わさびソフトに“ラーメン飴” 「ご当地グルメ」の極北(中川淳一郎)

わさびソフトに“ラーメン飴” 「ご当地グルメ」の極北(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 観光地に行くと毎度「日本人は味覚障害か!」と思います。「いや、名産品を売りたいのは分かるけど、その食材をコレにしちゃダメでしょ……」的なものがあまりにも商品化されています。

 う〜ん、ご当地の努力に水を差したくないのであまり具体的には挙げないものの、わさびの名産地では「わさびソフトクリーム」や「わさびサイダー」があり、牡蠣の名産地では「牡蠣ソフト」がある。イナゴを食用とするエリアでは「バッタソフトクリーム」もあります。名古屋であればなんでも味噌と絡めるし、北海道ではジンギスカンがキャラメルになる。

 先日、富山県に行ってきたのですが、ご当地名物の「白えび」をえびせん風にしたものはまあ、アリとして、ご当地のラーメン「富山ブラック」を飴にした「富山ブラックドロップ」なんてものがある。売れゆきにはシビアなはずのコンビニが売っているので、そこそこ売れているのでしょうが、正直、これを「富山土産だよ」と貰って嬉しい人なんているのでしょうか。いや、「ますのすし」を買ってきてくれよ、頼むから。

 私は週に2回、某社で働いているのですが、時に地方のこうしたお土産をおすそ分けのようにくれる人もいます。彼らはあくまでもネタとして買ってきてくれるわけで、そもそもすぐに吐き出しますし、残ったものを共有のおやつスペースに置いておいても誰も食べずにいつしか賞味期限切れを迎えるだけです。

 だいたい、元のわさびだの、牡蠣だのの生産者もこうした奇をてらっただけの商品を開発されることに怒ってもいいのではないですか? あれ? 生産者自らが率先してつくることもあるのですか……? ならいいです。

 こうして私が憤りを感じるのも我が地元・東京都立川市が「うど」を名産にしようとこの何十年も頑張り続けているからです。立川市はうどの生産量が東京一で、小学生の時は誇りに思ったのですが、街を挙げてうどをPRしても的外れというかなんというか。

 うどラーメン、うどパイ、うどとアンコを挟んだどら焼きみたいなものもあったりします。先人の知恵で、うどというものは、「酢味噌和え」やら「きんぴら」といった料理法が確立され、これらは春の風物詩として、我が家でもおいしく食べていました。

 昨今、コンビニの24時間営業廃止か否か、といった報道がしきりとされている中、コンビニの食品廃棄問題は深刻です。富山で寄ったコンビニでも、店員がおにぎりの賞味期限をチェックしながら、次々とカゴの中に期限の切れたものを高い位置から放り込んでいます。すぐにカゴは満杯になりましたが、「もう少し丁寧に……。あと、客の前で堂々とそれやらないでくれない?」と思いました。

 食料品の廃棄が酷い状況になっている一方、「インスタ映え」ブームもありウケ狙いの食品は増えています。それらの廃棄分も、まともな商品の価格に転嫁されているのでしょう。2019年春の値上げラッシュの最中、もう少し吟味した商品開発を各社していただけませんでしょうか。余計なお世話ですが、食べ物が捨てられるのを見ると、毎度心が痛むんですよ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2019年4月18日号 掲載

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