38年ぶりの噴火、ハワイの活火山マウナ・ロアに登ってみた漫画家の体験談

38年ぶりに噴火したハワイ島の活火山「マウナ・ロア」

■体積は富士山50個分以上の「世界最大の火山」


 11月27日、ハワイ島の活火山マウナ・ロアが38年ぶりに噴火した。今のところ溶岩は住宅地に向かっておらず、避難命令も出ていないという。

 ハワイは、ホノルルがあるオアフ島がメジャーだが、マウナ・ロアは大自然あふれるハワイ島にある。

「マウナ・ロア」山頂のカルデラ

 知られざるハワイを描いた『山とハワイ』の著者・鈴木ともこさんは、日本人では珍しく、マウナ・ロアへの登頂経験を持つ。その特徴を次のように語っている。

「マウナ・ロアは海底から9千m以上そそり立つ、世界最大の火山です。溶岩でできていて、その体積は富士山50個分以上あります。地上部分だけでも標高は4169m。富士山よりも高いんです」

 溶岩で覆われた登山道は、その厳しさから〈涙の登山道〉とも呼ばれている。過去の噴火の痕跡が至るところにあり、赤と黒にくっきり色分けされた大地や、鈍い緑色の大地、そして溶岩が波打ったまま固まった場所など、違う惑星のようだったという。

ハワイでは、火山の女神ペレが噴火を起こすと語られている (画像はコミックエッセイ『山とハワイ』より)

「山頂火口には、3日目の午前中にたどり着きました。火口は幅6.2kmも広がる巨大なくぼみで、あまりにも大きくて、人間なんかに全く太刀打ちできないことが一目瞭然でした。

 今回の噴火はその火口から始まり、私が登ったコースを下るように噴火口を移動させています」

「山小屋で見上げた、宇宙に放り出されたような星空。限界を超えて立ち上がれなくなった、溶岩以外になにもない道…すべてが桁違いのマウナ・ロアの思い出は尽きません。」と鈴木さんは語った (画像はコミックエッセイ『山とハワイ』より)

■下山までに要した時間は「合計55時間5分」


 鈴木さんがマウナ・ロアへ登った際は、富士山に2回登る覚悟で挑んだという。途中山小屋に2泊し、下山までに合計55時間5分を要した。

「とにかく山のスケールが大きいんです。北アルプスが丸ごと“一つの山”になったイメージです。今回の噴火は、その中心部で溶岩が噴出している、と思ってください。ですので、山が丸ごと、新しい溶岩に覆われてしまうようなことはないと考えています。

 前回は、いくつかの溶岩の筋が山肌に残りましたが、町に溶岩が到達することはありませんでした。油断はできないですが、日本の火山とはだいぶ様相が違いますので、そこはハワイの方々は冷静に見ていると思います」

 じつは噴火は、事前に住民に説明会が開かれるなど、ある程度予見されていたという。

 また、噴火の始まりが11月27日の深夜で、情報が駆け巡ったのは翌28日だった。このため、住民たちにはある種の盛り上がりもあったという。

「28日は、ハワイがアメリカに併合される前、ハワイ王国だったときの国民の祝日『ハワイ独立記念日』なんです。悲しい歴史を背負ったハワイにとって、特別な日に火山の女神が現れたと解釈されたんです」

世界最大の山に登り、宇宙に放り出されたような星空を観察。グルメに街歩き、自然も歴史も満喫したハワイ島で、一生忘れたくない景色と人に出会った。「アロハ」と笑顔であいさつすると、あたたかい気持ちになるのはなぜだろう? いるだけでハッピーになれる、ハワイの魅力が満載! 上下巻、全12章オールカラーのコミックエッセイ 『山とハワイ』(上下巻)

 ハワイでは、火山の女神ペレが噴火を起こすと語られている。

「女神ペレは、いつ噴火を起こすかわからない、わがままで高圧的な性格です。でも、決して厄介者とは捉えられていないんです。むしろ愛されていて、ペレの“気まぐれ”によってつくられた島に、人間が住まわせてもらっている、という感覚があります。

 ハワイ島には、他にも世界一活発といわれるキラウエア火山もありますので、火山に対する考え方がたくましいです」

 今のところ人的被害はなく、ハワイ島にある二つの空港も閉鎖されていない。それどころか、今も溶岩と記念撮影をする人が多く、撮影スポットには車列もできているという。万に一つの可能性として、山が大きく崩れる山体崩壊という現象もあるが、当面心配なのは火山性ガスによる大気汚染のおそれだという。

 鈴木さんは言う。

「山小屋で見上げた、宇宙に放り出されたような星空。限界を超えて立ち上がれなくなった、溶岩以外になにもない道。便器が地割れに直接置かれて丸見えの、青空トイレ。すべてが桁違いのマウナ・ロアの思い出は尽きません。

 今回の噴火で、一部の景色が新しく書き換わると思います。その景色を見に、また登りに行きたいです」

 登山できる日がいつ来るのか。こればかりは不明である。

デイリー新潮編集部

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