怒ったカバ突進…南アフリカのサファリガイド太田ゆかの刺激的な日常

20代前半に単身南アフリカに渡り、サバンナで暮らしながら、環境保護活動に取り組む日本人女性がいる。太田ゆかさん(27歳)は、南アフリカ政府が公認するサファリガイドとして働く、ただ一人の日本人だ。幼い頃からの動物好きが高じてアフリカの大地に立つことになったという彼女に、「好きを仕事にすること」について話を聞いた。

▲マプートの北辺りにクルーガー国立公園はある 地図:sakura / PIXTA

■大草原の糞(フン)から動物探し

―― 今日はよろしくお願いします。太田さんは今、どちらで働かれているのでしょうか?

太田 はい。南アフリカ共和国北東部のリンポポ州にあるクルーガー国立公園で、付近にある一軒家でルームシェアをしています。

―― お仕事は、日本女性ではただ一人だというサファリガイドです。なぜ、その職業を目指すことになったのですか?

太田 幼い頃から動物好きで、野生動物保護の仕事をすることが夢でした。大学2年のときに初めてアフリカのサバンナで環境保護ボランティアに3週間参加したのですが、アフリカの自然に圧倒され、そこで働いていたサファリガイドに憧れを持ったのがきっかけで、もうアフリカに渡って6年半になります。

―― そちらで働いている日本人は太田さん一人ですか?

太田 男性の方だと、私よりも前に同じ資格を取った方がいらっしゃるんですが、今は日本に戻られているようです。ありがたいことに、数年前からちょこちょこメディアで取り上げていただいたことがきっかけで、サファリガイドを目指す日本人女性も増えています。私も学校につないだりしつつ、実際に資格を取得された方もいるんですよ。

坂上忍&ローラが南アフリカで密猟と戦う日本人女性に密着! - フジテレビ( https://www.fujitv.co.jp/muscat/20195898.html )

?―― ガイドになる競争率は高いのでしょうか?

太田 そうですね。というのも、サファリガイドは南アフリカでは人気の職業のひとつだからです。ですから、外国人でガイドになれる確率はとても低いと思います。私の感覚では全体の5%くらいでしょうか。とはいえ、意外と激務ですぐ辞めてしまう人も多く、空き自体は定期的に出ます。

▲バッファローの群れを撮影(写真:本人提供)

―― 狭き門なのですね。具体的なお仕事の内容を教えていただけますか?

太田 人と自然をつなぐっていうのが一番の役割だと思っています。世界中から野生動物を見たい、自然を体験したいという方たちをサファリカーに乗せて、サバンナに向かいます。そうして見つけた動物について理解してもらうことが大事です。

ただ動物かわいいでしょ、すごいでしょうって見せるのではなくて、その動物がどういう役割を生態系のなかで果たしているのかとか、今その動物が置かれている環境、どんな保護が必要なのかといった、環境保護についても学んでもらえるようにガイドするのが、大切な仕事になります。

もちろん、相手は野生動物なので、動物園と違ってどこに行ったら何がいるっていうのはなく、基本的に探偵のようにして動物が残していくフンだったり足跡だったり、いろんなヒントを辿りながら見つけるのが、まずは必要なスキルとなります。

▲人間の顔より大きいソ?ウのフン(写真:本人提供)

―― フンですか?

太田 そうですね。フンがまだ柔らかかったらその動物が近くにいるはず、といったように、いろいろな情報をヒントにします。?

■持ち場は江戸川区と同じ5000ヘクタール!

―― サファリガイドになるために必要な資格や試験を教えてください。

太田 南アフリカ政府が認めたフィールドガイド協会が定める筆記試験と、実技試験に合格する必要があります。それから救急救命の資格や、サファリカーに乗客を乗せるための、日本の第二種運転免許のような運転免許も必須です。また、サファリカーを降りてガイドをする「ウォーキングサファリガイド」になるためには、トレイルガイドの資格とライフル取扱免許が必要です。

―― そうして苦労してなったサファリガイド。今日も取材前に、早朝からサファリを回って来たと聞きました。

太田 動物は涼しい早朝と夕方に活動するから、サファリの仕事は朝が早いです。狩りをしようっていうタイミングだったりとか、縄張りをパトロールしたりとか……動物の動きがあるときのほうが、サファリのお客さんとしても満足度が高いです。まぁ真っ昼間でも動物と遭遇するときもありますが、だいたい寝てるだけなんです(笑)。

ちなみに今、南アフリカは朝の10時。午前のサファリがちょうど終わったところです。今日はあんまり運がなくて、動物を見つけられず帰ってきました。

▲ホ?ランティア団体て?のお仕事(写真提供:Jack Borowiak)

―― ずいぶん長時間働くのですね。クルーガー国立公園は、日本の四国ぐらいの大きさだと聞きましたが、どれくらいが太田さんの活動範囲なのですか?

