消費増税の駆け込み買い 「鉄道の定期券」「遊園地・スポーツ観戦チケット」以外は買うべきでない理由

 5年ぶりの増税が目前に迫る中、早くも現場は大混乱に陥っている。消費税10%への引き上げに伴い、導入される複雑な仕組みに戸惑う声が引きも切らないのだ。「軽減税率」に「キャッシュレス」、聞き慣れない言葉の数々にも焦りは禁物だというその対処法とは。

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 すでに増税前の駆け込み需要を狙い、百貨店など各販売店がセールを行っている。家電量販店でも冷蔵庫やテレビなどの高額商品が売れ行きを伸ばしているという。つい、お店の“煽り”に流されて買ってしまいそうに……。そこへ節約アドバイザーの丸山晴美氏はこうアドバイスする。

「日用品を急いで買い溜めする必要は基本的にないと思います。オムツなど保存の利くものは増税前に安売りしていれば買えばいいですが、増税後でもスーパーやドラッグストアは独自のポイントアップキャンペーンを行うはずなので焦らなくても大丈夫でしょう。家電についても国内メーカーであれば、来年の決算期の前に値段が下がったり、型落ちの商品も出てくるので、そこで買う方がいい」

 増税前の買い物といえば、どうしても高額なものを思い浮かべる。代表的なのは不動産だろう。現在の8%の税率で購入するには、9月中に物件が引き渡されていることが条件になる。すでに9月半ばを過ぎた段階で“駆け込む”には遅きに失したと不安に思う向きもあるかもしれない。しかし、それには及ばないと、経済ジャーナリストの荻原博子氏は指摘する。

「そもそも、今は不動産価格が高騰し、完全に売り手市場になっています。価格が落ちる2020年の東京五輪後に買う方が得策です。また、増税後には最大年40万円の住宅ローン控除が10年から13年に変更されます。すまい給付金も拡充され、年収775万円以下なら、最大50万円が給付されることに」

 不動産の他、車に関しても同様だ。

「車も、10月以降自動車取得税がなくなり、毎年かかる自動車税の税率も引き下げられる。じっくり車種を検討して、値引きが期待できるボーナス商戦を狙えばいい。増税前に買ってもいいと思えるのは値引きにならない鉄道の定期券、遊園地やスポーツ観戦のチケットくらい。慌てることはないのです」(同)

 それでも、政府が喧伝するキャッシュレス決済は準備しておかねばならないのではないか。最近は「LINE Pay」や「楽天ペイ」など枚挙に遑(いとま)がなく、選ぶのも一苦労に見える。


■不正に侵入される


 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、

「私はクレジットカードとSuicaなどの交通系ICカードの2種類で十分だと思います」

 そう解説し、不安を払拭してくれる。SuicaやPASMOは、ウェブ上で登録を済ませておけば、鉄道会社を通じて、還元サービスを受けることが可能。クレジットカードも、カード会社によっては、請求時に値引きして銀行口座から引き落としてくれる。「〜〜ペイ」など、流行のQRコード決済については、

「個人の資産を家だとして、様々なQRコード決済に手を出し、出入り口を多く作れば、それだけ管理の手間が増えます。同時に、不正に侵入される可能性も高まる。大手の7payでもあのような大規模不正利用の被害を受けています。そうしたリスクがある決済は必要ないでしょう」(同)

“キャッシュレス推進派”でブロガー・個人投資家の山本一郎氏も、

「私も7payを使っていて、不正利用の被害を受けました。結局返金されましたが、こうしたトラブルは起こり得ます」

 とした上で、対処法が必要になるほど混乱を招いた、今回の「お上」の仕事ぶりに苦言を呈す。

「いかにもお役所仕事。例えば、ポイント還元事業への申請店の一覧が経産省のHPで公開されましたが、PDFで6千ページに及ぶものでした。国を挙げた政策にしては、乱暴すぎます。軽減税率についても、家で食べれば質素なので8%、外食は贅沢だから10%なんて、想定しているライフスタイルが画一的すぎませんか。所得が少なくても、単身で外食せざるを得ない人も多いはずです」

 なぜこんな制度になってしまったのか。

「本来は議論を促すべき大手新聞が軽減税率の適用で恩恵を受けたために批判も鈍かった。社会保障費が増大する中、検討すべきことはたくさんあったはずなのに、結果的に外食だ、イートインだ、という細かい話に終始してしまいました」(同)

 現代では納税者の理解を得るために税の3原則、

〈公平・中立・簡素〉

 が重視されるという。少なくとも簡素な方法とは言えない今回の増税策。混乱はしばらく続くことになるが、慌てず、騒がず、こそが肝要なようだ。

「週刊新潮」2019年9月26日号 掲載

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