「日本のオタク文化を世界へ」BOOK☆WALKERの海外展開を聞く

電子書店の“中の人”に、この機会にアレコレ聞いてみる「教えて!電子書店の“中の人” 」。記念すべき第1回に登場して頂いたのは、総合電子書籍ストアBOOK☆WALKERの湊谷さんでした。こちらのインタビューが好評でしたので、今回はBOOK☆WALKERの“グローバルな中の人”に聞いてみよう! ということで第2弾をお届けします。

今回は、総合電子書籍ストアBOOK☆WALKERのグローバルな側面を掘り下げるため、ストア事業部で国内販売企画を担当されているイギリス出身のオマーさんと、Globalストアを担当されているドイツ出身のトーマスさんのお二人に、インタビューをさせてもらいました。

「実はリアルな本屋を目指してます!」 電子書店BOOK☆WALKERの狙い | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ)( https://wanibooks-newscrunch.com/articles/-/590 )

■日本語はオリジナルを“楽しみたかった”から

――まず最初に、日本で働こうと思ったキッカケなど教えてください。

BOOK☆WALKER オマー(以下 B☆Wオマー) 子どもの頃(3才〜)から『ポケモン』や『カードキャプターさくら』を(イギリスの)テレビで見ていたのがキッカケです。それから、もっと日本の文化を色々と知りたくて、ネットでアニメを見たり、漫画を読んだり、YouTubeでAKB48などアイドルのミュージックビデオを見たり、声優さんのラジオ番組を聞いたりして……楽しすぎてたまらなかったんです。

その素晴らしい文化の中心(特に東京)に行きたくて仕方がなくて、更なる“楽しさ”を求めて日本に行こうと決心しました。具体的には、リアルタイムでアニメを見ることや、欲しい漫画を自由に買うこと、アイドルやアニメのイベントに行くことなど、身をもって体験することが夢だったんです。やっぱりイギリスにいるとできないことが多すぎて(笑)。

▲BOOK☆WALKER オマーさん(Zoomインタビュー)

――漫画とアイドルがキッカケとなったんですね。というか、めちゃくちゃ日本語が流暢ですよね。

B☆Wオマー 最初はテレビでアニメの英語版を見てましたが、日本語でのオリジナルを楽しみたいと思って、大学の時に勉強することにしました。

――BOOK☆WALKERさんに入った理由は?

B☆Wオマー 最初は日本のデジタルマーケティング企業で3年間働いてました。正直ワクワクできなかったし労働時間も長かったので「こんなの、もうやってられない」と思って転職すると決めました(笑)。そこで、どうせ転職するなら“ヲタク”系企業が良いと決めて、たまたまBOOK☆WALKERに出会いました。仕事でも好きなものに触れたくて、やってみようかなと思いました。やっぱり人生短いし、絶対に“楽しい”方が良いと思う!

――オマーさんにとって「BOOK☆WALKER」は、好きなものの塊だったんですね。

B☆Wオマー そうですね。好きなものに関しての仕事がしたくて、何回か面接があり「BOOK☆WALKERでいろんなことをやってみたら」っていうような話をされて「いいな」と思いました。あとはIT企業で働いていた経験を活かせるってこともあるんですけど。これからはデジタルの可能性が大きいと思うので、デジタルならではのマーケティングとか、デジタルトランスフォーメーションというところで、電子漫画の可能性が非常に大きいかなと思いました。

――日本で働いていて困ったことはありましたか?

B☆Wオマー そんなにないかもしれないですね(笑)。日本に来てからは、引っ越しが1番大変だった感じですね。

――引っ越し(笑) 。日本とイギリスでの働き方の違いなどありましたでしょうか?

B☆Wオマー 難しい質問です……。会社によって違うと思います。前職では、労働時間が長くて「働けば働くほど良いし報われる」という雰囲気でしたが、BOOK☆WALKERでは、仕事が終われば別に残業しなくても良い(いかに効率よく成果を残すかが重要)という雰囲気なので。強いて言えば、日本は「稟議」など細かい所が多いですかね。イギリスに比べて会議も圧倒的に多いし長いと思う。イギリスはもっと適当(良い意味でも悪い意味でもあるが)だと思う。

最近、日本も変わってきてはいますが、海外では個人としてのパフォーマンスの方が大事ですが、日本ではグループでのパフォーマンスの方が大事、というのも違いの1つと言えるかもしれないですね。そういった意味では、BOOK☆WALKERは限られた時間で効率的に仕事をするという文化があるので、それは海外に近い方針だと思います。

