「彼氏より私が『8Mile』に衝撃を受けた」『甘えちゃってSorry』の女性ラッパー、AYA a.k.a. PANDA<ダメリーマン成り上がり道#21>

「彼氏より私が『8Mile』に衝撃を受けた」『甘えちゃってSorry』の女性ラッパー、AYA a.k.a. PANDA<ダメリーマン成り上がり道#21>

MC正社員(左)とAYA a.k.a. Panda(右) <撮影/荒熊流星>

 イベントの集客を増やすためには、軽い興味で現場に足を運んでくれるライト層を取り込むことが必要だ。戦極MCBATTLE を主催するMC正社員は、過去に「女性口説きMCバトル」「フィメールラッパー手作りお弁当バトル」などの名(迷)イベントを開催してきたが、そこには『甘えちゃってSorry』でブレイクしたAYA a.k.a. PANDAも参加していた。

◆音楽ライターやブレイクダンスもこなす

 MC正社員の連載『ダメリーマン成り上がり道』の第21回は、ラッパー・AYA a.k.a PANDAとの対談。今回は2人が関わってきたバトルイベントを振り返る。

MC正社員(以下、正社員):「俺が最初にアヤパンと会ったときは、音楽じゃない仕事をしてたよね。ライターの仕事とかやっていたでしょ」

AYA a.k.a. PANDA(以下、AYA):「ストリートダンスのフリーペーパーの『movement』とかを書いていた時期ですね。私、そもそも最初は音楽じゃなくてブレイクダンスをしてたんですよ」

正社員:「そうだったんだ!」

AYA:「正社員さんと最初に会ったのはDJ会長さんの紹介ですよね。会長さんと知り合ったのも、私が大宮ソニックシティの外でダンスをしていて、そこで声をかけられたのがきっかけだったと思います」

正社員:「DJ会長は『戦極MC BATTLE』の前身の『戦慄MC BATTLE』をはじめた人で、本人はラッパーじゃなくてダンサーなんだよね。だから『戦慄MC BATTLE』は、ダンスの時間とMCバトルの時間の両方があるイベントだった。アヤパンはなんでMCバトルに来るようになったんだっけ? 当時、女のコは全然いなかったのに。ライブをしに来てたんだっけ?」

AYA:「出会ったときは、まだライブはしてないですね」

◆彼氏より私が『8Mile』に衝撃を受けた

――音楽のライブをはじめたきっかけは何だったんですか?

AYA:「ダンスをしていた時期からクラブに通ってたんですけど、ケガをしてからあまり踊らなくなって。それでショーケースの取材をはじめてから、『私もステージで何かアクトをしたいな』と思ったんですよ。最初は歌を歌っていたんですけど、もともと日本語ラップが好きだったから、ラップのほうにたどり着きました」

――どんなアーティストが好きだったんですか?

AYA:「キングギドラとかNITRO(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)とか、雷とか妄走族とか……。ホントに日本語ラップで中心にいた人たちですね」

正社員:「アヤパンはエミネムの映画『8Mile』を彼氏と見て、それがきっかけでラップを始めたんだよね」

AYA:「そのことは前に曲にもしています」

正社員:「彼氏がぜんぜん『8Mile』に興味がなくて、私のほうが衝撃を受けて、みたいな曲でよく覚えている」

AYA:「それ、ほぼリリックのまんまですよ(笑)」

正社員:「それでアヤパンは、僕のイベントでよくライブをしてくれるようになったんですよ。主に出てくれていたのは、僕とラッパーのMETEORがやっていたFruitPonchi(フルーツポンチ)っていうイベントですね。アングラのいいメンバーが出ていたんですけど、女性のお客さんも増やしたかったのもあって、アッパー系のライブをやるアヤパンに声をかけた感じでした」

◆昔のバトルシーンには犯罪者もたくさんいた

――その頃のMCバトルのお客さんはほぼ男性ですか?

正社員:「そうですね。SKY-HIが出たときに女のコのファンが来るくらいで」

AYA:「本当に男ばかりでしたね。そんな中に私はチョコーンっている感じ。よくあの場所にいたよな〜って今は思います」

――そういう場所にいてトラブルとかはなかったですか?

AYA:「全然ありましたよ!」

――話せる範囲のことだと、どんなことが。

AYA:「話せる範囲はね……いや、難しいな(笑)」

正社員:「アヤパンは酔ってもケンカとか全然しないタイプじゃん。いつもニコニコしているイメージだし。でも女のコではトラブルメーカー的な存在になってたコもいたよね。そのコを巡って喧嘩になって窓ガラスを割って大事件になったりとか」

AYA:「コンビニのガラスを割った人もいましたよね」

正社員:「ラッパーでね。防犯カメラの映像から切り出した写真が貼り出されてましたから。昔はホント犯罪者もたくさんいたんですよ! 当時はこんなブームが来るとも思っていなかったから、みんなムチャクチャやってました」

AYA:「自分たちのルールの中でかっこよければいい……みたいな人が多かったですよね」

正社員:「ホント、もうちゃんとしなきゃダメですから!」

AYA:「SNSでも一言で炎上する時代ですからね。危険、危険!」

正社員:「こういう話をしていると、そりゃ女のコは寄りつかなかったよなって思います(笑)」

◆女性ラッパーが手作り料理でバトル!?

