医者や医療従事者が「ジェネリック薬」を飲まないこれだけの理由

医者や医療従事者が「ジェネリック薬」を飲まないこれだけの理由

ジェネリック薬 医者飲まず?

医者や医療従事者が「ジェネリック薬」を飲まないこれだけの理由

医者や医療従事者が「ジェネリック薬」を飲まないこれだけの理由とは(※写真はイメージ)

■医者が飲まない「ジェネリック薬」(1/2)


 まったく一緒であるなら安いほうがいい。厚労省が、来年には薬全体の80%を占めるまでに増やす、としているジェネリック医薬品も、オリジナルと同じなら財布にやさしくて嬉しいかぎりである。しかし、医者は飲まない、その根拠もある、と聞かされると――。

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 懐にやさしいのは、だれにとっても嬉しいことだが、さりとて安かろう、悪かろうでは困る。その点でジェネリック医薬品(後発医薬品)は理想的な存在のように見えないか。「新薬(先発医薬品)と有効成分が同じで、同じ効き目をもつ」と宣伝されているのが本当なら、価格が新薬の7割から、安いものは2割ほどというジェネリックは、ありがたいというほかない。

 日本の医薬品に占めるジェネリックの割合は、昨年9月の調査で72・6%。来年9月までに、これを80%にすべく、現在、厚生労働省が音頭をとっている。

 さるジェネリックの製薬会社のCMで流れる、「なによりも患者さんのために」というフレーズ通りに、患者ファーストの施策ということだろうか。だが、総合内科専門医である秋津医院の秋津壽男院長は、

「ジェネリックの普及を国が推し進めているのは、保険財政の破綻を防ぐためであって、患者の健康を考えてやっていることではありません。あくまでも財政ファーストで、患者ファーストではないのです」

 と、きっぱり。それでも結果的に、患者のためになればいいわけだが。ジェネリックとはなんであるのか、保険財政の事情とからめて確認しておきたい。

 厚労省のHPには、

〈後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売が承認され、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。後発医薬品を普及させることは、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するものです〉

 と書かれている。これを厚労省担当記者に、少しかみ砕いてもらおう。

「新薬は研究開発に始まって発売されるまでに、10年、15年とかかり、数百億円の投資が必要です。だからその分を回収するために、特許を出願したら20〜25年は、開発した会社が独占的に製造、販売できます。でも特許期間が終われば、ほかの製薬会社が、同じ有効成分の薬を作って売ることができます。これがジェネリックで、研究期間が3〜5年ほどですみ、開発費が格段に抑えられるので、価格も安くできるのです」

 一方、医療保険財政云々というのは、実際、のっぴきならぬ問題である。

「2018年度に医療機関に支払われた医療費総額は42兆6千億円で、そのうち約2割は薬剤費。40年には67兆円になるという予測もあって、国家が破綻しかねないほどです。個々の健康保険組合も6割超が赤字で、薬価を抑えなければ、われわれの生命を支える国民皆保険制度さえ、ひっくり返ってしまいかねない状況だといえます」

 医療保険財政が、患者が医療を受けられなくなるほどの危機にあるのなら、「財政ファースト」も致し方あるまい。いずれにせよ、「同じ」薬が安くなるなら、歓迎しない理由はなかろう。

 医薬情報研究所SICの医薬情報部門の責任者、薬剤師の堀美智子さんも、

「医療費を削減するうえで、ジェネリックの活用はとても大切です」

 と言う。ただし、こう付け加えるのである。

「だからこそ正しい知識を持ってほしいです。日本ではジェネリックは“先発薬と同じです”という紹介をされ続けているせいで、なかなか正しい知識が広まりません」

「同じ」が間違いとは、どういうことだろうか。

「ジェネリックは先発薬とくらべて、主成分となる原薬は同じですが、製造方法や添加物は異なります。ハンバーグにたとえれば、肉は同じでもつなぎやこね方は異なるということ。そのうえ原薬についても、混雑物が含まれて、安全性が疑わしい場合があります。原薬に発がん性物質が含まれている、という問題が発生することもあります」

 聞き捨てならない話である。まずは現場の医師の声に耳を傾けることにしたい。


■「効果に大きな差がある」


「医師の多くは、本心ではジェネリックを信用していません。私の友人にかぎれば、ジェネリックを使いたいと言っている医師は一人もいません」

 と話すのは、『医者はジェネリックを飲まない』の著書がある内科医の志賀貢氏で、こう続ける。

「厚労省が、18年度の9月診療分の医療費から、企業が加入する3517の保険組合のジェネリックの使用率を明らかにしたデータがあります。全国平均は72・5%でしたが、『日経メディカル』がさらに分析したところ、医師国保にかぎると58・2%でした。つまり医師や医療従事者、その家族らのジェネリック使用率は、全国平均よりはるかに低いのです。理由は、薬効や安全性に関する納得できるレベルのエビデンスがないからです。厚労省や製薬会社は“先行薬と同じだ”と言いますが、たとえ原薬は同じでも、製剤方法や添加物は異なります。また、どう製剤されているのか、それが適正なのか、確認されていないので、信用できないのも当然です」