――日本独特のビジネスマナーみたいなものもありますよね。

B☆Wオマー それは確かにありますが、そもそも自分はイギリスでアルバイトはしてたんですけど、フルタイムでの仕事は日本の新卒が初めてだったんです。イギリスでの経験がないので、日本の方が当たり前になってしまいました(笑)。ビジネスマナーでいうと、エレベーターの前でお辞儀をするとか、タクシーの中での座る位置とか、前職ではそういった授業がありました。

■新しい概念を創る日本人の想像力すごい!

――BOOK☆WALKERさんで働いて嬉しかったことは何でしょうか?

B☆Wオマー 好きな百合マンガに触れることができたことや、仕事で声優さんに会えたこと。あと個人的には、漫画についてもっと詳しく知りたかったので、そういう意味でも入社できて良かったなと思いました。

――イギリスには「百合」というジャンルは無かったんですか?

B☆Wオマー 百合っていう概念は日本独特なもので、アニメとかを見て知ることができました。日本のヲタク文化には、こういうことがいっぱいあって、たぶん翻訳できない言葉だと思うんです。レズビアンっていう言葉があると思うんですけど、それとはちょっと違う。百合っていうものは恋に限らず、わちゃわちゃする女の子たちとか、色々な意味を持つので、そういう新しい概念を創る日本人の想像力すごいなと思いました。夢がすごいあります。

――声優さんにも会えたんですね。

6/25は"百合の日"!〜尊い恋の予感〜( https://bookwalker.jp/select/393/ )

B☆Wオマー 入社して3日目。ある生放送のイベントで、アニメの声優さんに会えたのが、その瞬間「転職してよかったなぁ」と思いました(笑)。あとは社員にオープンなヲタクが多くてびっくりしました(良い意味で)。社内でフィギュアを置いていたりとかそんな職場です。

イギリスでは周りに漫画やアニメが好きな人も少ないし、今は変わってきてますけど、カートゥーンとかアニメが好きだと、ちょっと子どもっぽいって思われることがあると思うし、イギリスとの違いだけではなくて、前職もあんまりオープンなヲタクはいなくて、たぶん隠している人が多かったと思います。

――オマーさんの100%が出せる職場、という感じですね。

B☆Wオマー そうですね。仕事するうえで知識があると自信にもなるし、漫画が大好きなので、もっと詳しく知りたいという思いもあります。僕より詳しい人がいっぱいいるので、そういう人たちと接するのはすごい楽しいし、刺激を受けることができる職場だと思います。

――オマーさんの仕事の息抜きは何でしょうか?

B☆Wオマー 色々あるんですが、アニメを見ることや漫画を読むこと。ライブや握手会のようなイベントや生配信で好きなアイドルさんと会うことや、友達とのアニソンカラオケとかですかね。今のコロナ禍ではイベントに行けないから、zoomを使ってのイベント参加で仕事とのメリハリをつけてます。

――すごくアクティブですね(笑)。息抜きでもあり、仕事にも生かせる感じですね。これから、やってみたいことはありますでしょうか?

B☆Wオマー 新しいビジネスアイデアを考えて実現したいです。日本のヲタク文化やサブカルの可能性は無限大だと思っているので!

――これから日本で働こうと思っている方へのアドバイスなどありますでしょうか?

B☆Wオマー 自分のやりたいことを思いきり楽しんでください、っていうのがアドバイスですかね。好きなものがあって、そのあと知識とか日本の文化とか、お金もそうですし、そういうところは後でついてくると思うので、とりあえず飛び込んでやってみようという感じです。

――好きなものを突き詰める! という感じですね。最後に、オマーさんは10年後もBOOK☆WALKER(日本)で働いていると思いますか?

B☆Wオマー どうでしょうね。でも働きたいです、今の気持ちは。まだ飽きてないので、もっともっと詳しくなって、いろんな趣味で、いろんな所で、いろんな人たちと接して、もっと楽しい思いをしたいと思います。

▲オマーさんの趣味が爆発した個性あふれる企画を楽しみにしてます!

