年配者に多い「足腰の痛み」「冷えのぼせ」は“おなか”から整える

健康で生きていきたい。そう思っていても、年齢を重ねるごとに体の調子が悪くなってしまうことは、病院に行ってみるとよくわかります。大阪で整体院「ハラ揉みわごいち」を主宰する三宅弘晃氏が、20年間にわたり数千人のおなかをもんできた経験から、高齢者に多くみられる慢性的な不調について語ります。

※本記事は、三宅弘晃(著)/寺田武史(監修)『「おなか白湯もみ」健康法 -1日3分で長引く不調が改善!-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■おなかと骨盤を整えれば足腰の痛みもなくなる

足腰が弱ってきて、身長も年々縮んでいく ひざが痛くて病院で湿布薬をもらっても、効いているのかどうかわからない お医者さんには、そろそろ股関節の手術と言われているけど、どうしても怖い

街の整形外科は、ひざや腰、股関節の痛みを抱えた高齢者でいつも混んでいます。痛みはじめの頃は、湿布薬や注射でなんとか痛みをしのいでいますが、徐々にそれも効かなくなってくると「そろそろ手術しましょうか」と、お医者さんとの相談が始まります。

誰しも自分の体にメスなど入れたくないし、人工関節のように自分の骨を金属と入れ替えるなど、想像するだけで怖いものです。それでも痛みがだんだんと増してきて、寝ても覚めても痛みに苦しむようになると、手術を考えざるをえなくなります。

しかし果たして、ひざや腰の痛みには手術しかないのでしょうか。いつまでも自分の骨と筋肉で歩き続ける人生を送ることはできないものでしょうか。私は、おなかだけでなく、ひざや股関節の施術も行いますが、手術をしなくても改善する方法があります。

▲おなかと骨盤を整えれば足腰の痛みもなくなる イメージ:プラナ / PIXTA

ポイントは胃腸のガスと骨盤です。

胃腸にガスが溜まっている人、あるいは内臓全体が下がっている人は、下腹部の密度が高くなり、骨盤を押し広げてしまいます。骨盤が本来の状態よりも広がってしまうと、腰や股関節の動きが悪くなり、ひざや足首まで悪影響が出ます。これが腰痛やひざ痛を引き起こしているのです。

いわば、ひざ痛や腰痛は内科の領域でもあるのです。でも多くの人は、整形外科でひざや腰だけしか治療しないから、なかなか治らないとも考えられます。私はいつも、ひざや腰と一緒におなかを整えていきます。おなかと骨盤を同時に整えれば、足腰の痛みは消失していくケースが多いのです。

「そういえば最近、腰が痛くなくなった」と患者の皆さんが口を揃えるのは、おなかから体を整えたから。胃腸のガスがなくなって、骨盤が締まってきたからです。おなかを元気にすれば、腰痛やひざ痛を防ぎ、いつまでも達者な足腰を守っていけます。

■手足の「冷え」と顔の「のぼせ」を整える

手足の先の冷えがつらくて痛くて 手足は冷えて、顔はほてって汗が噴くの 急に冷えたりほてったりする

気温に関係なく冷えたり、ほてったり。血行が悪い人の特徴のひとつに、若い頃は「冷え性」、歳をとると「冷えのぼせ」の悩みが増えることが挙げられます。

冷え性は、冷たいのを通り越して「痛み」になることもあります。寝るときに布団を何枚もかぶって、湯たんぽを入れないと冷えて眠れないという方も大勢いらっしゃいます。いわゆる「末端冷え性」ですが、そういう人は、からだの末端だけでなく、おなかも冷たいものです。

冷えのぼせは、高齢の方からよく寄せられる悩みです。全身の体温ほほぼ一定のはずなのに、手先や足先だけ冷えて、顔は熱くて汗をかくという不快な症状。これは血行不良に加えて、自律神経の働きが乱れている証拠です。

▲冷えのぼせは自律神経の働きが乱れている証拠 イメージ:PIXTA

冷え性改善法で、よく聞くのは手足を温める方法や半身浴ですが、これらでは根本的な解決になりません。なぜなら、血行不良は手足ではなく、おなかから発生しているからです。

おなかの真ん中には多くの血管があり、たくさんの血液が流れていますが、血行不良の人は、おなかの中の血管がまわりの臓器に圧迫されて血流が悪くなっているので、からだの末端まで届いていかないのです。

また、冷えのぼせの原因となる自律神経の乱れは「交感神経」と「副交感神経」のバランスだということが知られています。しかし、おなかの中がガスや炎症だらけの人は「副交感神経」を働かせることができません。

状態の悪いおなかの中には、ガスと炎症がたくさんあります。これらが内臓にとって慢性的なストレスとなり、からだがリラックスしにくくなるのです。血行不良も自律神経の乱れも「おなか白湯もみ」で改善することができます。

■簡単にできるセルフケア「おなか湯もみ」

おなか白湯もみは、とても簡単な“おなかセルフケア”の方法です。白湯を飲み、横になって、手順通りに3~5分間おなかをもむだけです。道具もいりません。特別な技術も必要ありません。ただお白湯を飲んでおなかをもめば、あなたのおなかが温まって、だんだん元気に動き出します。

▲「おなか白湯もみ」のやり方 『「おなか白湯もみ」健康法』(ワニ・プラス:刊)より

「おなか湯もみ」で直接ほぐせる6つの臓器、腎臓・胃・胆のう・大腸・小腸・膀胱のうち、ここでは「胃のもみ方」をお教えします。

「胃もみ」は、おなか側から内臓をもみます。胃の位置は左肋骨の下あたりです。ここに右手の3本の指の「指のはら」で面を作って当てます。面の大きさは500円玉よりひと回り大きいくらいのイメージです。決して指先で一点集中にならないよう気をつけてください。また右手には一切力を入れず、ただ手を当てておくだけにします。

両手を重ね、指のはらを使って8カウント×4回もみます。おなかの奥に向かって垂直に押すのではなく、肋骨の奥に隠れている胃を少しだけおへそ方向に引っ張り出すようにもむのがコツです。こうすることで、胃全体の柔軟性を高めながら、もみほぐしていくことが可能となります。また、胃を動かすことで、すい臓も動かされてほぐれていきます。

注意点として、肋骨はもまないこと。骨密度の低い方は特に注意を。肋骨のへりを、やさしくなめるようにゆっくりと胃をもみましょう。また、胃をもんでいてちくっとする痛みがあれば炎症の可能性があります。その場合は痛みが出ない範囲でやさしく全体をもんであげましょう。痛みが消えない場合や激痛を感じた場合は医師に相談してください。

「胃もみ」は両手を重ねて行いますが、下の右手にはまったく力を入れないのがコツです。力を加えるのは右手の上に重ねた左手だけにしてください。左手全体で右手の「指のはら」を包み込むように、へそ方向に向かって押し下げます。皮膚が突っ張って伸びなくなったら軽く手を放して、同じ動きを繰り返します。力加減はあまり強くする必要はありません。へそ方向に向かって、もみゆらしの刺激が胃に伝われば十分です。

▲「胃もみ」のやり方 『「おなか白湯もみ」健康法』(ワニ・プラス:刊)より

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