――お二人が関わっていたイベントのフルーツポンチについては、「COPPU vs AYA a.k.a.PANDA 美人フィメールラッパー手作り料理勝負!」という動画が今もネット上にありますね。

AYA:「そうそう! そういうの、やらされていました!」

正社員:「『やらされてました』って(笑)」

AYA:「いやいや、早起きしてお弁当作るのってホント大変なんですから。リハ行かなきゃいけない日だったから、チョー時間なかったし」

正社員:「そういうの、いま女性が告発すると#MeTooとかになるじゃないですか。これカットしましょうよ……」

AYA:「実際、楽しんでやってたんで全然大丈夫ですよ。あとギャグで『俺の愛人』とか勝手に言われてたりもしましたけど」

正社員:「今から掘られるとギャグじゃすまない話もありそうなんで、これ以上は勘弁してください! でもお弁当でバトルって、振り返るとマジで頭おかしいですよね。女性ラッパー2人がお弁当を持ってきて、KEN THE 390が審査してるんですよ。

 アヤパンはフツーにパンダのおにぎりとかを作ってきて、『あーお弁当だな』って感じでしたけど、対戦相手のCOPPUちゃんは重箱3段みたいな凄いやつを持ってきて」

AYA:「しかもオール手作りみたいな。私は『スパム切って焼いただけだろ!』『ミニトマト詰めただけじゃん!』とか言われて負けましたね」

◆優勝賞品が「デート券」のイベントも

――これ、何でやろうと思ったんですか?

正社員:「……覚えてない。もう本当に当時はおかしかったんですよ!」

AYA:「おかしくなってたんだ、あれ」

正社員:「最初に話したように、『戦慄MC BATTLE』はもともとダンスのパートもあるイベントだったから、ダンサーのお客さんにもバトルに興味を持ってもらうために色々試してたんですよね。その流れから、何かおかしくなっちゃって。最後のほうはアヤパンを口説くMCバトルもやってたよね」

AYA:「でしたね。私のデート券が優勝賞品になってたりして」

正社員:「でも、優勝したヤツはデート券使ってないでしょ」

AYA:「使ってないですね。掌幻さんが優勝したんですけど、使う前にご結婚されたので」

正社員:「有効期限まだあるんじゃない? でも、なんでそんなバトルイベントやったんだろう」

AYA:「こっちが聞きたいです!」

◆黎明期の珍バトル

AYA:「でも、ずっと頑張って色んなイベントしていましたよね。お弁当バトルもそうだし、女性口説きMCバトルもそうだし。あと『ストリートサイファー』ってのもありましたよね」

正社員:「格闘ゲームの中に入ってMCバトルをやるようなイベントですね。アヤパンも出ているんですよ」

AYA:「後ろにスクリーンがあって、自分が格闘技キャラになって画面に合成される感じですよね」

正社員:「お客さんが手を振ると必殺技が出るっていう。そういう2.5D的なイベントもありました」

AYA:「正社員さん、やっぱりずっと何かやっているんです」

◆バトルに関わるラッパーはみんなモテなかった!

――アヤパンさんはそうした趣向を凝らしたイベントに呼ばれてどう思っていましたか?

AYA:「私は『全然いいですよ』って感じで出てましたね」

正社員:「アヤパンは昔からそういう感じで、とにかくイイやつなんですよ。コンプレックスがないから」

AYA:「それ、ずっと前から言ってますよね(笑)」

正社員:「フルポン(フルーツポンチ)の打ち上げのときからね。フルポンのメンバーって、METEORさんと俺と黄猿、アスベスト、椎野くん(TRIPLE S)、アヤパンで。まあ男はみんなモテないヤツなのよ! 黄猿は知らないけど」

AYA:「黄猿もモテなかったんじゃないですか」

正社員:「黄猿もそうなのかなぁ?(笑)。で、そういうヤツらしか周囲にいなくても、アヤパンって“いいヤツ”なんです。今も昔も人の悪口を全然言わないし」

AYA:「悪口言うようなこと別にないじゃないですか。何かありました?」

正社員:「俺らは売れてるヤツらへの妬みとか愚痴とか、いろいろ言ってたじゃん! でも、アヤパンは当時からそれを言わなかったんです。『キレイな女のコのほうが性格悪い』的なイメージって世の中にありますけど、全然そんなことなくて」

◆マスコットガールとして活躍した時期も

――戦極MCバトルのブログを遡ると、アヤパンさんは「戦極マスコットガール」という肩書でもイベントに出ていましたね。

正社員:「そんなこともしていましたね……。今もそういう立ち位置の女のコはいるんですけど、アヤパンはその初代って感じです。戦極の10章より前のDVDにはよく出てもらっていました」

AYA:「いやー、ホントにありがとうございました!」

正社員:「全然ありがたく思ってないでしょ! そういうのに出て何かいいことあった?」

AYA:「わかんないけど、たぶん何かしらあると思います!」

正社員:「これから戦極ガールを勧誘するときは「アヤパンみたいに売れるよ!」を売り文句にしていきたいと思います」

<構成/古澤誠一郎>

【AYA a.k.a. PANDA】

‘17年11月1日に配信リリースした「甘えちゃってSorry」のMVが数百万再生回数を超える大ヒットを記録したフィメールMC。最新楽曲は7月リリースの「死んでよBABY」

【MC正社員】

戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く

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