面倒な食器洗いが楽しみに!? ストレス発散にもなる「食器洗いのコツ」#10

アイディアがひらめいたり、悩みを手放すのに実は毎日の皿洗いが効果的だってご存知ですか? 簡単な5つのポイントさえおさえれば、瞑想のような魔法の薬になるんです。お金がかからず、面倒臭い家事が楽しみになるちょっとしたコツをお伝えします。

取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani

【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 10

家事でハッピーになれる!


仕事で疲れきってようやく帰宅。するとシンクには汚れた食器が溜まっている……。「あぁあああああ、もう嫌ぁああああ!!!!!(なんなら、私の人生全般も!)」。となりますよね、わかります。家事は面倒臭くて嫌なもの、余分な仕事です。無ければ無いほど良い。でもちょっとしたコツさえつかめば、アイディアが湧いたりストレス発散してくれる強い味方になるんです!

教育に必要な3つのHって?


イギリスの思想家で、40年に渡ってエコロジー&スピリチュアル雑誌『リサージェンス(再生)』の編集長を務めたサティシュ・クマールさんという人がいます。彼はマハトマ・ガンジーの非暴力と自立の思想に共鳴し、大学院「シューマッハ・カレッジ」を創設した非常に高名な教育者でもあります。

”手に勝る道具は無い”という有名な言葉もありますが、サティシュさんは教育に必要なのは3つのH (頭/head、心/heart、手/hand)だとし、学生たちに哲学や経済について学ぶ前にまずキッチンで働くことを指導します。台所仕事では教養オタクにとどまらず、机上では得られない「手」による学びが得られるというのです。

ところで私は会社を辞めて5年弱アメリカで暮らしていたのですが、その際に合気道の開祖である植芝盛平先生に習った書道家で禅研究家の棚橋一晃先生(カズさん)に学んだことがあります。たくさんの人に尊敬されるカズさんは私が知る人物の中で3本の指に入るほど「人に言っていること」と「実際に自分が実践していること」が一致している方です。そんな彼が大切にされていたことのなかに炊事がありました。

「こんな有名な先生でも自炊されるのだ」と意外でしたが、15分以上はかけないという独自のメソッドで豆腐やチャードを86歳というお歳で見事に調理していく。そして食事が終われば丁寧にお皿を洗われます。アメリカに行く前は忙しいと料理をすることはほとんどなかった私ですが、彼に習って炊事したり、5か月ほど暮らした禅センターで典座と呼ばれる料理長と台所で手を動かすうちに、心のモヤモヤが少しずつ晴れていくと体感したんです!

皿洗いで名案が浮かぶ!


ところで食器洗いをしっかり集中して行うことでインスピレーションが湧いたり、ストレスが著しく下がったという研究結果もあります(1)。フロリダ州立大学が行ったもので、51人の生徒たちに皿を洗わせました。皿を洗う前に半分の学生に以下のような説明書きを渡します。

皿を洗う間は、皿洗い以外はしてはいけません。つまり皿を洗っているという事実に完全に気づくということです。これは一見ちょっと馬鹿馬鹿しいことだと思われるかもしれませんね。なぜこんな単純な作業にそれほどの力を注ぐのかと。でもそこがまさにポイントなんです。今その場に立って、皿を洗っているという素晴らしい事実。完全に自分自身で在り、呼吸に従い、自分の存在、考えや行動を意識しているという事実です。絶対に波の間であちらこちらと揺れるガラス瓶のように心なくさまようことはありません。

説明書きを読んでしっかり集中して皿洗いをした人たちは、インスピレーションが25%高まり、ストレス値が27%下がったといいます。これは瞑想で得られると期待される効果でもありますね。その一方で単なる皿洗いとして特に意識せず行った人はなんの効果も得られなかったのだそうです。

では具体的にでは食器を洗っているという事実に完全に気づくとはどういうことでしょう? 5つのポイントがあります。

マインドフルな食器の洗い方。


1. 台所に立つ足の感覚に意識を向ける。2. 洗剤や石けんの色、香りや手触りを感じる。3. ガチャガチャと大きな音を立てず、大切な宝石を扱うように食器を洗う。4. 食器を洗いながら思考や嫌な気持ちが湧いてきたら、洗う水の温度、食器の手触りに集中し直す。5. キレイになった食器を眺めて、心もスッキリ!

日々のプレッシャーの中で、静かで安らかな生活を求めることは自然なことです。毎日の生活から脱出して旅に向かったり、ヨガや瞑想スタジオにいくことも素敵ですね。私も大好き。でもそれに加えて「食事の後に気づきを保ちながら皿洗いをすることでも安らぎを得られる」と知っていれば安心です。なによりお金がかからないし、面倒くさい家事が楽しみになるなんてとってもおトク! 日常の小さなことや面倒臭いことをひたむきにやってみると思わぬ面白さが発見できますよ。だからといってパートナーと食器洗いの争奪戦を繰り広げる、なんてことにはならないように注意してくださいね。

土居彩


編集者、翻訳者。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にて、畏怖の念について研究するダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、13世紀の道元禅師を初めて英訳し欧米に伝えた禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。恩人たちに支えられ続けながら、会社を辞めて渡米奮闘したドタバタな当時の様子を綴ったananweb連載『会社を辞めて、こうなった』も。

(1) Hanley, A.W., Warner, A.R., Dehili, V.M. et al. Mindfulness (2015) 6: 1095. https://doi.org/10.1007/s12671-014-0360-9

?pixelfit/Gettyimages

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