太田 私がガイドとして行き来できるのは、だいたい5000ヘクタールですね。以前、取材していただいたときに教えてもらったんですが、東京の江戸川区と同じくらいの面積だそうです。

―― とてつもない広さですね! そこで動物を探すのは簡単なことではないのでは?

太田 自然相手なので、うまくいかないときもありますし、逆に本当に何がいつ起きるかわからないのが、サファリの醍醐味でもあります。全然見つけられないなぁと思ってたら、急にライオンの群れに出くわしたり、予測しづらいのがサファリの面白さでもでもあります。また、仲間内で情報は共有しているので、より効果的に動物を探すことは可能になっています。

―― 今、太田さんが活動されているエリアでは、どんな動物をよく見かけるんですか?

▲ビッグファイブに数えられるゾウとサイ(写真:本人提供)

太田 ビッグファイブのひとつ、ライオンにはここ2週間くらいはほぼ毎日出会っていますね。ヒョウもいるにはいるんですが、隠れるのが上手で。車の音が聞こえるとすぐ隠れちゃったりとかもして、なかなか出会いにくいですね。

―― ビッグファイブって言葉、初めて聞きました。

太田 南アフリカに棲息するライオン・ヒョウ・ゾウ・サイ・バッファローは「ビッグファイブ」と呼ばれているんです。南アフリカの紙幣のデザインにも採用されています。シマウマとかキリンとかインパラ、いわゆる草食動物系はエリアごとにたくさんいる感じです。インパラは今、サバンナで一番生息数が多い動物なんですよ。

■カバが怒って突進!

―― サバンナの大自然で働いて約7年になると思うんですが、土壇場と言いますか、危険な目にあったことはありますか?

太田 死ぬかも?って思ったことが、一度だけあります(苦笑)。見習い時代のオフに、ガイド仲間と2人で散歩していたんですね。そしたら、ちょっと離れた水場にカバがいたので見に行ったんですけど、近づきすぎてカバが猛烈に怒って水場から出てきたんです。

実は凶暴なカハ?(写真:本人提供)

―― カバって実はすごい狂暴だって聞いたことがありますが……。

太田 そうなんですよ。本気で走ったら、スピードもかなり出ますからね。もう2人して全力のダッシュで逃げました。

―― 今、無事でいるということは、事故は起きなかったということですね。安心しました(笑)。

太田 20メートルくらい逃げたとは思うのですが、あまり記憶にありません……。ものすごい長く感じましたが、あっという間の出来事でした。どこかのタイミングでカバが引き返してくれたんだと思います。

―― 無事でよかったです。

太田 乾季で水の量が少なくて、カバがかなりストレスを感じている状況だったことも、理由のひとつだと先輩のガイドに聞きました。水の中は、カバにとって一番安全で安心できる場所なので、そこからわざわざ出てきて人を襲うことは考えにくいことではあったんですが、野生の動物相手では細心の注意が必要なんだと学びました。

―― サファリガイドのお給料についてはいかがでしょうか?

太田 南アフリカでは、サファリガイドになる前に見習い期間を経ることが多いです。お給料が出ない時期が3〜6カ月ぐらいあって、そのあいだに働きながら経験を積み、会社に対してアピールしていくのが一般的です。

―― 外国人がなろうとすると、かなりハードルが高いかもしれませんね。

太田 私もなかなか職場を見つけることができなかったんですが、Facebookがきっかけで就職することができたんです。

―― お金というより、やりがいや好きなことやっている満足感、達成感があるから続いているのでしょうか?

太田 正直、お金持ちになりたい人はやらないほうがいい仕事ではあるかもしれません(苦笑)。でも、それ以上に素敵な気持ちにさせてくれる仕事ですし、私たちが忘れてしまいがちな、「人間も自然の命の輪の一部である」ということを意識させてくれるのもここサバンナ。

私もできれば、おばあちゃんになるまで働き続けたいと思っています。

唸り声を上げるライオンと対面したとき、サファリガイドがすべきこととは? | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ)( https://wanibooks-newscrunch.com/articles/-/3140 )

■プロフィール

太田 ゆか(おおた・ゆか)

1995年3月13日アメリカ生まれ。幼い頃から動物好きで、大学時代の留学をきっかけに、環境保護に関わる仕事に就きたいと決意。サファリガイドの勉強のため、20歳の時に南アフリカへ渡りサファリガイドの訓練学校に入学。現在、南アフリカの公認のサファリガイドとして、唯一現地で働く日本人女性。コロナ禍で観光客が激減する中、「バーチャルサファリ」を配信するなど新しい試みにも意欲的。Instagram: @yukaonsafari 、YouTube:『 Yuka on Safari 』、オフィシャルサイト:「 Yuka on Safari 」

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