無職から作家デビュー!? 方丈海「貯金で“自由を購入”して作家活動に専念」

いま、新しい“ショートショート”として、ツイッターの文字制限である140字以内で完結する「140字小説」というジャンルが流行しているのをご存じですか? なかでも、20万以上もの「いいね!」を続々と叩き出す話題のアカウントの生みの親こそ、作家・方丈海氏――。

意外な展開&オチが最大の魅力で、ショートショートはもちろん、ミステリーや「人怖(ヒトコワ)」好きなら、ハマること間違いなし! そんな「140字小説」の魅力と、職業作家として活動する方丈氏に迫ります。

■2020年に活動開始、総作品数はなんと438作品に!

――普段どんな活動をされていますか? 簡単に自己紹介をお願いします。ぜひ「方丈海」というペンネームの由来についても、お教えください!

方丈 今は定職についておらず、作家業に専念しています。普段は、ツイッターを筆頭とした各種SNSに140字小説を投稿するかたわら、次の出版も視野にいれつつ、140字以上の小説作品も短編から長編まで執筆しています。それらを、クリエイター支援型のサブスクサービスに格納しています。作家としてのいろいろな発信手段を模索中のため、活動内容は今までも変化してきましたし、これからも変わるかもしれません。

▲ツイッターを筆頭とした各種SNSに140字小説を投稿 イメージ:写真AC

ペンネームの由来は、まず、覚えやすく印象に残りやすい名前がいいな、という考えに始まりました。そのためには、読み方がわかりやすく、スッキリした字面にしたかったのです。そんなことを考えながら、天井を眺めていると、四角かったので、この名前にしました。海は、単純に海が好きだったからです。

――ツイッターに小説を投稿し始めたのはいつからですか? 現在の総作品数についてもお教えいただけますでしょうか。

方丈 2020年の7月からです。方丈海というアカウントは、140字小説を投稿するために作成したので、アカウント作成時期と同じです。

2023年1月現在、総作品数は438作品でした。基本的に、新作投稿の日と、過去作の再投稿の日の交互なので、新作は2日に1作、日々増えています。いつまで続けるかはいまのところ未定ですが、できる限り長く続けたいです。

■作家としては「ほぼゼロ」からのスタート!?

――お仕事を辞めて作家を目指したとき、誰かに相談されましたか? もちろんご不安もあったかと思いますが、仕事を続けながら作家活動するという方法を取らなかったのはなぜでしょう? 

方丈 誰にも相談せず、個人の判断でひっそりと退職しました。親族や知人友人には、事後報告です。退職時はまだアマチュアで、フォロワーさんも数百人で、手持ちの作品も少なく、作家としてはほぼゼロからのスタートでした。

執筆とは無関係に、転職しようかなという考えがありました。その際に、どうせなら、貯金の一部を使って1年くらいの自由を確保し、やりたかったことに思い切り全力投球してみたい、という願望が強く芽生え、期間限定で作家活動に専念しようと思いました。もともと、お金をあまり使わない性質だったので、そのとき最も魅力的に見えたお金の使い道が、自由の購入だったのです。

自己紹介|方丈 海|note( https://note.com/hojo_kai/n/n25d7580671c6 )

それに、仕事を再開しても作家活動は続けるつもりだったので、この1年で築いたネット上の環境と執筆の経験値、蓄積させた作品は、これから先も活き続ける、という自己投資的な感覚でもありました。

最初は1年のつもりでしたが、さまざまなご縁とご厚意に恵まれ、延命に延命を重ね、現時点で仕事を辞めて2年が経ちました。商業出版を果たした今でも、生活の安定が先なのか、それとも予算が尽きて仕事を再開するのか、そのせめぎ合いの最中にいます。

■増え続けるフォロワー、その一方で・・・!?

