弘兼憲史×池上彰「オトナの人生相談」(3)ワクチン接種をこう捉える

弘兼憲史・池上彰対談

─コロナ禍で、生活や仕事に変化はありましたか。

池上 私は大学の授業がリモートになったので、逆にパソコンに向かって原稿を書く時間が増えたくらいで、さほど変化はありません。昨年の緊急事態宣言中に書いた本がちょうど今、何冊か発売されています。これも緊急事態宣言のおかげです。

弘兼 僕ら漫画家はもともと引きこもりなので、変わったといえば、編集者が訪ねてくる代わりにバイク便が原稿を取りに来るようになったくらいです。

池上 ただ、テレビに関して言えば、以前は収録の後、スタッフが集まって会食するのが普通でしたが、今はそれができません。ワイワイガヤガヤやりながら、生まれた企画が生まれなくなってしまったことは残念ですね。

弘兼 それは出版の世界も同じです。酒の席がきっかけで、といった企画は難しくなったかもしれません。

─ところでお二人は「ワクチン接種」のご予定はありますか。接種に対して不安だという声も多く聞かれます。ぜひとも高齢者のワクチン接種に対する心構えをお伺いしたいです。

弘兼 僕は近所のかかりつけの医師のところで打つ予定です。

池上 私も近く打つ予定です。大手町の大規模接種センターでは、打った人と打ってない人が一目でわかるらしいです。打ちに行く時は下を向いているんだけれど、打った人はみんな上を向いて晴れ晴れとしているんですって。

弘兼 実にわかりやすいですね。ワクチンに関しては接種に否定的な人もいます。が、受けるリスクと受けないリスクを考えた時に、やはり受けないリスクのほうが圧倒的に高い。

池上 リスクを冷静に判断できる人は、やはりワクチン接種をするのではないでしょうか。ワクチン接種というのは基本的に社会防衛ですから。

─これからはワクチン差別も起こるのでしょうか。

池上 十分、起こりうるでしょう。例えば、会社の中で打っていない人間がいると「なんだお前、感染広げるじゃないか」みたいなことが起こりうるはずです。

弘兼 ワクチンを接種した高齢者がアクティブに動き出す可能性もありますね。

池上 7月末になると多くの高齢者のワクチン接種も終わって、抗体を持ち始めます。お金に余裕があってもどこにも行けなかった人たちが、クルーズ船に乗ったり、海外に行ったりと動き出すはずです。8月からは、間違いなく高齢者ビジネスが爆発的に伸びてくると思いますよ。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業。松下電器産業(現パナソニック)に勤務後、74年に「風薫る」で漫画家デビュー。84年に「人間交差点」で小学館漫画賞を受賞。91年「課長島耕作」で講談社漫画賞、講談社漫画賞特別賞、00年「黄昏流星群」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、03年日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章。「男子の作法」(SBクリエイティブ)など著書多数。

池上彰(いけがみ・あきら)1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、73年にNHK入局。報道局社会部でさまざまな事件を担当。94年より11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。05年にNHKを退社、フリージャーナリストとして多方面で活躍。16年4月から名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学、信州大学、関西学院大学、日本大学、順天堂大学、東京大学などでも講義する。「伝える力」シリーズ(PHP新書)、「私たちはどう働くべきか」(徳間書店)など著書多数。

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