薄毛、抜け毛の対策をプロが伝授 「毛母細胞」を分裂させる食材、「デンキバリブラシ」の効果は?

薄毛、抜け毛の対策をプロが伝授 「毛母細胞」を分裂させる食材、「デンキバリブラシ」の効果は?

髪を傷めない「シャンプー」の選び方は?

 薄毛や抜け毛のメカニズムは年々明らかになっており、治療法も多様化しているが、医療機関を訪れる前に、自らできることはいくつもある。日々の生活習慣から頭皮のいたわり方まで、毛髪を熟知したプロフェッショナルたちが“上手な付き合い方”を伝授する。

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 あらためておさらいすると、薄毛・抜け毛は男女によってその原因が全く異なるものである。

 松倉クリニック表参道の田路めぐみ医師が言う。

「女性の薄毛の原因で多いのは、月経などによる鉄分や亜鉛の不足と、更年期における女性ホルモンの低下です。女性ホルモンには、髪につややかな質感を与えるエストロゲンと、しっかりした毛の成長を支えるプロゲステロンの2種類あります。これらは生活習慣によって多少増減するものの、確実に増やす方法は、ホルモン補充療法以外にありません」

 一方、男性の場合は、

「男性ホルモン作用の中心であるテストステロンが、『5αリダクターゼ』という“悪さをする酵素”によって『ジヒドロテストステロン(DHT)』という物質に変化し、これが毛根に作用して毛周期を短くし、髪の毛が細く短いうちに抜け落ちることで薄毛が発生します。この酵素は遺伝や加齢で活性が上がりますが、それ以外に生活習慣でも変動します」(同)

 というのだ。続けて、

「テストステロンは男性の健康やアンチエイジングに不可欠なホルモン。薄毛の原因はあくまでDHTであり、男性ホルモンが多いイコール薄毛とは必ずしも言えません。『食事』『睡眠』『運動』『ストレス』の四つの対策を十全に行っていれば、テストステロンはそれほどDHTに変換されるものではないのです。そもそも、この四つは密接に連動しており、身体を動かすと成長ホルモンが分泌されるだけでなく、ストレスが緩和されて各種ホルモンバランスが改善し、睡眠の質が高まります。すると睡眠中にも成長ホルモンが分泌されやすくなる。これはもちろん、男女ともに当てはまります」

 かつて“髪は夜作られる”というCMのフレーズがあったが、まさしくその通りというわけだ。

「髪の毛を太く長くする成長ホルモンは入眠直後、深い睡眠に入ったタイミングで大量に分泌されます。ところが、それまでに時間がかかったり、すぐに目が覚めたりしてしまうと十分に分泌されません。入眠後にストンと深くなり、3時間以上続くのが“髪によい睡眠”なのです」(同)

 スムーズに眠りに落ちるためにはコツがあり、

「例えば、睡眠前の入浴は非常に効果的です。風呂で一度体を温めた後、体が冷めてくるタイミングで横になると入眠しやすいといわれています。その際、スマホなどの明るい光の刺激を減らすことも重要です」(同)


■亜鉛と鉄は最重要


 睡眠とともに、日常生活の要となるのが食事である。クレアージュ東京エイジングケアクリニックの浜中聡子院長は、

「成長ホルモンは一日のうち7割程度が寝ている間に分泌されるので、日付が変わる前に就寝し、6〜7時間程度は睡眠時間を確保したいところです」

 としながら、

「夕食から就寝まで3〜4時間は空けるようにしましょう。できれば20時以降は食べない方がいい。寝る直前に食べるとホルモンのバランスが悪くなります」

 もちろん、摂取する栄養いかんで髪への影響は大いに異なってくる。

「まずは、髪の原料である良質なたんぱく質の摂取が不可欠です。毎回の食事で必ず、副菜として肉や魚、卵などのたんぱく源を一品は取り入れましょう。足りない分はプロテインで補うのも有効ですが、摂取カロリーに対してどれだけたんぱく質を補えるかというバランスが大事で、なるべく低カロリーのものがよいでしょう。毎日、体重の数字分(60キロなら60グラム)のたんぱく質が摂れていれば十分です」(同)

 実際に薄毛の患者を診察すると、食生活が乱れ、栄養バランスを崩している人がほとんどだという。

「薄毛の人に多いのは、亜鉛や鉄などミネラルの摂取不足です。髪の毛は、毛穴の奥にある毛母細胞が分裂を繰り返すことで成長しますが、牡蠣や豚レバー、アーモンドなどに多く含まれる亜鉛は、この毛母細胞の分裂に欠かせません。薄毛で悩む方の中には、この亜鉛不足にともなう下痢に悩む人も多くいらっしゃいます」(田路医師)

 同じく鉄についても、

「各種レバー類や赤身肉、カツオ、あさりなどに多く含まれ、酸素運搬やエネルギーを作る役目を担っています。髪を成長させるには大きなエネルギーが必要で、酸素がないとエネルギーは生み出せません。一方で鉄にはコラーゲンを作る働きもあります。コラーゲンは頭皮の厚みを生み出し、髪の生えやすい頭皮を作る役目も果たすのです」(同)

