エンタメを楽しんでもらいたい。「auブックパス」が描くサービス展開

リアル書店には書店員さんがいます。そして電子書店にも“顔が見えない”書店員さんがいます。なかなか実態が見えない電子書店の“中の人”にアレコレ聞いてみようと思います。

今回は、今年10年目を迎えるau公式の電子書籍ストア「auブックパス」を運営する、KDDI株式会社の中嶋さんと株式会社ブックリスタの寺内さんにインタビューしました。

▲電子書店「auブックパス」のロゴ

▲ブックリスタの寺内さん

■「au」が与える安心感

――まずは自己紹介からお願いします。

中嶋 KDDI株式会社エンターテイメント推進部の中嶋と申します。2014年からauブックパスの担当として業務をしています。auブックパスはKDDIから出しているサービスで、主体は我々ですが、出版社さんとの窓口に関しては協業先であるブックリスタさんにお願いしている形になっています。

寺内 株式会社ブックリスタ ブックパス事業部で、auブックパス関連の業務にあたっている寺内と申します。auブックパスのストアの運営やサービス企画を行っています。

――ありがとうございます! auブックパスさんはKDDIさんの運営するau公式の電子書籍サービス、というところが一つの推しになるのかなと思うのですが。

寺内 はい。

――やはりau公式というのは、強みであり、ユーザーの方にとっても安心感がありますよね。今もまだ収まっていないですが、海賊版サイトが幅を効かせている悪影響として、ユーザーから「公式がどれかわからない」という、戸惑いの声も聞こえていますので。

寺内 海賊版サイトが出回っていて、しかも増え続けているんですよね。その点において「auブックパスは公式だから安心・安全ですよ」ということを、ぜひユーザーの皆さんに知っていただきたいですね。我々も業界団体の方々と一緒に啓蒙をしていきたいと思っていますが……海賊版を根絶するというのは、なかなか難しいみたいですよね。

――ABJマーク〔 ※掲示した電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標〕などで業界も対策・対応に取り組んでいますが、若者をはじめとして一般の方には、みんなが知っている「auの看板」というところに安心感があるんだろうなとは思います。

寺内 正規の書店なので安心ですよ、という部分はきちんと訴えていき、ABJ〔ネット上の海賊版対策の中核として2020年7月1日に設立された一般社団法人〕と連携をとりつつ、啓蒙活動などもしていければと思っています。

■読み放題ってお得なんです!

――auブックパスさんの特徴といえば、読み放題サービスがありますよね。

寺内 読み放題プランとして、全ジャンルが読める「総合コース」と、雑誌に特化した「マガジンコース」があります。どちらかを、お客様お好みに合わせてお選びいただける形になっています。

――「auブックパスへようこそ」というページがありますよね。読み放題はこういうものですよ、と説明しているのがわかりやすくていいですね。足し算になっているので、いくらになるからお得だよっていうのがわかりやすくて、ついポチっとしそうになる(笑)。あのように可視化されていると、月額を払ってもいいなって思っちゃいました。

寺内 おそらく「○○が欲しい」とか、決まった本を求めていらっしゃるお客様は、読み放題プランってあんまり価値を感じていただきづらいとは思いますが。ただし、そういうお客様でも、あまり意識せずとも月に1~2冊は雑誌を読んでいるなど、誰しも書籍に触れる機会は多いはずで。ふとしたときに「そういえば先月4冊読んだけど、読み放題プランに入っていれば1冊分の値段で読めたな」みたいなことをお客さん自身に理解していただきたくて、去年、このページを刷新し、わかりやすく、かつ、お得感を感じていただけるような記述にさせていただきました。

――なるほど。読み放題で読んでいただいて、特定の本が読みたくなったらアラカルトで購入する、みたいなこともできますね。話題になっている本に興味があっても、巻が続いているタイトルはハードルが高く手が伸びづらいので、1巻だけでも読み放題に投入されていれば手に取りやすくなりますし。

寺内 読み放題サービスだけでお客様に満足していただくというのも、我々としては目指してはおりますが、読み放題で試しに1冊読んでみて、面白いから続きを買いただくという流れをもっと作っていきたいですね。

――それは出版社側もありがたいですし、どんどん推進していただきたいです!