――BOOK☆WALKERのオマーさん、ありがとうございました! 引き続きグローバルストア担当のトーマスさんにインタビューします。

■アニチューバーで新規ユーザーをゲット

――続いては、2015年10月にオープンしたGlobalストアを担当されているトーマスさんに、お話しを聞かせてもらいます! まずはGlobalストアの特徴・アピールポイントをお聞かせください。

BOOK☆WALKER トーマス(以下 B☆Wトーマス) BOOK☆WALKERは、KADOKAWAの電子書籍ストアとして2010年に設立されました。国内において人気を集めているストアの1つになっています。Globalストアはその大きい背中を追いかけ、海外でも同じ存在になることを目標としています。現状「Kodansha Comics」「Yen Press」「Seven Seas Entertainment」「J-Novel Club」などの出版社から、15,000点以上の英語版ライトノベルやマンガを配信しています。

▲BOOK☆WALKER トーマスさん(Zoomインタビュー)

BOOK☆WALKER Global:BOOK☆WALKER Global Store - Digital Manga & Light Novels( https://global.bookwalker.jp/ )

?――15,000点以上! すごいですね。ちなみに「Seven Seas Entertainment」さんと言えば、弊社の『エルフさんは痩せられない。』の英語版を出版してもらっています。

B☆Wトーマス もちろん、知ってますよ! この4つの会社はGlobalストアでも大きい出版社です。主にラノベ中心の出版社かなと思います。

?――この15,000点以上の作品のなかでラノベとマンガで、どちらが多いのでしょうか?

B☆Wトーマス マンガのほうが多いです。ほとんどの出版社が、マンガの配信から始めて、2〜3年前から徐々にラノベも配信し始めました。

――他の電子書店と、ココが違うなどのポイントはありますか?

B☆Wトーマス そうですね。結論をいうと、やはり出版社とお客さんとの距離だと思います。海外の出版社はもちろん、国内の出版社とも友好な関係を築き、信頼を集めています。そのお陰で、最近「ぜひ、こんな企画をGlobalストアでやってください」という呼びかけが増えてきました。例えば、3月に実施した「I Couldn’t Go Outside, So I Just Stayed In and Read Light Novels All Day!」キャンペーンですが、J-Novel社がコロナ対策として、多くの人気作品をGlobalストアだけに期間限定で無料提供してくれました。

BOOK☆WALKER Global:I Couldn’t Go Outside, So I Just Stayed In and Read Light Novels All Day! | BOOK☆WALKER( https://global.bookwalker.jp/select/112/ )

作品別やテーマ別のキャンペーンを実施して、またその内容をSNSやメルマガ、さらにアニチューバー(日本のアニメ好きなYouTuber)を通してコミュニケーションをとることで、ユーザーとの距離が縮まったように感じられます。今年はコロナの影響で残念ながら中止になりましたが、毎年アメリカのL.A.で開催されている「Anime Expo」に出展したりと、お客さんと会える場を作り、色々なアドバイスやフィードバックをもらったりしています。

――アニチューバーさんとのコラボ、とても面白い企画ですね。

B☆Wトーマス 3年前からGlobalストアでは、アニチューバーというYouTuberを通して、キャンペーンだったり作品の紹介動画を配信して、新規ユーザーをゲットしてきました。ちょうど去年も、GeeXPlus(ギークスプラス)というBOOK☆WALKERの子会社になるYouTuber事務所を設立しました。ここに所属するYouTuberたちを通して、ユーザーと作品とのコミュニケーションをさらに広げていければと思います。

GeeXPlus|英語圏インフルエンサーによるプロモーション事業( https://www.geexplus.co.jp/ )

■憧れの坂田銀時になっている気分です(笑)

――海外向けの電子書店員として、どのようなお仕事をされていますでしょうか?

B☆Wトーマス そうですね。国内と比べるとまだまだ小さい部署なので、販売企画だけではなく、電子書籍の配信作業、新規取引先出版社や作品の獲得、Globalストア独占キャンペーンに関する業務を担当してます。憧れの坂田銀時のように万事屋(よろづや)になっている気分です(笑)。

?――『銀魂』読まれているんですね! 電子書店員として「面白さ」を感じるのは、どんな時でしょうか?

B☆Wトーマス 最近ですと、SNSの呟きで直接お客さんとコミュニケーションを取ることに面白さを感じています。電子書店にとって情報は武器ですので、できるだけユーザーに作品やキャンペーンに関して重要な情報を伝える。そして出版社やユーザーの投稿から情報を頂いたりもしています。

?――SNSでのコミュニケーションとは、具体的にどんな感じでしょうか?

