『彫刻の森美術館』は“映えスポット”、50年たっても色あせないヒミツ

まるでステンドグラスの塔「幸せをよぶシンフォニー彫刻」(ガブリエル・ロアール) 撮影/渡邉智裕

 箱根といえば温泉、駅伝、そして彫刻の森(!?)というくらいに有名な「彫刻の森美術館」が、オープン50周年を迎えている。来館は数年、いや10数年ぶりの記者。野外美術館だけに、さぞや劣化が心配……、あれっ? あのころと変わらない美しい彫刻たちがそこに!

■「デートで来たカップルが結婚して子どもを連れて、そして、その子が結婚して孫を連れて……と、3世代にわたり来館する方が増えてきました。場所柄か各々の記念日に、という方も多いですよ」

 とは、神奈川県箱根町の「彫刻の森美術館」で広報を務める、彫刻の森芸術文化財団の辻井有里さん。日本初の野外美術館として'69年に開館した彫刻の森が、今年で50周年を迎えている。

草木や作品への日々のケアにより、いつ来ても美しい景観が保たれて 撮影/渡邉智裕

■世代を超えて愛される芸術的スポットへ

 かつてバブル時代に年間100万人が訪れた箱根の定番デートスポットは、今なお健在。近年は外国人観光客らも増えて毎年60万人が訪れているのだが、“イマドキ”世代の影響もあるようで。

「若い人たちには“インスタ映えスポット”としても大人気なんですよ。SNSでも話題になっているみたいです」(辻井さん 以下同)

 にしても50年だ。普通なら“廃れて”もおかしくない年月なのに、今も色あせない秘密はどこに? バブル時代にリアルデートを経験したオバサン記者が調査開始!

■作品のケアは欠かせません

 エスカレーターで降りた先の本館前広場には「弓を引くヘラクレス」(エミール=アントワーヌ・ブールデル)など、見た記憶がある彫刻が健在。というか、当時の記憶のままのピッカピカの姿!

■「野外の展示が変わらないのは、実はすごいことなんですよ。定期的に磨いたり、高圧洗浄をしたり、修復やリペイントをしたりと、365日どこかで何かしらのメンテナンスを行っているんです」

毎日の地道な修復作業により、野外美術館が成り立っている 撮影/渡邉智裕

 確かに取材時も、ブロンズ彫刻のワックス塗りなおしなど、作品メンテナンスの作業現場に出くわした。地道な作業によって作品のクオリティーが保たれ、また植栽担当スタッフが随時手入れを行うことで醍醐味である自然とアートの調和を整えているのだ。

 特に天候に左右されやすい屋外美術館だけに毎日の細心のケアが大切で、それが彫刻の森が色あせない理由のひとつにもなっているのだろう。

■アートを堪能した後は温泉でほっこりと

 スタッフの労に感謝しつつ、さっそく作品に目を向けると、緑色のアフロ頭で涙を流す「嘆きの天使」(フランソワ=ザビエ、クロード・ラランヌ)が超インパクト!

■「彫刻と同じようなポーズをとって撮影するのが流行っているようですよ」

大きな「目玉焼きのオブジェ」 撮影/渡邉智裕

 定番彫刻に加えて、随所に新たな展示も見られるのだが、特に若者に人気なのが「目玉焼きのオブジェ」。しょうゆやソースになった気分で寝てみたり、大きな黄身に食らいついてみたり、この日もグループでワイワイ撮っていた。

■ 片や'75年に作られた「幸せをよぶシンフォニー彫刻」(カブリエル・ロアール)は、スマートフォンCMに登場して再ブレイク中。そのステンドグラスに囲まれた幻想的な塔を上れば、屋上から箱根の山々を大パノラマで望める。これはCMでは映らなかった、大自然の絵画だ。

 そして「昭和から一気に令和に変わったというくらい、一新しました(笑)」のが、ピカソ館。7月に全面リニューアルされた内観は、木目調の明るいインテリアに統一されてLEDライトが照らすおしゃれ空間に様変わり。真新しい館内で見ると、作品のイメージまでもが変わって見えるから不思議。紹介されるピカソの言葉を聞いて、偉大な芸術家に思いを馳せよう。

増設された箱根温泉の足湯でほっこり 撮影/渡邉智裕

 一方で、彫刻以外のお楽しみスポットが増えているのをご存じだろうか。子どもたちの体験型アート作品「ネットの森」は気分転換にはもってこいだし、館内散策に少々お疲れならば、

「源泉掛け流しの天然温泉を引いています。温泉地ならではの施設だと思います」という、'04年に新設した箱根の美術館だから堪能できる足湯でリラックスタイム。

 ひと息ついたら隣のミュージアムカフェへ。足湯後に、開放感のあるくつろぎ空間で飲む、彫刻の森オリジナルラベルのクラフトビールは最高! つい長居しちゃいそう。

 50年の歳月において、作品のクオリティーの維持に努め、なおかつ時代に沿ってアップデートしてきた彫刻の森。箱根の紅葉が色づく季節に、いつまでも色あせない美術館を訪れてはいかが?

■彫刻の森美術館 THE HAKONE OPENーAIR MUSEUM
 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121 開館時間9:00〜17:00 無休 *入館は閉館の30分前まで(11月30日より箱根ナイトミュージアム開催16:45〜18:00)一般1600円 大学生・高校生1200円 中学生・小学生800円
TEL:0460-82-1161 https://www.hakone-oam.or.jp/ 

■「ピカソ館」 開館35年で初のリニューアル
 20世紀を代表するスペインの芸術家パブロ・ピカソの作品を専門に展示するために、'84年に開館したピカソ館。50周年を記念して、7月に初めて内装と設備が全面リニューアルされた。箱根らしい、木目調のナチュラル空間に生まれ変わり、3つに分類された展示空間は開放的で明るく鑑賞しやすい。現在、124点(うち、ピカソ作品103点)を展示するテーマ展『ピカソの挑戦〜かたちの変貌〜』(2021年3月まで)を開催中。

取材・文/山崎ますみ

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