「リビングに墓」墓じまいや散骨でもない新しい弔い方「宅墓」

「リビングに墓」墓じまいや散骨でもない新しい弔い方「宅墓」

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「お墓は買うと高いし、管理するのもお金がかかる。それに、墓参りなどで、遠く離れた場所で暮らす子どもや孫たちに負担をかけたくありません……。だったら、“どちらかが先に死んだら、自宅内に置く小さなお墓に遺骨を入れて一緒に暮らそうよ”と、夫と2人で決めました」

こう話すのは、兵庫県に暮らす終活中の70代主婦。従来の形にとらわれずに、自宅で故人と“暮らす”……。そんな新しい弔いの様式に注目が集まっている。

そのトレンドを作ったのが、滋賀県にある老舗石材店「浦部石材工業」の浦部弘紀社長(50)が開発した”ブックサイズ”の小型のお墓「たくぼ(宅墓)」だ。

「6〜7年ぐらい前、無縁墓が大きな社会問題になっていて、『墓じまい』をされる人も増えていました。当時、すでにバブルのころと比べて10分の1ぐらいしかお墓が売れない状況で、危機感を持っていました。それで石材店として何ができるかを苦悩するなか、考案したのが宅墓でした」

浦部社長は、故人の遺骨や遺灰を身近に置いて供養する手元供養をヒントに、室内に置ける小さなお墓を思いついたという。

開発段階では、室内インテリアとして支障がないデザインを試行錯誤しながら、1人用のコンパクトサイズのお墓を完成させた。そして’15年に「たくぼ(宅墓)」の商標登録、デザインの意匠登録を取って販売をスタートした。

販売開始当初の注文件数は月に1〜2基程度だったというが、それでも地道に販売を続けていたところ、地元メディアなどで取り上げられるようになった。すると、“こういうものが欲しかった!”と、全国から注文が殺到。今では月平均で40基の注文が入るという人気ぶりに。

「宅墓を選ぶ方は、大きく分けて3つのパターンに分かれます。1つ目は生前に“終活”のために購入される方。自分たちのお墓として注文されます。ご夫婦の場合が多いですね」

購入理由は、「後継ぎがいない」、「自分たちの死後、お墓の維持・管理で子どもに負担をかけたくない」などだという。

「2つ目は、お墓参りに行くのが大変になり、先祖代々のお墓を閉じて、その一部を宅墓で残すという方です」

厚生労働省の統計データによると、すでに墓や納骨堂に納めている遺骨をほかの墓などへ移す「改葬」の件数は、’09年に7万2,050件だったのが、’18年には11万5,384件に。“墓じまい”する人は年々増え続けていることがわかる。

「3つ目は、家族が急に亡くなられて、ご遺族が遺骨をどうしようか悩んだ末に、新たに墓を建てるのではなく、宅墓を選択するというパターンです」

お墓に対する価値観が多様化している今、弔い方も人それぞれ。墓参りはリビングで、そんな時代がくるかもしれない。

「女性自身」2021年4月27日号 掲載

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