なぜWOWOWドラマは本格派だと言われるのか?

なぜWOWOWドラマは本格派だと言われるのか?

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新型コロナが流行し始めてから、需要が伸びた動画配信サービス。NetflixやAmazonプライムビデオなどで、家で映画やドラマを楽しんでいる人も多いはず。そのなかには日本のドラマも多く配信されているが、海外のドラマや映画などに負けないクオリティと注目されているのがWOWOWのオリジナルドラマだ。その秘密を『邪神の天秤 公安分析班』で監督を務めた内片輝氏に聞いた。

■WOWOWドラマは予算が高い?

「監督、ドラマ見ました! あれめっちゃくちゃ予算かかってるんでしょ?」

WOWOWドラマを監督していると、知り合いのプロデューサーから何度も言われてきたセリフ。

「ええ。そりゃもう、金に糸目はつけませんからね」と答えたことは、実は一度もない。

と言っても、「少ない予算だから、むしろ困っているのだ!」と答えるわけでもなく、バランスの取れた常識的な予算であり、作品によっては地上波テレビドラマのほうこそ高予算だったりする。

それなのに、予算がかかってそうなだと、と感じさせるわけだ。その理由の一つに、映像の違いが挙げられる。映像の違い=見た目の違い。そう、見た目が違う。見た目を変えるために撮影のフォーマットを変えているのだ。同じテレビドラマであっても、撮影の様式が違うのである。

そもそも動画というのは、静止画を高速で何枚も変化させて、まるで動いているように見せる、というシステム。小学校の授業中、教科書の端に絵を描いてパラパラめくったことがあるはず(あるでしょ? 著者は全ての教科書の右下隅がショートフィルム劇場でした)……パラパラ漫画、と言われるあれと同じ。テレビで見る映像も基本的にはパラパラ漫画と同じ仕組みになっている。

実際の撮影において、一秒間に何枚の絵をめくるのか(何枚で撮影するのか)の基準がWOWOWと地上波では違っていて、24枚なのがWOWOW、30枚なのが地上波になる。この中途半端な24という数字、これは映画の撮影に準じた数字だ。映画撮影の歴史の中で「一秒間に24枚」撮影が定着し、それは基本的に現代でも変わらない。

一方のテレビドラマは「一秒間に30枚」での撮影がスタンダードである(実はこの辺、細かい仕様があるのだが、今回はざっくりと説明させてください)。衛星放送と地上波放送との違いがあるとはいえ、同じテレビドラマなのにWOWOWが映画の基準を取り入れたのはなぜなのか。その理由の一つになるだろうエピソードを紹介したい。

私が初めてWOWOWでドラマ監督をしたのが2011年。初めてお会いしたプロデューサーが話してくれたオファーの理由――それは、私が監督した“ある作品”のようなドラマを、WOWOWでも撮ってほしいから、だった。

その作品とは、土曜ワイド劇場『刑事殺し』(テレビ朝日系2007〜09年)。なぜ、その『刑事殺し』がWOWOWのプロデューサーに響いたのか。結論を言うと、映像のトーン。地上波テレビドラマにも関わらず『刑事殺し』は一秒間に24枚で撮影していた。

刑事殺し( https://www.bs-asahi.co.jp/drama-story/monday/202207291000/ )

■24コマで撮影していた『刑事殺し』

テレビドラマにおいて、この基準での撮影は当時珍しく、偶然にも目に留まったのだろう。一秒間に24コマ、専門的に言うと24FPS――フレーム・パー・セカンド、一秒間のフレーム数(コマ数)と言う意味で、映画と同じ基準になる。

本格的な映像に仕上げるには、さまざまな要素があるなかで、一秒間のフレーム数を24にすることで、なぜだか「重厚な」「お金がかかっている」「本格的な」という印象を作品に纏わせることができるのだ。

しかし疑問には思わないだろうか? 一秒間に30コマのほうが情報量が多く、滑らかに動きが再現される。事実、激しい動きは24コマのほうが粗くて見づらかったりする。なのに、お客さんは「本格的な作品だ」と感じてしまう。なるほど、映画と同じ撮り方だから、かっこいいのね? ではない。逆である。24コマで撮影するから映画も本格的に見える、のである。

では、なぜ24コマだと本格的に見えるのか。一秒間に24コマの撮影だと、30コマよりも見えていない時間が長いことを意味する。その見えない隙間を、お客さんは脳内で想像し、補完し、そして動画として認識する。

言い換えると、想像する時間がわずかに長いのだ。お客さんが想像した脳内ビジュアルのほうが情報が多く、結果としてリッチな映像になる。お客さんの想像力の補完が、作品のクオリティを上げていると言っていいだろう。その想像の手がかりになる映像が一秒間に30枚だと多すぎて、10枚だと少なすぎる。24枚だとちょうどいい脳内ビジュアルとのバランスになるのだ。

私がWOWOWで監督した作品は全て24FPSで撮影している。『密告はうたう』(注:DVD出たばかりです)、『殺人分析班シリーズ 蝶の力学』『公安分析班 邪神の天秤』……全てそうだ。これらが本格的で面白いな、と思っていただけるのなら、それはあなたの無意識の想像力のおかげでもあるのだ。

ここまで読んでいただき、へえそうなんだ、面白いな、と思った読者の方。もし手元にiPhoneがあれば、カメラ設定を見てほしい。ビデオ撮影の項目には「24fps」というモードが存在する。こんな中途半端な数字の設定がある理由は、皆さんはもうおわかりのはず。

お子さんの演劇や運動会、彼女のダンス発表会、あるいは同僚のプレゼンでもいい。WOWOWドラマやハリウッド映画のように見せたければ、ぜひ24FPSモードで撮影することをお勧めする。

「なんか本格的!」と言われること請け合いである。

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