 もっとも、志賀氏はジェネリックを目の敵にしているのではない。

「医療費の高騰は大きな問題で、よいジェネリックは進んで使うべきです。しかし臨床の現場では、苦しんでいる患者さんを前にしたとき、どうしても信頼できる薬に手が伸びます。昨年10月から、医療費がタダになる生活保護受給者には、原則としてジェネリックを調剤することが義務づけられました。でも、“この患者は生活保護を受けているからジェネリックにしよう”とは思わないですよ」

 むろん、「思わない」のは臨床の現場での経験にもとづいてのことだという。

「使ってみれば、効きの違いがわかるものです。たとえば、危篤状態に陥った患者さんに点滴するドパミン塩酸塩。危篤状態とは、様々な体液が循環不全となり、ショックを引き起こし、容体が悪化すること。そのような緊急時に血圧を安定させ、心不全を改善し、利尿作用を促し、体液の循環をよくする緊急薬の定番です。これがブランド品とジェネリックとで効果に大きな差があるのです。看護師だって“ジェネリックのほうは効果が半分かな”と言っています。ブランド品なら、1分間の点滴滴散が10滴で効くのに、ジェネリックだと15滴でも、20滴でも、そのレベルに至らないことがある。結果が血圧や心拍数として、数字にはっきり出ます。ブランド品は値段が4倍もし、使いすぎると病院経営を圧迫するし、役所からも目をつけられます。それでも自腹を切って使うこともありますよ」

 ただし、効果が異なる理由はわからないという。そういう前提で、ほかに先行薬のほうが効いた薬の製品名を挙げてもらった。

「循環薬ノルアドレナリン、副腎皮質ホルモンのヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、止血剤シメチジン、呼吸不全治療薬ジモルホラミンなど、緊急薬として使うものが多い」

 前出の秋津医師も、

「ジェネリック全体でみれば、レベルは相当上がっています」

 と言いつつ、こう語る。

「高血圧の患者さんに処方する血管拡張剤のニフェジピン。時間をかけて体内で溶ける徐放(じょほう)性製剤でLとCRがあり、Lは12時間、CRは24時間かけて徐々に効いていきます。これをジェネリックに替え、“ドキドキする”“顔が赤くなる”と訴えてきた患者さんがいました。また、ぜんそくの患者さんに処方する気管支拡張剤のツロブテロールテープ。皮膚に貼る経皮吸収型製剤で、1日かけて徐々に効くように調整されていますが、ジェネリックによってはこの機能に差があるので、薬が速く吸収されすぎたのでしょう。手の震えや動悸が生じたという声がありました。気管支拡張剤は、量を増やせば手の震えや動悸が生じるのです」


■メーカーの技術力


 秋津医師が述べた、2種の薬で見られた現象こそが、先に堀さんが指摘した「つなぎやこね方」の違いから生じたものだという。あらためて堀さんが言う。

「つなぎやこね方が異なる理由は、主成分の特許が切れてジェネリックが作れるようになっても、製剤に関する特許が残っている場合があるからです。薬を溶けやすくする添加物や、特殊なコーティング技術などの特許が切れていないと、その部分は真似ができません。それに、メーカーによって技術力に差がありますから、製剤に関する特許が切れていたとしても、その部分を先行薬とまったく同じにできるのか、という問題があります。特に製剤方法にこだわっている薬の場合、主成分が同じでも効き方に差が出てきます」

 具体例については、さる薬科大の元教授が説く。

「ニフェジピンの先行薬の商品名はバイエル社のアダラート。2層構造の錠剤で、主成分が、消化液の多い上部消化管で溶ける外側に少なく、消化液が少ない下部消化管で溶ける内側に多く含まれ、体内でゆっくり溶けだすようにうまく作られています。これはカルシウム拮抗剤といい、血管平滑筋にカルシウムが入り込むのを抑え、血圧を下げる働きをします。しかし血圧が急に下がりすぎると、体は逆に、血圧と心拍数を上げようとします。だからゆっくり、徐放するようにしているのですが、ジェネリックの場合、メーカーの技術力によっては、必ずしもうまく溶けだしません」

 ツロブテロールテープについても説明する。

「ブランド品ではテープの部分に主成分の微結晶がまぶされています。1日1回の貼付で、時間をかけて薬が皮膚から吸収される仕組みです。ぜんそくは早朝に呼吸機能が低下する場合が多いので、早朝にも薬が効くように設計されているのです。しかしジェネリックの場合、技術力の不足で速く効きすぎてしまうことがあるのだと思います」

 堀さんに、ほかの薬の事例も挙げてもらった。

「ぜんそくの薬として処方されている気管支拡張剤テオフィリン。12〜24時間かけて、徐々に血中に溶けだす徐放性製剤です。これも製剤方法が違うと溶けだすスピードに差が出て、先発薬やほかのジェネリックとくらべて、効果が減弱したり、一気に出すぎたりする可能性があります。テオフィリンはまた、血中濃度による有効域が狭い。血中濃度が高くても低くてもダメで、ちょうどいい分量にコントロールするのが難しく、注意が必要なのです。有効域の狭さという点では、てんかんの患者さんに処方する抗けいれん薬のカルバマゼピンも注意が必要です。薬を替えて、血中濃度のわずかな差が出ただけでも、効き方が異なってしまうので、最初に処方された薬をできるだけ替えないほうがいい。こうした注意を、世界中のてんかん学会が促しています」

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年12月26日号 掲載

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