警視庁元最高幹部が警告「サイバーテロが選手村、大病院を襲う」(1)ロシアが偵察活動

五輪選手村マンション

 緊急事態宣言下、さらなるコロナの感染拡大を懸念する専門家諸氏の声を排した上での五輪強行。すでに最悪の事態が想定されているのだが‥‥。

 コロナの感染対策について助言する厚生労働省のアドバイザリーボードは、7月7日の時点で、このままの人流だと東京五輪の期間中に都内の感染者は1日当たり2000人を突破し、8月末には4000人に達して入院患者数が病床数を超える恐れがあるとの試算を発表している。

 また、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、6月3日の参議院厚生労働委員会で「(コロナの)パンデミックの中で開催するということが普通でない」と発言し、物議を醸したことも記憶に新しい。

 専門家の反旗はこれにとどまらない。政府関係者が語る。

「声に出さないまでも、開催すべきではないと思っている役人や政治家は少なくなく、特に尾身氏と同様、専門知識のある役人らは、その見地から秘かに大反対している。そうした中で実際に声を上げた者もいる。そのひとりが、五輪組織委員会の警備の最高責任者である米村敏朗元警視総監だ。5月上旬、親しい知人に『こんな時期に五輪をやろうという政府は、どうかしている』と憤慨しながら語ったと『週刊文春』に報じられた。米村氏自身は文春の取材に対し『止めるべきだ』とまでは言っていないとはしたものの、『国民は、外国からたくさん人がやってくれば、感染が拡大するのではないかと思っている』と認めた。危機管理の専門家も懸念を表明したわけだ」

 やはり人流による感染拡大を案じてのことだとされる。

 だが、別の深刻な懸念もあるようだ。

「なぜかあまり目を向けられていない懸念材料だが、これこそコロナ禍での五輪の場合、致命的な結果を招きかねないものだ。米村氏と同じ警察の元最高幹部がすでに指摘している」

 そう前置きして、政府関係者は続けた。

「昨年3月、米田壮元警察庁長官が『深刻化するサイバー攻撃 東京五輪を守れるか』とのテーマで講演をしている。米田氏はサイバー攻撃の専門家だ。長官時代には巧妙・複雑化するサイバー犯罪への対応を託され、警察庁に分析センターを設けるなどしている。そうしたプロが、かねてその危険性を指摘していたわけだ。米田氏によれば、今回、五輪を開催すれば、サイバーテロが起こりかねないというのだ」

 これが、にわかに現実味を帯びてきている。

 5月下旬、東京五輪のサイバーセキュリティ対策を推進する内閣サイバーセキュリティセンターが不正アクセスを受け、東京五輪開催中のサイバー攻撃に備えて実施した情報共有訓練の参加者の所属先や役職、名前などが外部に流出したことが判明したのである。

「こんなのは、序の口だ」

 政府関係者はそう口にしたが、事実、これまでも五輪は何度となく、由々しきサイバーテロの標的となってきた。

 そもそも東京五輪についても、開催延期が決定された昨年3月以前に、ロシアの軍の情報機関であるGRU(参謀本部情報総局)が、サイバー攻撃のための準備として偵察活動を行っていたことが、英政府の発表で明らかになっている。

 また、ロシアは18年の平昌冬季五輪でも、開会式当日にサイバー攻撃を決行。「オリンピック・デストロイヤー」と呼ばれるマルウエア(有害なソフト)をばらまき、チケット印刷を含む運営システムを阻害した。米司法省によると、攻撃に関与したのはGRU74455部隊。司法省高官は「ロシアほど悪意を持ち無責任にサイバー能力を武器化した国はない」と厳しく指弾した。

(ジャーナリスト・時任兼作)

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