寺内 読み放題サービスをきっかけに、埋もれている面白い作品をお客さんに届けられれば、我々としても非常にうれしいです。KDDIは書籍と畑違いの通信会社ですが、出版業界に良い影響を与えられるのであれば、電子書籍で貢献していきたいと考えています。

■緊急事態宣言時に無料開放!

――去年(2020年)、最初の緊急事態宣言のとき、読み放題サービスを無料開放されていましたよね。電子書籍自体が上り調子になっていたタイミングでもありましたが、無料開放してくださることによって、さらにハードルが下がり、電子書籍を試してくれた方がかなり増えたんだろうな、という印象があります。

寺内 あのときは無料開放をしていたので、多くのお客様に加入していただけたのと、購読数もかなり伸びました。出版社様側にもご賛同いただいて「なんだったら追加で読み放題に投入しようか?」というお声掛けもいただいて。お客様には、それなりの価値を提供できたと思ってます。

ステイホームせざるを得ない状況になってしまったお客様に読書を楽しんいただくため、また、世の中的に活字離れが叫ばれているなかで久しぶりに本を読むきっかけになればという考えで、商売抜きでやらせていただきました。

■著者や出版社と連携していく面白さ

――次に、電子書店員として面白さを感じる瞬間、というのをお聞きしたいのですが。

寺内 実は面白いのに埋もれてしまっている書籍や、セカンドシーズンが刊行された書籍のキャンペーンを実施したときに、お客様はじめ出版社の方からも「すごくいいですね」とか、著者の方から「うれしいです」「私もTwitterで拡散します」とか、反応やコメントをいただくことがあって。そのときは、出版業界でただ商売をしているだけではなく、皆さんから認めてもらえたと実感できて、非常に面白いかなと思います。

私は以前、携帯電話販売業務をしていたことがありますが、その業務ではどちらかといえばお客様から直接褒めていただくというパターンが多かったです。それもうれしさや、面白さはもちろんありましたが、著者の方や、出版社の方から直接お言葉をいただけたときは非常に面白いと感じる瞬間です。

――弊社も最近『韓国文学特集』や『このBLに感謝』特集でお声がけいただきました。数多くあるBL作品のなかで、弊社を選んでいただいたときは「見つけてもらえた」といううれしさもありましたし、ジャンルのなかでも狭めたテーマで特集を組んでもらえると、ユーザーの方も手に取りやすいですよね。

寺内 単純にセールをして、お客様に売るというパターン以外で「この本面白いよ!」「この本読んでる人は絶対こっちもいいよ!」というような、書店員としてのレコメンドをもう少し強化していきたいなと考えています。

――なるほど。このお話は書店員としての苦労や悩みにもつながっていきますか?

寺内 コストをかけてお客様に届けることができれば一番早くて楽ですが、普段は少年漫画しか読んでいないお客様に対して、他の作品の面白さを届ける手段がなかなか見つけられず、その辺が苦労するところかなとは思います。

――そうですね、ジャンルを超えたひも付けができるといいですね。

寺内 コミック以外も、どんどんレコメンドをしていきたいです。例えば、サッカーマンガを読んでいる人は、サッカーが好きなのか、青春ものが好きなのか、というように分かれると思うんです。サッカーマンガを起点に、いろいろオススメできるはずだと考えていて。システム的な観点も含めつつ、どうやって的確にお客様に届けていくかが最近のストアとしての悩みです。

――レコメンドって本を全部読んで選んでいるんですか? システムチェックじゃなくて。

寺内 システム的に選んでいるケースもありますが、本好きのメンバーがたくさんいるので「この本だったら、こういうのもオススメに混ぜたほうがいいんじゃない?」など、スタッフの意見を反映させて、グルーピングしたりしています。

■「3」がつく日は三太郎キャンペーン

――auの各媒体とも連携をしてキャンペーンをされていますよね。

中嶋 CMでもお馴染みだとは思いますが、auでは三太郎というキャラクターを使ってて「3がつく日はお得です」という取り組みをKDDI全体で行っています。毎月3日・13日・23日に関しては、auブックパスでも電子書籍のキャンペーンを仕掛けています。

――特典は毎回違うんですか?

