「差別、セクハラお断り」 DJユニット・WAIFU(ワイフ)が作るクラブカルチャーの未来とは

「差別、セクハラお断り」 DJユニット・WAIFU(ワイフ)が作るクラブカルチャーの未来とは

ローレン・ローズ・コーカーさん

◆ジェンダー、セクシュアリティ、人種、年齢にかかわらず楽しめるイベント

 音楽に合わせて体を揺らしながら、お酒を楽しむ。クラブは本来誰もが安心して楽しめる場所のはずだが、そうなっていない現状がある。LGBTQが排除されたり、女性のDJや参加者がセクハラに遭ったり……。

 そうしたなか、LGBTQの居場所を作り、人種や性別、年齢などにかかわらず楽しめるオープンなクラブイベントをオーガナイズするのが、「WAIFU(ワイフ)」というユニットだ。

 通常のクラブイベントとは違い、女性を軽視したり、LGBTQを差別したりする参加者には退場してもらうという独自のルールを設けている。

 筆者は昨年12月30日に原宿のサンキースペントハウスで開催されたイベントに足を運んだ。

◆多様な人が安心して楽しめる場を作る必要がある

 会場には、「フェミニズムはみんなのもの」「トランスジェンダー差別、人種差別禁止」といったポスターが貼られていた。参加者の多様性を尊重し、誰もが居心地の良さを感じる場にするために行っているという。

 同団体の主宰者の一人であるLauren Rose Kocher(ローレン・ローズ・コーカー)さんは「LGBTQというだけで社会的マイノリティと見なし、差別するのはおかしいと思う。もっと同じ人間同士、オープンな心持ちで、他人と寄り添う気持ちを持って、多様な人が安心して楽しめる場(セーファースペース)を創っていく必要がある」と話す。

 また、WAIFUの立ち上げに参画したタニムラリサ氏は、昨年12月に渋谷で行われた「MUTEK.JP」でのトークセッションでこう述べていた。

「WAIFUの立ち上げに参画したのは、クラブがもっと安全な場所として認知される世の中になるべきだと思ったから。ある日、クラブの中で女性が痴漢の被害にあうのを目撃したが、セキュリティが『現場を見ていない』という理由で加害者を見逃しており、唖然とした。

 これが電車であれば、警察が来てすぐに逮捕されるはずなのに、クラブではなぜできないのか。もっと言えば、セキュリティの問題というよりも、クラブに来る人同士がお互いを尊重し合うような雰囲気を醸成し、自発的にセーファースペースを作っていくべきだと思った」

 この件があって以来、アンチハラスメントを掲げるステートメント(声明)を、クラブの目立つ所に貼り、性犯罪やトラブルが起こらないように呼びかけることにしたという。

「クラブでの痴漢は仕方ないでは済まされないと思う。WAIFUは女性が安全に楽しめ、安心してお酒や音楽を堪能できる空間を提供しているパーティー。今までのクラブイベントとは、一線を画す取り組みなので共感している」(タニムラ氏)

◆フェミニズムを支持する女性がもっと声を上げるべき

 年末のイベントでは、フェミニズムの思想をもとにファッションやデザイン、ZINE(少量生産の冊子)を制作するアーティストに話を伺うことができた。

「そもそもフェミニズムとは、すごく端的に言うと全ての性は平等であり、性差別がない社会を求めること。運動の歴史は長く、また一枚岩ではないため一言では語り尽くせないが、そもそもある性の多様性を紐解き、今あるような男性そして異性愛に権力が寄ったシステムを変えていくムーブメントと捉えている。男尊女卑という男性優位な社会が未だに残る中、フェミニズムを支持する人が声をあげることで、一過性のものではなく、常に世の中へ問題提起していくことが大事だと思う」

 また、DJを担当した女性は、「私はLGBTQのどれにも属さないが、フェミニズムは支持している。美容室に行った時のアンケートに、男性は会社員という記載があったのに対し、女性は主婦や有職主婦という書き方がされていたのに疑問を感じた。どうして、女性は主婦になっても仕事をすることが、カテゴリー分けされるのかが理解に及ばなかった」と、実体験を語った。

◆LGBTQの仲でも、もっと多様性を

 イベント参加者の多くは、LGBTQに当てはまる人たちであった。どのような心境でパーティーに参加したか尋ねると、ゲイの男性は「初めて参加したが、居心地の良い雰囲気で楽しい。これが新宿2丁目だと、変にレズビアンやゲイなどカテゴリーに分けられてしまうので、多様性を認めるイベントがもっとあるといい」と話す。

 また20代のレズビアンの女性は「ネットで検索してこのパーティーに辿りついた。普通のイベントと違って、自分を解放できる場所だと感じた。皆思い思いにおしゃべりしたり、踊ったりしていて楽しそう。私はレズビアンだけど、学校ではそのことを言い出せなかった。こういう居場所に来ると安心する」と、イベントの居心地の良さについて語った。

 ローレン氏は、WAIFUのイベント作りで心がけていることについて次のように話した。

「LGBTQと聞けば、新宿二丁目を思い浮かべると思う。しかし、新宿二丁目の雰囲気に違和感を覚えている人、また、Xジェンダーやノンバイナリー(性自認が女性でも男性でもない人)などは、行き場を失っている現状がある。さらに、今年4月に起きたトランスジェンダー女性の入場拒否の問題は、新宿2丁目のカルチャーには根深い複雑な状況があることを知るきっかけになったのでは。WAIFUは、そうした居場所を探している人でも来やすいようなイベントにし、誰でも寄り添えるような雰囲気作りを心がけている」

 新宿2丁目のゲイバーに端を発したLGBTQタウンの歴史は、およそ60年近くにもなる。

 長らくゲイバーやレズビアン、バイセクシャルなど、それぞれのコミュニティが形成されていった結果、古いしきたりや慣習が残っているお店に行きづらさを感じる人がいたり、トランスジェンダーやノンバイナリー、Aセクシュアル、クエスチョニング(性的指向が定まっていない、あるいは意図的に定めていない人)など、LGBT内でのさらなるマイノリティの行き場所が見つからなかったりといったことも起きているのだ。

「新宿2丁目のカルチャーの中で、トランスジェンダー男性よりも、トランスジェンダー女性の方がコミュニティに入っていけず、苦労しているイメージがある。LGBTQの中でも男尊女卑のような風潮があり、もっと寛容的で多様性に富んだ形で、受け入れることが大切だと思う」(ゲイ男性)と参加者からの声もあった。

 音楽に酔いしれ、お酒を楽しみながら踊る。そんな華やかなイベントの裏では、ジェンダーやセクシュアリティに関する様々な問題が渦巻いている。今回の取材でそうした現状を突きつけられるとともに、改めてクラブイベントの運営について考えさせられた。

<取材・文/古田島大介>

【古田島大介】

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。

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