夢追い人の街でバンドマンからナンパ、あえて《下北的なノリ》にのってみた

下北沢の街並み 撮影/三九二汐莉

 世は、ナンパ戦国時代。出会いのプラットホームの増加とともに、都会を中心に男女の出会い事情はカジュアル化している。その最たる東京の週末に、ナンパ最前線に立つ男性は何を考え、なぜナンパするのか。本企画では東京の週末の夜に一期一会の出会いを求める「ナンパ男子」の生態を深掘りしていく。

 今回は、駅の再開発工事を終えて、街が様相を変えつつある■“下北沢”が舞台。東京の住みたい街ランキングでも毎年、上位にランクインし、2019年は世界的シティガイド『タイムアウト』の「■世界で最もクールな街」で2位の座を獲得。今、世界からアツく注目されるカルチャーの街なのだ。

 ナンパのイメージはあまりないかもしれないが、サブカルの街・下北沢も再開発を受け、その雰囲気を変えつつある。北口は相変わらず古着屋やおしゃれなカフェが立ち並び、サブカル色の強い街並みが残る。ところが、南口は流行のタピオカドリンクショップやパンケーキカフェなども増え、若者の数はより一層、増えているように感じる。

 美容室や小さなバー、ライブハウスなども多いので、いわゆる■3B(注1)的な男性が非常に多く、サブカル感のある服装(つまり古着コーデ)で街を歩いていると、羊の皮をかぶったサブカル男子から声をかけられやすいというのが、下北沢のナンパの特徴だろう。

■(注1)3Bとは、バンドマン・美容師・バーテンダーの意味。あくまでも一例です。すべてのバンドマンさん、美容師さん、バーテンダーさんがそうだとは限りません。

■下北沢ではバンドマンはモテ職!?

 ということで、筆者も古着コーデで夜の街を徘徊(はいかい)し、“地元のみんなに愛されてますよ”感のあるバーの前で、少し立ち止まって中をうかがっていると、

「ここ、入ります? よかったら一緒に一杯どうですか?」

 と、ギターを抱えた、おそらくバンドマンであろう男性に声をかけられた。

 彼は長身で、細身の脚にスラリと映えるジャストサイズのスキニーパンツを着こなしている。少しうざったい長さの前髪も中性的な魅力があり、ナンパ慣れしている雰囲気もないように感じた。

 無論、筆者も古着を着て下北沢に来たからには! と思い、「私でよければ」と返して、彼と一緒にバーに入ってみることに──。

 バンドマンの彼はバーの常連客のようで、中に入るとマスターから「あれ! 今日も女の子連れ? イイねえ〜モテる男は!」と声をかけてきた。

──なるほど、バンドマンよ、おとなしそうなのは見た目だけなのね。

下北沢の街並み 撮影/三九二汐莉

■“レディキラーカクテル”を使って
確実に酔わせにくる

 古着屋で働きながらバンドをしているという27歳。“歩く下北沢”とは彼のことだろう。

「■おすすめのお酒があるんだよね! よければ一杯おごらせてよ」

 そういって2人分を注文し、出てきたのは「■ロングアイランドアイスティー」というカクテルだった。ひと口飲んでみると非常に飲みやすく、甘い紅茶のような味がする。しかし、実際には紅茶を使っておらず、ウオツカやテキーラなどアルコール度数の高いスピリッツを数種類ブレンドし、紅茶のような味にしている。そのため、かなりアルコール度数が高く、巷(ちまた)で“■レディキラーカクテル”なんて呼ばれることもある。

 そんなこととはつゆ知らず、あまりの飲みやすさに続けて三杯も飲んでしまい、予想以上に酔いが回りはじめた。そんな私のペースに合わせてか、彼も着々とグラスを空けていく。

「え〜、シオリちゃんってめっちゃカワイイよねぇ。食べちゃいたい〜♪」

 お酒が入ると、恐ろしく距離が近くなる。さっきまでおとなしそうな雰囲気だったのに、急にスイッチが入ったのかベタベタしてくる“歩く下北沢”。筆者も酔いのせいか、可愛らしく見えてキュンとしてしまった。

 あちらのペースに乗せられる前に、なんとか気をしっかり保って会話をしなければと思い、恋人の有無を聞くと、

「恋人? う〜ん、いたっけなぁ〜」

 と曖昧(あいまい)な返事。するとバーのマスターから

「こらこらキミ! 彼女いるでしょ!」

 と口を挟んできた。

?

 ■……彼女いるんか〜い!!

■「バンドマン蟻地獄」はハマったら最後

「でも彼女より、シオリちゃんのほうが好き〜」とヘラヘラ笑いながら話しかけてくる。なぜ彼女がいるのに、自分のナワバリでもある下北沢でナンパするのだろうか。

「え〜別に、結婚したいとか思ってないしなぁ。正直、彼女も面倒だなって思うことが多いんだよね。ていうか、俺がどこで誰と遊んでてもさ、彼女には関係なくない?」

 一瞬、思考が停止したものの「やっぱり3B……」と心の中でつぶやいて、無言でニッコリ笑ってみせた。

──こんなやつにハマったらヤバい。酒に酔って距離が近くなった、前髪重ためな“歩く下北沢”はセクシーでグッとくるものがあったが、涙とお酒をグッとのんで、彼をおいてバーを出ることにした。

  ◆   ◆   ◆  

下北沢の街並み 撮影/三九二汐莉

 下北沢にいる美容師やバンドマンたちは今もなお、夢追い人が多く、安定した家庭を持ちたいというよりは、自分の夢の実現が最優先で、「先のことはよくわからない」が口グセな人が多いように思う。

 本気で付き合うと金銭的に苦労することがあるかもしれないが、夢を追いかけている彼らだからこそ、その突拍子もない発言や感性は、刺激的で女心に刺さり、母性をくすぐるのだろう。

 だがしかし、彼らのいちばん大切なものは「自己実現」であり、恋愛は第一優先にはなりづらい。先の見えない将来への不安をぬぐう、いっときのお遊びでしかないのだ。『週刊文春』で小手伸也の“独身偽装不倫”疑惑が報じられ、小手が言い訳として《下北的なノリ》と発言したのはこういうことだったのかもしれない、と妙に納得がいったのだった。

 ちなみに、“歩く下北沢”は「え〜、おれんち近所だからおいでよ〜」と最後まで性欲のアクセル全開であった。お金のないバンドマン、ホテルではなく自宅へ誘うのも下北沢らしさがあったのだった。

 最後に、彼の外見の雰囲気をわかりやすくお伝えしたい。

 ■顔面→[Alexandros]川上洋平似のすっきりした塩顔
 ■服装→ゆったりパーカーにぴったり黒スキニーのバンドマンコーデ
 ■髪型→前髪重ためで襟足はすっきりな韓国男子系ヘア
 ■年収→推定200万。バンドは儲かっていないとのこと
 ■感想→178センチの長身に細すぎるくらいの美脚に母性をくすぐられまくる

長身細身でスラッとした母性をくすぐる柴犬男子(C)イケウチリリー

【注意】この手の男性はひとりの女性に入れ込むということはあまりなく、結局キープし続けるためには金銭的な援助が必要になってきたりするので最終的にヒモになる確率が高い。しかし、見返りを求めるとしんどいので、あくまで慈愛の精神で尽くすしかない。

三九二汐莉(みくに・しおり)◎フリーライター。『週刊SPA!』(扶桑社)、『mina』(主婦の友社)などで恋愛や婚活、最新の出会い事情について寄稿中。
逆ナンやギャラ飲みなどの現場にも乗り込むサブカル女子。

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