「犬の常識」がひっくり返った! 科学的研究が明らかにした意外な真実

「犬の常識」がひっくり返った! 科学的研究が明らかにした意外な真実

時代遅れな常識で犬不幸に?

という動物の科学的研究は意外なほど遅れていて、ようやく2000年以降に本格化し、ここ十数年の間に飛躍的に進んでいるんです」――そう語るのは“犬の行動学のスペシャリスト”鹿野正顕氏。プロのドッグトレーナーが信頼するプロ中のプロが、最新研究で明らかになった意外すぎる犬の生態を解説します。

※本記事は、鹿野正顕:著『犬にウケる飼い方』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■時代遅れの“常識”が犬を不幸にする

いま世の中に出回っている「犬はこう飼いましょう、このようにしつけましょう」という情報の多くは、残念ながら"昭和の日本”的な「犬の常識・しつけの常識」で、いまでは時代遅れなものが多いのが実情です。

犬という動物の科学的研究は、意外なほど遅れていて、ようやく2000年以降に本格化し、ここ十数年の間に飛躍的に進んでいます。その結果、動物行動学や認知科学の見地から得られた実証データによって、いままで常識・定説とされていたことの何割かが「誤解」だったということが明らかになっています。

犬は自分を取り巻く世界をどのようにとらえているのか。どんなふうに人や周りを見て、どんなふうに考えて行動しているのか――。

その「認知」という分野での研究は、近年になってさまざまな研究成果が共有されるようになりました。以前は犬の行動時の脳の反応などを科学的に調べることが難しく、認知という分野はほぼ未知の領域だったのです。

▲犬の常識・定説を誤解している人も多い イメージ:PIXTA

僕が大学院で論文を書こうとしていた2006年頃でも、犬の認知・生態・行動特性といった分野の科学的研究はごくわずかで、現場での事例はたくさんあっても研究データがないため、実証するのが困難だったケースが多々ありました。

つまり、それまで「犬とはこういう動物だ」「犬はこういうときこんな行動をする」と言われてきたことの多くは、じつはエビデンス(科学的裏付け・根拠)の乏しい仮説や通説、それぞれの経験や主観というものばかりだったのです。

近年ようやく、MRIなどの最新検査機器の活用や、ホルモンや遺伝子の研究などにより、日本では麻布大学などが中心となって「犬の認知」の解明が進められるようになりました。

■犬は人に「上下関係」を求めていない!

そうした犬の研究の成果として、じつは大きな誤解だったことが判明した例の一つに、「犬が人に対し上下関係を求める」ということがあります。

これはほとんど人間側の思い込みで、犬は自分より強く威厳のある人に従うわけではなく、人に懐き、人に親しむのは、飼い主との間に絶対的安心感を抱くからで「人と犬の関係は母子関係に似ている」という言い方が最も近いのです。

力で制圧すれば犬は忠実になる、という間違った固定観念ができた背景には、犬はもともと群れの生活をする動物で「犬の社会は、ボス的存在をトップにした階級・序列社会である」という長い間の思い込みがありました。

モデルとなったのは、犬の祖先とされるオオカミの社会です。群れのボス的存在が支配関係を作り、ピラミッド型の階層ができて、序列が下位のものは服従する。そうして群れは統率がとれ、多くの個体が飢えずに生きていくことができる――。オオカミがそうであるなら、その子孫の犬も同じはずだという考えかたが、ずっと定着していました。

犬の群れに関しての実証データがあるわけではないのに、ずっとそう思われてきたのです。

群れの序列関係に従って生きるという特性があるなら、人間と暮らすようになってからは、飼い主やその家族に序列をつけてそれに従うと考えられてきたわけです。

▲オオカミの習性から犬に対する誤解がうまれた イメージ:PIXTA

ところが、よくよく調べてみると、オオカミや野犬の群れの社会でも絶対的な権限を持つボスというのは存在せず、群れの中での明確な序列というものはないらしい、ということがわかってきました。

現在では「犬は人に対して上下関係を求めていない」というのは、動物行動学の世界においてほぼ常識です。飼い主というのは、犬にとって上位にいるボスや主人ではなく、自分を擁護してくれる母親的存在で「人と犬の関係は母子関係に似ている」という考え方が定着してきています。

母子関係に近いということは、人と犬の間に強い信頼関係があるということです。

犬にとって飼い主である人間は、食事や快適な寝床を用意し、排泄の世話や、遊び相手までしてくれる信頼すべき擁護者であり、母親も同然なのです。であれば、人が上位に立って、"序列関係で下位の犬に服従させる”という接し方には、当然疑問が生じてくるはずです。

そう理解すると、しつけの考え方も、昔風のやり方からは変わってくるのが当然だと思います。

▲犬のしつけも変えていく必要がある イメージ:PIXTA

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