B☆Wトーマス 海外の出版社ともSNSで繋がり、出版社からの情報を配信したり、ユーザーから発売日や英語版を希望する問い合わせに対応するなど、何でもありですね。

?――ユーザーからの問い合わせで、キャンペーンなどの企画が生まれたりすることも?

B☆Wトーマス ありますね。面白そうな作品を教えてもらったら、チェックして次のキャンペーンで対応する、みたいなことも。

?――なるほど、SNSでのコミュニケーションも大切なんですね。それでは次に、電子書店員としての発見や悩みなどはありましたか?

B☆Wトーマス 当たり前のことなんですが、電子書籍はデータを差し替えることができることに、最初は驚きました(笑)。ドイツ出身なんですが、ドイツはまだ電子が弱くて、だいたい紙が定番なんです。日本に来るまでは、電子と全く関わりがなかったので。紙の書籍は、間違いがあると再び印刷する必要がありますが、電子では手軽に何度もバージョンアップできますからね。

悩みは……Globalストアの拠点は日本にあるため、やはり時差というところでしょうか(笑)。取引先の多くは、アメリカやヨーロッパにありますので、常に時差を踏まえて仕事に努めなければならないです。

?――時差は確かに大変ですね。

B☆Wトーマス そうですね。例えば電話をするなら、日本時間の朝にしかできないですね。けっこう朝早く、8時とか9時に電話する感じです。あとはバカンスを大事にしている人が多いので、数週間連絡が取れないこともあったりするので、その期間も含めて企画をしないといけない(笑)。

?――グローバルっぽいです(笑)。ちなみにGlobalストアで売れているのは、どんな本でしょうか?

B☆Wトーマス 日本と同じで異世界などのジャンルは、いま非常に人気です。海外はアニメきっかけで、ほとんどのユーザーがアニメを見て、これ面白いからって検索をする傾向がありますね。あとは男性ユーザーが多いストアなので、ちょっとエッチな恋愛作品もかなり売れています。その代表作は、流石景先生の『ドメスティックな彼女』ですね。

?――異世界はジャンルは世界共通なんですね。意外と海外ではこんな本が売れています、などはありますか?

B☆Wトーマス 意外というか、日本国内ではあまりニュースにならないLGBT+作品が浮かびます。念のための説明になりますが、LGBT+は「Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender/Transsexual plus」の通称で、最近では海外の出版社が次々とLGBT+作品をライセンスし、販売していますね。

?――トーマスさんが、海外ユーザーに推したい日本の作品はありますか?

B☆Wトーマス いま1番推したい作品は、蘇募ロウ先生の『なんでここに先生が!?』と、吉岡公威先生の『てんぷる』です。ちょうど先週、Globalストアでの英語版独占配信を発表させていただきました。発売になったら、ぜひ英語でご賞味あれ!

?――急にCMっぽく(笑)。いま取り組んでいることや、これから取り組みたいことなどはありますでしょうか?

B☆Wトーマス いま取り組みたいのは、サブスクリプションサービスですね。Globalストアにはまだないのですが、海外ではマンガのサブスク系サービスが、ちょこちょこ出始めたので、ユーザーにもっと作品を読んでもらえる手段としていいと思います。

?――これからの海外電子書店について、思うところなどありますでしょうか?

B☆Wトーマス 今回のコロナ禍を経験したことで、将来的に電子書籍と電子書店の需要が更に上がると予測されます。そのため、ただ売るだけではなく、独占や先行配信、ポイント制度、サブスクリプションなどの手段で、お客さんに多くのバリューを与えることが大事です。

また「海賊版」という問題も大きくあり、正規に翻訳されている作品も限られています。今後はクラウドファンディングなどで、ユーザーと力を合わせて日本のコンテンツをもっと多く、早く提供することも非常に大事だと思います。将来的に日本の配信と同じくらいで、最新話の翻訳版も読める作品が増えたらいいなぁと思っています。

▲日本のマンガがさらに世界に! Globalストアの今後が楽しみです

――BOOK☆WALKER Globalストアのトーマスさん、ありがとうございました!

グローバルに注目した第2弾インタビューはいかがでしたでしょうか? 日本国内のみならず、海外展開にも力をいれているBOOK☆WALKERさん。次にどんな面白い企画が生み出されるのか、目が離せないですね。

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