松井稼頭央二軍監督

 本拠地メットライフドームで180億円規模の大規模な改修を行なっている西武ライオンズ。その第一弾として7月より新選手寮、室内練習場、大型グッズショップ、そしてオフィス棟が稼働した。

◆グッズショップに透過性特殊LEDガラスを採用

 まず今回の改修でファンにとって一番身近なニュースといえば、ライオンズ チームストア フラッグスだろう。新たに生まれ変わったグッズショップへの注目度は高く、オープン初日には大行列ができた。

 600uという広さもさることながら、やはり目を引くのは透過性特殊LEDガラス、「G-Smatt GLASS」だ。夜間にはオリジナル映像が流されるなど、近未来的外観に圧倒される。ボールパーク推進部の加藤大作氏は、その効果についてこう語る。

「改修計画のなかで、駅を降りたときに、『日常』から『非日常』のボールパークへと切り替わるスイッチとなる仕掛けがほしいと考えていました。そこでG-Smatt GLASSを見つけて導入を思いついたんです。その後、実現性を追求し採用することができました。社内のメンバーも実物を見せるまではその迫力が伝わりづらかったのですが、導入後は夜のボールパークの顔として新しい価値を産む可能性を感じてもらっています」

 ’21年からは球場内のビジョンとも連動させるとのことで、さまざまな活用法が期待できそうだ。

「今回用意した映像の中で、球団歌『地平を駈ける獅子を見た』をテーマにしたものは、お子さまも一緒に歌ったり踊ったりして楽しんでいただけるよう

に制作しています。

 今後の展開は現在検討中ですが、このG-Smatt GLASSを導入したことによって、他の球場にはない場内演出を展開できるようになりました。今後もガラスの大きさや透過性などの特性を活かして、シリーズイベントや季節にちなんだビュジュアルアートで建物をラッピングするなど、新しい映像体験をご提供してファンの皆さまに楽しんでいただければと思っています。

 将来的にはナイター試合観戦の楽しみのひとつになるようなものに発展していければと思っています」(加藤氏)

◆考え抜かれたデザインと導線

 また、ショップ内部では大きな吹き抜けや広々としたカウンターが印象的だ。こうした店内のデザインにもこだわりがある。

「象徴的な吹き抜けを、より印象的にするためにはどうするのがいいかを考えました。そのなかで、大きなものでインパクトがあり、かつチームやグッズの代表的アイコンである球団旗・プライマリーマーク・エンブレムを採用しました。

 大型のバナーを設置することで店内に圧迫感を与えないよう、透過性のある素材を採用し、透けても裏面は見えづらい素材を採用することでうまく店内を演出することができたのではないかと考えています」(ボールパーク推進部・丸山雅之氏)

 グッズ販売はプロ野球に限らず、スポーツチーム全般において重要な要素のひとつ。店内の導線もファンのニーズに応えるとともに、スムーズな人の流れを実現できるよう考え抜かれた。

「お客さま用の出入口は6箇所設けています。現在はすべての出入口を使用しておりませんが、将来的には入場ゲートの位置の変更を予定しており、野球開催日・非開催日での使いわけを想定して設計しています。

 旧フラッグスのレジは5台で、これまでお客さまをお待たせすることが多くありました。ライオンズ チームストア フラッグスは、旧フラッグスと対面型売店(ストア#1、#2、ビジターストア)を統合して建設しております。その分レジ数を倍増しました。入って正面奥にワイドのあるレジスペースを設けることで、奥行き感を出すとともに、スタッフも正面を向くことでお客さまを迎えられる体勢を整えています」(事業部・荒木浩基氏)

◆12球団最大規模の室内練習場

 ファンにとって嬉しい新施設がオープンした一方、今回の改修計画第一弾では選手やスタッフの強化の拠点となる新たな室内練習場「ライオンズ トレーニングセンター」も完成した。

 内部には50uの内野フィールドエリア、横幅4mのブルペンが5つ、バッティングレーンが4つ設置され、12球団最大級のものとなっている。球団本部長補佐の広池浩司氏はトレーニングセンターについて次のように説明する。

「チームの課題としてピッチャーの育成を最優先に考えています。そのため打撃レーンと、プルペンのレーン数の内訳を検討する際にも、バッティングレーンは旧室内練習場の2倍の4レーンを確保できたので、まず優先すべきはブルペンだと思い、5レーンを確保しました。