――初めて作品が“バスった”ときのことを覚えていますか? よろしければ、140字小説の投稿を始めて、良かったことと苦労したことを、それぞれお教えください。

方丈 とてもよく覚えております。三日三晩鳴り止まない通知と、増え続けるフォロワーさんに、心は歓喜と戦慄で満たされました。

良かったことは、やはり、多くのフォロワーさんとつながれたことです。なんの経歴も実績もない私を、これほどまでに支え、応援してくださった方々のおかげで、今に至ることができました。本当にありがたいことです。

苦労したことは、現在進行形ですが、プレッシャーかもしれません。アカウントを作った当初は、当然ながらフォロワーさんもゼロからのスタートで、失うものもなく気楽でした。ですが、現時点で11万人の方々にフォローしていただき、皆さんにガッカリされないように……と思いながら執筆し、投稿するのは、やはり昔ほど気楽にはいきません。

一方、そのプレッシャーが、より良いものを創ろうという発破にもなっているため、ありがたいことでもあります。

――140字小説はどんなふうに書いていらっしゃいますか? 着想のきっかけや意識していること、工夫などあれば。

方丈 普段の生活の中で「これは何かに使えるかも」と感じた情報やニュース、話題や出来事をメモしています。メモを見返して「これがどうなったら面白いかな?」と、いろいろなパターンを思案します。頭の中は、連想ゲームのようなものですね。そのため、メモとは全然関係の無い作品になることもよくあります。メモが無いときは、直近で体験したことや見聞きしたことをベースに、連想を重ねます。

▲140字小説は連想ゲームのようなもの。メモとは全然関係の無い作品になることもある イメージ:写真AC

工夫している点としては、作った作品はしばらく寝かせることです。その日にできた作品を、その日のうちに投稿することは滅多にありません。時間を置いて、記憶が薄れたころ、第三者に近い目線で見直すようにしています。アイディアを思いついた直後は面白くても、冷静に見返したら全然だった……ということは、よくあるからです。

■「140字小説の魅力」=「想像力の掻き立て」

――ずばり、140字小説の魅力とはなんだと思われますか? 今後書きたいものや展望、目標についてもお聞かせください!

方丈 個人的には、“想像力の掻き立て”にあると思います。多くを語れない140字という文字数は、察しの余地を残し、想像力を掻き立てる、そんな文章と相性が良いためです。

一番の目標は、やはり、専業の小説家として安定して食べていくことです。そのためには、140字以上の作品も増やしていき、コンスタントな出版を目指していきたいです。同時に、サブスク内のコンテンツも充実させていき、目標クリアの確率を少しでも上げることが、今後の展望です。

ですが、さまざまな娯楽サービスにあふれる今の世の中、埋もれるのはあっという間です。そもそも、浮上していることに気づいてもらうのも一苦労です。そうならないための仕組み作りも、並行して必須だと考えています。各種SNSへの140字小説の毎日投稿も、ホームページ作りも、日記ブログも、全てその一環です。

今も昔もトライ&エラーの日々ですし、仮にうまくいっても、5年後10年後には、通用しなくなっているかもしれません。ですので、時流に合わせる柔軟性を忘れず、技術を磨くことを怠らず、価値ある作品を蓄積させていき、作家としての地盤を固めていくことが長期的な目標であり、展望です。

「今も昔もトライ&エラーの日々」と語る、方丈氏。赤裸々に明かされた「作家」としての工夫や展望は、「自分も書き手になってみたい!」と思う人にとって、大きなヒントになることでしょう。ますます進化し続ける方丈海さんから、今後も目が離せません!

▲初書籍となった『#140字小説』

■プロフィール

方丈 海(ほうじょう・かい)

作家。Twitterを中心としたSNSに、140字以内で完結する超短編小説を投稿している。2020年7月から活動を始め、Twitterのフォロワー数は10万人を超える(2022年11月現在)。140字という短い中で意外なオチを展開するスタイルが特徴。ジャンルはミステリー、怖い話、感動する話、笑える話やパロディまで多岐にわたり注目を集めている。Twitter: @HOJO_Kai 、Instagram: hojo_kai 、TikTok: @hojo_kai 、note: https://note.com/hojo_kai/ 、YouTube: 【毎日投稿140字小説】方丈 海

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