失礼な言動であなたを不快にさせる人に対する五つの心がまえ

失礼な言動であなたを不快にさせる人に対する五つの心がまえ

Illustration ニャロメロン

「じつはこれは失礼な行為である」

「厳密にはこれも失礼に当たる」

 当失礼研究所は、そんなふうに重箱の隅をつついて「失礼」を作り出すために、研究を重ねているわけではありません。

 基本の失礼は押さえつつも、自分と周囲が日々を平和に穏やかに過ごすために、失礼とどう付き合っていけばいいかを考えていく所存です。

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 人は生きていると、いきなり雨に降られてずぶ濡れになったり、乗っている電車が止まったりすることがあります。それは避けようがありません。失礼も同じ。人は生きていると、必ず失礼な目に遭います。

 失礼との付き合いにおいては、自分が失礼な言動をしないことと同時に、「失礼被害」を最小限に抑えることも大切。小さな失礼が自分の中で大きく育って、凶暴な失礼に変貌するケースはよくあります。

 雨に備えて傘を持つように、失礼被害が拡大しがちなパターンをあらかじめチェックしておきましょう。

その1「疲れている」

 先輩に「〇〇大卒のくせに、こんなことも知らないのか」と嫌みを言われました。「ああ、またか」と流すのも激しく腹を立てるのも、結局は自分次第。ただ、疲れていると怒りや恨みが無駄にふくらみます。

その2「気にしていることを指摘される」

「目が大きい」「方言がかわいい」など、相手はホメるつもりで言ってくれたとします。しかし、自分が気にしていることだった場合は、バカにされたと感じてしまうかも。

その3「古い価値観の呪縛にからめとられている」

 義母に「1歳から保育園だなんて子どもがかわいそう」と言われました。「勝手に言ってろ」という話ですが、自分の中に「本当は母親が面倒を見るべきだ」という呪縛があると、激しく落ち込んだり義母の言葉を引きずったりしそうです。

その4「虫の居所が悪い」

 いつもならスルーできるどうってことない失礼でも、虫の居所が悪いと、相手の非をクローズアップして腹を立てたくなります。

その5「じつは自分が失礼」

 上司に書類の間違いを指摘されたとします。半端なプライドが傷ついて非を認めたくないが故に、上司の言い方や仕事の教え方の問題点を探し出して、相手を悪者にする──。失礼なのは明らかに自分です。


■「失礼」への心がまえ


 怒りを爆発させることがカッコイイと思っている人や、相手の落ち度を責めるのが好きな人にとって、「失礼被害を抑えよう」という提言はケシカランかもしれません。

「悪いのは相手なんだから、こちらが変わる必要はない」

「我慢しろということなのか」

 こういう勇ましい言い方は、傍目には痛快です。ただ、やたら戦いたがる姿勢は、本当の強さではありません。失礼に対しては、果敢にしたたかに立ち向かいたいところ。次の五つの心がまえが役に立ってくれます。

その1「心の中で相手を見下す」

 平気で失礼な言動をしてくる人は、こちらの気持ちへの想像力が足りなかったり、どういうことを言ってはいけないかという当たり前の知識がなかったりします。こっそり「かわいそうな人」「残念な人」と見下してしまいましょう。

その2「異世界の生き物だと思う」

 価値観や常識は人それぞれだし、自分の側が「正しい」とは限りません。引っ越す話をして、真っ先に家賃や購入価格を聞かれても、「この人は異世界に生きてるんだ」と違いを面白がれば、不愉快になる必要はなくなります。

 会うたびに「早く孫の顔を」と言ってくる義父母も、そういう価値観の世界に生きているので仕方ありません。「ほかに話すことがない」という切ない事情もあります。

その3「相手が失礼なことを言ってくるセコイ理由を見抜く」

 マウントを取りたいのか、コンプレックスをぶつけてきているのか、相手側の事情で失礼被害に遭うこともあります。失礼の背後のセコイ理由を見抜けば、憐れみの感情で怒りを押し流すことができるはず。うっかり反撃してしまったら、同じ土俵に乗ることになります。

その4「相手の性格や考え方を変えようと思わない」

 上のようなシンプルな構図ではなく、いくら考えても「なぜそういうことを言うのか」が理解できないことも。その場合は「そういう性格なんだな」で片付けましょう。

「どうしてそんな性格なのか」と考える必要はないし、まして「さりげないアドバイス」などで性格や考え方を変えようとしても、間違いなく徒労に終わります。そもそもそんな義理はありません。

その5「心の距離を取る」

 失礼な言動であなたを不愉快にする人は、あなたの人生に必要ない人です。上司や同僚の場合は、表面上は無難に接するにしても、心の中で壁を作って距離をおいても何の問題もありません。友人知人だったら、早めに縁を切りましょう。「失礼な人からどう思われたって関係ない」という開き直りも大事です。

 もうひとつ大事なのが「自分を責めない」ということ。失礼の加害者は「はっきり嫌だと言わないからいけないんだ」「そういう態度(キャラ)だから言われるんだ」と、失礼被害の原因を押し付けてきます。真に受けて自分を責めたら、相手の思うつぼ。こっちはカケラも責任を感じる必要はありません。


■大人の「失礼撃退法」


「大人の対応」とは、自分の気持ちを無理に抑え付けることではありません。イライラをため込まず、自分が「楽」になれる方法を選び取ることです。「言い返したほうが楽」という場面もあるでしょう。

 ただ、ケンカを売る必要はありません。次の5例のようなソフトな「反撃フレーズ」で十分です。

「なるほど、近ごろの若者は△△なんですね」(オウム返し)

→「近ごろの若者は」「女性は」と決めつけてきた場合は、オウム返しがおすすめ。相手は、自分がマズイことを言ったと気付くでしょう。

「令和の時代に、そういうセリフが聞けてなんだか嬉しいです」

→あまりにも時代錯誤なことを言われたときに。ただ、相手は素直にホメられたと受け取って、鼻高々になる可能性が無きにしも非ず。

「はあ、なるほど。〇〇さんは、そういうお考えなんですね」

→結婚や出産など、デリケートなことにズケズケ口出しされた場合などに。ここで「ごめん。余計なこと言っちゃったね」と謝ってくるならまだ救いがありますが、そうできる人は最初から言ってきませんね。

「お前、きっといつか刺されるよ」

→「デリカシーのないことを言えるオレ、面白い」と思ってるヤツに。

「さすがに失礼じゃないですか」

→あんまりな場合は、このセリフの出番。失礼な人は鈍感なので、たいしてダメージは受けません。

 いざ、あの手この手で、次々と迫りくる失礼をけ散らしましょう。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。「失礼とは何か」を追究する失礼研究所所長。コラムニスト。大人力研究の第一人者でもある。『大人力検定』など著書多数。

ニャロメロン
1988年大分県生まれ。大分大学漫画研究部在席時より、サイト「週刊メロンコリニスタ」を立ち上げ、ツイッター等でも漫画を発表。『凝縮メロンコリニスタ』『ベルリンは鐘』『バンバンドリドリ』『マウントセレブ金田さん』等、著書多数。

「週刊新潮」2022年9月15日号 掲載

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