 こうしたミネラル分以外に、ビタミンも髪の成長に欠かせない。

「例えば、髪の毛を作る際に必要な酵素の働きを支えているビタミンB群は、高たんぱく質食材に多く含まれています。つまり肉類やシーフードなどの動物性たんぱく質は、ビタミンやミネラル分も多く“髪によい食材”と言えるのです」(同)

 栄養バランスが整っていると、脱毛症の薬を投与した際の効果も良好だというのだ。先の浜中院長も、

「亜鉛は髪を作る際、酵素の働きにプラスに作用しますが、吸収率が低いのでサプリメントで補うのもよいかと思います。当院では吸収率を上げるビタミンCのサプリを亜鉛と一緒にお出ししています。また、髪の生成を促すビタミンB群では、レバーやピーナッツに含まれるビオチン(ビタミンH)が重要。こちらも当院では1日あたり0・1ミリグラムを目安に処方しています。反対に、脂肪はできる限り摂取を避けましょう。肥満は血流も悪くなり、治療の効果が出にくいことが多いのです」

 加えて、夏場の天敵は紫外線だという。毛髪診断士でヘアケアスペシャリストの余慶尚美氏は、

「これからの季節は、肌だけでなく頭皮や髪の紫外線対策も欠かせません。紫外線は、髪を構成するたんぱく質を変質させて髪のダメージに繋がり、頭皮に炎症をもたらすだけでなく、髪に栄養を送る毛細血管の働きも低下させ、髪をやせ衰えさせてしまう。夏の外出時、特に山登りや海水浴の際にはUV対策を心掛け、髪や頭皮にもまんべんなくUV専用のスプレーやミストをかけ、通気性の高い帽子やスイミングキャップを被るなど、髪と頭皮のダメージを抑えましょう」

 そう警鐘を鳴らす。前出の田路医師も、

「紫外線は活性酸素を生み出し、細胞にストレスを与えます。これを防ぐには抗酸化物質が重要です。代表的なものはニンジンなどの緑黄色野菜、卵やレバー類に多いビタミンA、ピーマンやブロッコリーなどのビタミンC、ナッツ類やカボチャなどに含まれるビタミンEです」

 そして近年、注目されているのがザクロだ。抗酸化作用を持つポリフェノールを多く含んでおり、本誌(「週刊新潮」)7月1日号「若返り」特集でも触れた通り、ザクロを日常的に食べる西アジアの人には薄毛が少ないという。


■自然乾燥は禁物


 さて、日々のケアにおいて気になるのが入浴時の洗髪である。ひとくちにシャンプーと言っても成分や効能は千差万別、その選択を誤れば、かえって髪を傷めてしまいかねない。先の田路医師は、

「シャンプーは大きく三つに分けられます。まず、ラウリル硫酸ナトリウムなどを含み、洗浄力も刺激も強い『高級アルコール系』。次に脂肪酸ナトリウムなどを含む、高洗浄力で低刺激の『石鹸系』。そして『アミノ酸系』です。なかでも薄毛の人にお薦めなのは、肌や髪を形作るアミノ酸の一種であるラウロイルメチルアラニンナトリウムや、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどを含むアミノ酸系のシャンプーです」

 シャンプーで大切なのは“汚れは残さず潤いは残す”だという。それが髪の成長を促し、ケアを怠ると薄毛や抜け毛を招いてしまう。

「高級アルコール系は刺激が強く、石鹸系は低刺激ながら皮脂を落とし過ぎてしまい、髪の毛がきしむことがあります。その点、アミノ酸系は肌と同じく弱酸性のため刺激が少なく、程よい洗浄力で汚れはしっかり落としつつ、必要な潤いは保つことができます。頭皮の弱っている薄毛の方でも安心して使って頂けるのです」(同)

 他方、前出の余慶氏は、

「普段使いのシャンプーは、ご自身の肌のタイプを考慮して選ぶのがよいと思います。汗かきで、頭皮も脂が多めという人は、高級アルコール系・石油系を選んでもよいと思います。ワックスなどのヘアスタイリング剤をお使いの方でも、しっかり落としたいからと、こちらを選ぶ方もいます。ただ、年齢を重ね、季節の変わり目などに一時的に敏感になるような“ゆらぎ肌”が出てきた方は、髪や頭皮も同じく潤い成分を失いつつあるので、洗浄力は落ちても保湿力があるアミノ酸系がよいでしょう」