中嶋 お客様が一番求めていらっしゃるのは「何%OFF」「何%還元」という具体的にお得になる部分ですが、目に留めていただて購入につなげるために、先着にしてみたり、使える下限金額を変えてみたりと、毎回工夫しています。

――三太郎の日って言われると、忘れないでログインできそうですね。さて、少し話は変わりますが、auブックパスさんで売れているジャンルはやはり「コミック」なのでしょうか?

寺内 そうですね。コミック全般が売り上げのメインではあります。特に、BLコミック・TLコミックは、女性が若干多いユーザー構成比も影響しているためか、その2ジャンルで施策などを打つと、比較的反響が高いです。

――女性ユーザーが多いということですが、年齢層はどうなっていますか?

寺内 30~40代が中心です。昔からauの携帯を使用してくださっているお客様がauブックパスを利用しているという割合が高いためです。ただし、年齢や携帯キャリアの縛りは関係なしにご利用いただけるようなストアを目指しています(auブックパスはau以外のお客様も利用できるためです)。

■工具を買った人にDIYの本を薦めたい

――個人的に推したい本を教えてもらえますか?

寺内 コミックを中心に展開しているストアは、たくさんありますよね。同じく、auブックパスもコミックが売上のメインにはなっていますが、せっかく全ジャンルを揃えている総合書店なので、もっと幅広い書籍に触れていただきたいなと個人的には思っています。

実用書っていうのは、私個人の趣味なんですが(笑)。DIYの本や、新しい収納を作る本、車の改造をする本、料理本などが大好きなので。

――料理本も見られるんですか?

寺内 タサン志麻さん(『伝説の家政婦 沸騰ワード10レシピ』など)とか大好きですね。あんなに洒落たものは作れないですが(笑)。でも趣味って、みんな少なからず一つ二つあったりすると思うので、コミックだけでなく、実用書もぜひ読んでいただきたいなと思っています。実用書は、何かきっかけがないとなかなか読まれないと思うので、そのきっかけをうまく作りたいなと。

伝説の家政婦 沸騰ワード10レシピ( https://bookpass.auone.jp/pack/detail/?iid=LT000142714001208565 )

――今までも特集を組んでいただいているので、すでに作られている印象はありますが。

寺内 もっと増やしていきたいと思っていますし、できればシステム的な観点でもいろいろと実現したいなと考えています。せっかくauのサービスなので、例えばですが、auのECサイトでのこぎりや電動ドリルを買っているお客様に、DIYの本を勧めるなど。

――なるほど、ありがとうございます! では、最後に今後の展望をお聞かせいただけますか?

中嶋 「KDDIならでは」と考えると、先ほど出てきたECサイトとの連携や、映像・音楽のサービスもKDDIとして持っているので、その辺りを含め「エンタメ全体」として、お客様に楽しんでいただけるようなサービスにしていければと。

例えば、映像だったら「TELASA」、音楽だったら「うたパス」があります。どちらもサブスクのサービスと単品販売のサービスを組み合わせて展開しています。もっと具体的に言えば、『鬼滅の刃』なら、auブックパスが原作コミック、TELASAがアニメ、うたパスがLiSAさんの曲やライブ配信をするなど、トータルでお客様に楽しんでいただける仕組みを作れるのは我々の強みだと思うので、そのあたり、もっと力を入れていきたいです。

――本日はありがとうございました!

auブックパス – auの電子書籍ストア –( https://bookpass.auone.jp/ )

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