有名店と同じ鳥が1本70円!【小岩・鳥勢】最強の安ウマ晩酌

■“飲める弁当屋”でちょいと一杯

旅に出たくなりました。どこか遠くに行きたくなる、そんな発作に襲われる日があります。だけど仕事があるから行けない。なんだ、今日もつまねんなとブツブツ言いながら、結局仕事へのそのそと向かう。

帰り道、ちょっとだけよ、なんて言いながら酒場へ足が向くけど、天国気分を味わうのは一瞬で、翌朝は二日酔いの地獄が待っている。悲しい。ああ、どこか遠くへ行きたい。

そんなわけで、今回はちょっとだけ足を伸ばして東京の東側へ参ります。都下の南に住む私にとってはファーイーストですね。それでは行ってきます。

▲JR東日本のHPより

江戸川区にある小岩という駅は、千葉との県境にあります。私はほとんど降りたことがないんですが、何度か訪れた感想は「いい町」。商店街に元気があって、物価も安くて、きっと暮らしやすいんだろうなと思うんです。

そして、そんな街にはいい飲み屋があるに違いありません。これは飲み助の世界に古くから伝わる格言。今日はそんな小岩からお送りします。

▲「お酒あります」ののぼりに誘われて…

1軒目はこちら。駅を降りて商店街をまっすぐ進むと、右手に弁当ののぼりが見えてきます。こちら「デリカスクエア」は、弁当のおかずを“あて”に酒が飲めるお店なんです。まずは小腹を軽く満たしたいと思います。

▲トクトクトクッという音だけでウキウキ

酎ハイを頼むと、目の前にあるキンミヤのボトルから入れてくれます。これはいい風景だ。この様子だけで酒が飲める。飲み放題だと自分で注ぐスタイルのようですが、今回は単品オーダーなので、店員さんが作ってくれます。

▲まずは駆け付け一杯

小岩の酎ハイはうまいですね。どこで飲んでもうまいけど、小岩のキンミヤはさらにおいしい気がする。それはきっと酒が濃いからでしょう。ああ、もういい気分だ。現在時刻は昼の3時。草木が寝床から起き出す時間です。

▲注文をすると、お弁当用の大きな厨房で作ってくれます

店員さんはオーダーを受けると、おもむろに厨房に入って、調理を始めます。この広い調理場が、弁当屋さんらしくていいですよね。清潔なキッチンからは、きっとおいしい料理が出てくるはず。

▲揚げ物を頼めば間違いありませんね

揚げたての唐揚げは熱々のサクサクでおいしかった。酎ハイといくつかのつまみで小腹を満たしたら、今日の本丸を攻めるとしましょう。滞在時間はしめて30分でした。

■多い日には1000本売れる超人気店

▲黄色の内装が目を引く小岩のランドマークへ

商店街を駅の方に戻ります。「鳥勢」は、小岩駅から歩いてすぐのところにある焼き鳥店。夕方になると店の外まで人であふれるほどの人気で、地元では知らない人はいない有名店です。

なぜそんなに混むのか、理由は単純で、うまくて安いからです。さっそく入ってみましょう。というか、入り口がないからウォークインですね。

▲「なんで内装を黄色にしたんですか?」「風水的にもいいし、目立つでしょう」

こちらは店長の糸田さん。HPによれば昭和40年開業からとあるから、ずっとこの地で焼き続けてきたんですね。地元では「黄色い店」って呼ばれてるとか。柔らかな顔つきの店主も、この店の名物の一つなんでしょう。この店で修行して巣立っていく人も多いそうです。さっそくいただきましょう。

▲このように並んでいます

カウンターケースに並ぶ20種類以上の串。多い日には1000本も出るといったら、この店の人気が伝わるでしょうか。食べたいものを選んで紙に書いてオーダーします。

▲珍しい部位もあります

こちらの油ツボは、お尻の周りの軟骨だとか。ケースを眺めながら選んでいくのは楽しいですね。高級焼き鳥店に行くとコースでいろいろな部位が出てきますが、それに近い興奮を味わえます。さらに、店主の「うちは有名な店と同じ肉を使ってるからね」という一言で、さらに期待が高まります。

▲1本70円って!

