3日間で3000枚ソールドの人気イベントを主催する20代前半の男。怨念JAPの素顔とは<ダメリーマン成り上がり道#26>

3日間で3000枚ソールドの人気イベントを主催する20代前半の男。怨念JAPの素顔とは<ダメリーマン成り上がり道#26>

MC正社員(左)と怨念JAP(右)

 戦極MCBATTLE主宰・MC正社員が、MCバトルのシーンやヒップホップをビジネスやカルチャー面から語る本連載。今回は凱旋MCbattleの主催として知られる怨念JAPをゲストに、3000人規模の会場をわずか3日で売り切るイベントが生まれるまでの背景に迫る。

◆イベントの主催は頭になかった

――怨念JAPさんとMC正社員さんは、いつ頃からのお付き合いなんですか?

怨念JAP(以下、怨念):「THE罵倒というイベントがありまして、それが毎年THE罵倒開幕戦っていうのを両国SUNRIZEでやっているんです。2015年に僕がそのMCバトルに出るため会場に行ったとき、エントリーする人のお金をもらったり、誰が出るのかチェックしたり、正社員さんが手伝っていて。ただ、その日はそれ以上絡むこともなく終わったんですよ」

――最初は出場者とスタッフとして会ったんですね。

怨念:「僕が出ているバトルの主催者だったり、お手伝いでいたという感じですね。僕が2回目に出たMCバトルが戦極のイベントで、そこから戦極やTHE罵倒に出るうち、正社員さんにお会いして話す機会が増えていきました」

MC正社員(以下、正社員):「怨念も元々はラップしていたんですよ。ただ、主催者あるあるなんですけど、あんまりラップがうまくないっていうか(笑)。 それで、主催者のほうに行くっていうパターンですね」

怨念:「そのころは自分で何かイベントをやろうというのは全然考えてなかったですね」

正社員:「僕も最初に怨念に会ったときの印象がないですね」

怨念:「『デカいなあ……』ぐらいじゃないですか(笑)。初めて会ったときは長野に住んでいて、それが東京に来て初めてのイベントでした。ヒップホップの関係者の人はもっと怖いのかなと思ってたんですけど、正社員さんがいて『あっ、結構優しそうなおじさんもいるんだな』と」

正社員:「それが18歳ぐらいのとき?」

怨念:「18ですね。高校卒業して、その3月に東京に出てきたんですよ。ラップがやりたいっていうのと、調理師学校にも行きたいと思ってて。1年だけ通って、調理師免許を取ろうと上京しました。ラップを始めたのは東京に出てきてからですね。長野にいるときは東京まで遊びに行って、ヘッズとしてイベントを観てました」

正社員:「一番初めにヒップホップとかMCバトルにハマったキッカケはなんなの?」

怨念:「お姉ちゃんですね。お姉ちゃんがヒップホップとレゲエ両方好きで。車の移動とかでも、俺が聴きたいものを聴くより、お姉ちゃんの権限が強くて、流れていたのはレゲエとかヒップホップばっかりでしたね。日本人のアーティストが流れていた記憶はあまりないですけど」

正社員:「で、だんだん自分も聴くようになってみたいな?」

怨念:「いや、お姉ちゃんはライブとかにも連れてきたかったみたいですけど、俺があまりにも興味なさすぎて。そこで『コレだったら面白い』とお姉ちゃんに教えてもらったのが、YouTubeにあがっていたMCバトルだったんですよ」

◆怨念JAPを見くびっていた

正社員:「実際に足を運んだのは?」

怨念:「2011年のUMB(ULTIMATE MC BATTLE)ですね」

正社員:「晋平さん(晋平太)が優勝したやつ? いくつのとき?」

怨念:「中学校2、3年生じゃないですかね。友達もまだ全然MCバトルとか知らなかったんで、長野からお姉ちゃんと行きました。今みたいにイベントを主催するようになったのは、正社員さんとかと連絡を取るようになって、『イベントやってみたいんですよね』という話をしてからですね」

正社員:「よくイベントに来てて、背もデカいし、見た目もいいんで、最初はスタッフとして入れてたんですよ。『平日暇だから、なんかやってみよう』と始めた戦極スパーリングっていうイベント。司会にもお金がかけられないので、最初は俺とACEがやってたんですけど、ACEが忙しくなってきて。そこでまだ全然名前のない怨念JAPに司会をさせたんです」

--なにか抜擢した理由はあったんですか?