 洗い方にも手順があるといい、

「シャンプーはできるだけ毎日1回、朝ではなく、頭皮の汚れが溜まった夜にしましょう。大事なのは、シャンプー前のブラッシングと予洗いです。まずはブラッシングで髪の毛のキューティクル(毛髪の外側にあるうろこ状の層)を揃えておきます。さっと濡らしてすぐシャンプーを始める人もいますが、その前に1〜2分ほど、ぬるま湯で丁寧に予洗いし、髪と頭皮をすすいでおくと、汚れも効果的に落ちます。シャンプー後は、髪の毛になるべく摩擦をかけずにタオルで柔らかく押さえ水分を取る。包(くる)んでもよいと思います。自然乾燥は雑菌発生の原因にもなり、キューティクルが傷んでしまいます」(同)

 シャンプー以外のケアも。

「トリートメントとしては、コンディショナー(リンス)、ヘアトリートメント、ヘアマスクの3種類があります。髪の毛は、いわば『海苔巻き』のような構造で、外側を『海苔』のように覆っているのがキューティクル、その中の『酢飯』の部分はコルテックスと呼ばれ、その奥に『具』にあたるメデュラがあるという構造です。コンディショナーはあくまでキューティクルを整え、髪の流れをまとめてブラシの通りをよくするのが主な役割。対してヘアトリートメントはコルテックスまで浸透し、ヘアマスクはさらに奥まで入り込んでいきます」(同)

 いずれも髪を内側から補強し、ハリやコシを持たせる効果があるという。トリートメント後は、しっかり乾かす作業に移る。

「ドライヤーは10〜20センチほど離し、乾きにくい髪の根元から風を当てるようにします」

 とは、先の浜中院長。

「頭皮や髪へのダメージを避けるため、同じ場所には2秒以上当てないようにします。女性は下から風を当てるとボリュームが出ます。8割ほどを温風で乾かしたら、残りの2割は冷風で乾かし切るとよいでしょう」

 この時、洗髪とセットで実践したいのが、

「睡眠前の入浴で血流が活発化したところでマッサージすると、睡眠時に分泌されるホルモンを頭皮に行き渡らせることができます。耳の前には頭皮に向かう血管が集まっています。両手を耳の前に添えて親指の腹を耳の上に置き、頭全体を包み込むようにつかんで持ち上げたり、掌でこめかみの上をぐるぐる回しながら押し上げるマッサージがよいと思います」(田路医師)

 あわせて、最近では田中みな実をはじめ芸能人の愛好家も多い美容器「デンキバリブラシ」もまた、有用だというのだ。

「毛穴側部にあり、収縮によって鳥肌などを生じる『立毛筋』に電気刺激を与えることで、毎秒千回振動させ、血流を改善します。朝晩10分ずつ、1日20分の使用が推奨されていますが、その直前に手指で頭皮をマッサージすると一層効果的でしょう」(同)

 前述の通り、血流の良し悪しは育毛に大いに影響するため、ぜひ実践を。さらには、ストレス起因の薄毛にも効果があるといい、

「自律神経は、身体の緊張時に活発化する交感神経と、リラックス時に活発化する副交感神経がシーソーのようにバランスをとって働いています。これを利用し、デンキバリブラシによる刺激で、あえて交感神経をオンにし、その後に副交感神経によるオフ状態を作り出すことでストレスを緩和させることもできます」(同)


■鍛えるなら「大きい筋肉」


「睡眠」「食事」「ストレス」ときて“四つの対策”のうち残るは「運動」である。田路医師によれば、

「筋肉からも成長ホルモンは分泌されています。それが頭皮に到達して髪の毛は太く長くなるわけですが、実は筋肉への刺激はテストステロンの分泌も促すため、特に男性では薄毛を進行させる負の作用も懸念されています。それでも、代謝改善や臓器のアンチエイジング、ホルモンバランス向上などの効果が負の作用を上回って余りあるため、やはり運動は薄毛予防に効果的です」

 具体的には、どのようにすればよいのか。

「週に2〜3回、準備運動をして筋トレ20分、有酸素運動20〜30分、そしてクールダウンという流れがおすすめです。成長ホルモンは有酸素運動だけでは増えず、筋トレなどの無酸素運動で分泌されます。10〜15回繰り返せる程度の負荷で、1分ほどの短いインターバルを保って筋トレを繰り返した時、最も成長ホルモンの分泌が増加するのです」(同)

 とはいえ、有酸素運動にも大きな意味があるという。

「有酸素運動は糖代謝を改善して脂肪燃焼を進め、代謝のよい体へと導いてくれます。脂肪燃焼は、血糖値がある程度下がらないと始まりません。筋トレで血中の糖をエネルギー源として使い、その後にジョギングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動をこなすことで、よりスムーズに脂肪燃焼に導くわけです。ストレス緩和を兼ねるのならばダンスやヨガ、ストレッチもよいでしょう。また、筋トレ時は筋肉組織そのものから成長ホルモンが分泌されるため、広背筋や腹筋、大腿四頭筋などの大きい筋肉を鍛えたほうが、より効果的だとされています」

 日々の少しの工夫で“寂しい頭”を遠ざけることができるのだ。

「週刊新潮」2021年7月15日号 掲載

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