 間をつめれば6レーン確保することも可能でしたが、必然的にレーン幅が狭くなります。隣の投手を気にせずに、より集中して投球練習ができるように、レーン幅を広く設けられる5レーンにしました」

 ブルペンのレーン幅は、4mあり、旧施設と比較して約2倍の幅を設けているという。単に最新設備を導入するだけでなく、将来的な育成計画を見据えた設計となっているのだ。

◆メットライフドームの環境を再現

 また内野フィールドエリアにはメットライフドームと同じ人工芝が敷かれ、アンツーカ部分が土になっており、試合を行うのと同じ環境で練習できるようになっている。

「当初は、アンツーカの部分も芝にする案がありました。施設管理上は、そのほうが楽ではあります。しかしながら、投内連携やシートバッティング、盗塁練習をするにあたって土をかむ感覚は必要です。いかに実践に近い環境で練習をするかが大事ですし、トレーニングセンターで経験を積んでメットライフドームで、活躍する選手が一人でも多く輩出できるように同じ環境を整えました。

 辻発彦監督や松井稼頭央二軍監督からもアンツーカは絶対に確保してほしいと強い希望がありました。早い段階でリクエストがあったので、調整し応えることができました」(広池氏)

 このトレーニングセンターについては、松井稼頭央二軍監督も満足しているようで、若手選手の育成にも一層力が入りそうだ。

「雨の日でも十分な練習ができますし、野手と投手で内野フィールドエリアとバッティング・ブルペンレーンを交互に使うことで効率的なトレーニングができると思います。教える側としてもスゴく楽しみですね」(松井二軍監督)

 新トレーニングセンターには、実際にプレーする選手はもちろん、指導するスタッフにとっても効果的な仕掛けが施されている。

「たとえば監督室からトレーニングセンター内を見ることができる窓を設置しました。また、ミーティングルームや多目的ルームなど、腰を落ち着けてコミュニケーションを十分に図れる場所を設けました」(広池氏)

◆トラックマンや映像遅延装置も導入予定

 トレーニングセンター内には今後トラックマンも設置される予定で、その設備はさらなる進化を遂げていきそうだ。

「トラックマンに加えて、最新の映像遅延装置も導入する予定です。映像遅延装置は投球フォームを自動的に数秒後に画面に映し出すことができます。これまでは試合で投げないと計測ができなかったので、練習の段階からいろいろと試すことができます。

 またプレスルームの下には、当初ストレッチエリアとして使用する想定だったスペースがありますが、選手強化に繋がる設備を導入しようかなと検討しています」(広池氏)

◆ファンが練習を見学できる設備も

 実はこのトレーニングセンター、その一角から選手たちの躍動する姿を覗くことができる。「ファンデッキ」と呼ばれる見学箇所が設置されており、貴重な練習風景を見ることができるのだ。その狙いについてボールパーク推進部・赤山智志氏はこう語る。

「新しい室内練習場の検討を始めた当初から、お客さまの選手・球団へのエンゲージメントを高める、選手をお客さまの目に触れさせる仕掛けとして、日常的なタッチポイントを設けたいと検討を進めておりました」

 「ファンデッキ」の設置については、ファンサービスという意味合いはもちろん、育成面での効果も見込んでいるという。

「チームとしては、多くのファンの方にライオンズの練習風景を見てほしいと思っています。ファンの方に見られていることで、プロとしての意識や緊張感を持って練習に取り組むことで、よりレベルアップに繋がっていくと考えています。

 同時にファンの方も室内練習場で練習風景を見学し、選手への思い入れも強くなっていくと思います。その選手が試合で活躍したときには、ファンの方とともに喜びをわかち合えると思っています。ファンの方と選手同士、互いにいい相乗効果が生まれると期待し、チーム側と事業側の意見が合致しました」(広池氏)

 新たなグッズショップや屋内練習場といったハード面を改修したことで、今後はファンや選手、スタッフといったソフト面での伸びが期待される埼玉西武ライオンズ。チームの成績だけでなく、今後は球団全体の動向にも注目だ。

<取材・文/林 泰人 撮影/渡辺秀之>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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