正社員:「僕のなかで司会をやる人は絶対的に見た目がよくないといけないと思っていて。戦慄や戦極MCBATTLEでも、当時は僕らの知り合い10人とかしかいなかった。その10人のなかで一番顔が男前で、Bボーイっぽい人ってことで八文字さんにお願いしたんです(笑)。怨念も背がデカくて男前っていうのと、喧嘩を止められそうっていうことで選びました。しばらくやってたよね?」

怨念:「ずっとやってましたね。それで、『こっちのが楽しいかも』みたいな。それからは夜中、正社員さんにLINEしたり、2〜3時間電話するときもありますよね」

正社員:「でも僕は優しくはなくて、“痛い先輩”なんですよ(笑)。無抵抗な後輩に愚痴を言い続けるみたいな。怨念だけじゃなくて、当時から今でもそういう奴らがいるんですよ。怨念を見くびってましたね(笑) 」

◆愚痴を聞きつつ、ノウハウを引き出す

――そうして見くびっていた怨念JAPさんは、今や凱旋MCBATTLEを主催されていますが……。

正社員:「ZEPP Osaka Baysideのチケットが3日で売れたんでしょ? 3日で3000枚売れちゃったんですよ。そんなMCバトルのイベントないんですよ。3日で3000枚売り切るって……。戦極も3回ZEPPでやっていますけど、3回目も2週間目でやっと売り切れたぐらい。そもそも、3000人規模のMCバトルのイベントなんて他にない。俺が知ってる限りでは、高校生RAP選手権の10回目(日本武道館で開催)だけですよ」

――ここまで成功できたのは、何が秘訣なんでしょう?

正社員:「怨念はよう勉強するやつだったってことですよね。イベントのスタッフでいる人間なんて遊んでるじゃん?」

怨念:「無料で入れて……」

正社員:「関係者ヅラできるみたいな。遊んでるんですけど、怨念とかは真面目にやってた。初期段階から、俺が愚痴を言うなかで、『これはどうやるんですか』『どうしたらいいんですか』とかイベントのやり方を引き出してたと思うんですよ。そこはスゴいですよね」

怨念:「イベント自体、ベースはほとんど戦極と同じっていうか。教えてもらって作っているんで、システムとかも似てるんですよね」

正社員:「でも、凱旋のほうがイベントの展開が早いかもしれないね。ヘッズのなかでも凱旋の仮想敵が戦極になってる」

◆MCバトルイベント同士はライバル?

怨念:「結構、最近比べられるんですよね。戦極もそうだし、UMB、KOK、MRJとかもそうだし」

正社員:「戦極、UMB、KOKっていうイベントがずっとあって。あとはTHE罵倒とか。ただ、しばらく新しい大会がなかったんですよね。そこで2年ぐらい前に出てきたのが、凱旋とMRJっていう大会。『凱旋は早く戦極抜けよ』みたいなツイートとかコメントは最近よく見ますね。俺が悪で、怨念が正義みたいな流れはちょっとありますね。お前はどう思ってんだよ(笑)」

怨念:「まず、何をもってイベントの勝ち負けなのかわからないんですよ。キャパなのか、売れ行きなのか、再生数なのかわかんないですけど、あんまり他のイベントと比べられても興味がないというか。何も思わないですね。他のイベントに勝とうなんて意識は全然ないです」

正社員:「ない? ホントに……? 嘘だ!(笑)」

怨念:「一番正直に話せるのが正社員さんですから」

正社員:「昔はあった?」

怨念:「勝ちたいというか、『俺もあそこでイベントやりたい』みたいな。『自分の手元にお金があったら、こんなことできたのかな』とか、『こんなイベントを早くやりたい』みたいな気持ちはありましたけど。相手を抜かすとか、自分のイベントのほうが上という考えは特にないですね。そこで競っても、みたいな」

正社員:「僕は争いだと思ってるんで、めちゃくちゃ意識してますよ! 殺るか殺られるかだと(笑)」

 そう話しながらも、笑顔が隠しきれないMC正社員! 次回は凱旋MCBATTLEがスタートダッシュに成功した裏側を探ります。

<構成/HBO編集部>

【MC正社員】

戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く

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