種類の豊富さはもちろん、人気の理由は値段にもあります。なんと1本70円。子どものお小遣いだって買えるでしょう。5本食べても350円だから、私の寂しいお財布だってうれしくて泣いちゃうよ。自由に串を選んだら、店主にオーダーを書いた紙を渡して、さっそく乾杯しましょう。

▲この日は混雑前でした

目の前にあるコンビニで購入した缶チューハイで乾杯。持ち込み料金50円がかかりますが、酒の持ち込みオーケーという懐の深さ。実はこれ、酒の提供という余分なオペレーションを避け、焼き物に集中したいという覚悟の現れだと思うんですよね。

昔ながらの焼き鳥屋さんって、<ビールと日本酒のみ>というところも多いですよね。でも、このシステムだったら、いくらでも酒が選べる。カシスオレンジと焼き鳥なんて、おしゃれな組み合わせだってできる。最高じゃないですか。それなのに、やっぱり酎ハイを選んでしまう自分が好きです。

▲目の前で焼いててくれます

串が焼き台に乗せられると、煙が店内に広がります。というか、店と外を仕切る壁も窓もないから、あっという間にその香りが店外へ。すると、散歩中のおばあちゃんが歩みを止め、こっちをチラチラ見ています。わかるよ、お腹が空いちゃいますよね。リードを引かれた犬もこっちを見ています。

「この香りはな、俺の頼んだ肉なんだぞ」って誇らしい気持ちになります。落語だったら、お代を頂戴したいくらいです。

■町の酒場で異文化交流も誕生

▲左端の串、写真を撮る前に食べてしまった

串が焼けました。いただきます。うん、どれもおいしい。左から3本目と4本目の玉子は、食べ応えがあって、いいアクセントになりますね。肉もプリプリしてて本当においしい。1本70円でこれが食べられるのが信じられない。だって、これにドリンクを2杯飲んだって1000円いかないでしょう。

なんだろう、昭和にタイムスリップしたのか俺は。この値段でやっていけるのか心配すると、店主は「大丈夫だよ」と笑います。

▲店主と会話ができました

この日はあいにくの雨模様。店主は「いつもはたくさん人がいるんだけどな」と残念そうな顔をしているから、売り上げが少ないことを嘆くのかと思いきや「人がたくさんいたほうが、いい写真撮れるでしょう」と。どこまでも気遣いの人なのだと思いました。でも、おかげでいろんな話が聞けたんです。

昔はもっと活気があったこと。最近はどんどん外国のお客さんが増えていること。多い日にはカウンターがフィリピンのお客さんで埋まること。外国の皆さんはおいしそうに串を食べるそうで、店主もうれしそうです。

▲スーカと呼ばれるフィリピンのお酢

こちらは常連さんたちが持ち込んで、お店に常備してあるフィリピンのお酢だとか。こちらを焼きたての肉にかけて、唐辛子を盛大にふりかけて食べると、故郷の味に近くなるんですって。

実際に私もやってみたけど、さっぱりしておいしかった。これはいくらでも酒が進みそいう。

「そうなんだよ。意外とうまいんだよね」と店主は笑います。

▲店内に置かれた電子レンジ

ふと見ると、店内に置かれた電子レンジが目に入りました。食べ物の持ち込み禁止だから弁当を温めるわけじゃあるまいし、なんだろうと気になったんです。

「これは熱燗用ですか?」

「それもあるけど、冬場ってすぐに料理が冷めちゃうから。冷たくなった煮込みを温めてもらいたいなって思ってね」

私は感動したんです。店内の様子はたしかに簡素だし、飾りっけはほとんどない。でも、せっかくだったら酒の場を楽しんでほしいという店主の優しさが、こんな小さなところに現れていることに。

▲いつもは笑顔だけど、串を焼くときは真剣です

安い店って往々にしてサービスがおざなりだけど、この店は安いうえに、ホスピタリティも最高ときたもんだから。私はうれしくなりました。

「いい店ですね」

「あら、ありがとうございます」

店主はお客さんの笑顔が好きなんでしょうね。だから、うまいものをお手頃な価格で食べさせることに喜びを感じる。

こういう店は信頼関係が大事です。さっと食べてさっと帰るのがいいですね。店の前にあるセブンイレブンを何往復かして満足したところで、そろそろお暇しましょう。

ごちそうさま、また来ますね。小岩はやっぱりいい町でした。

▲早く焼けないかな

<店舗情報>
■鳥勢
住所:東京都江戸川区南小岩7-23-19
営業時間:14:30〜20:00頃(売り切れ次第閉店) 
定休日:日曜・祝日・第二月曜
電話:非公開
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。来店前にご確認ください。

〈キンマサタカ〉

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