開発者が語る。国民的ロングセラーアイス『ガリガリ君』誕生秘話

『ガリガリ君』はこうして大ロングセラー商品になった! 愛される商品になるためには欠かせないネーミング。国民的ロングセラーアイス『ガリガリ君』の開発者であり、育ての親でもある鈴木政次氏がネーミングの大切さを語ります。商品開発の担当者や、モノ作りを目指す若い人のヒントにしてほしい究極の仕事術。

※本記事は、鈴木政次:著『スーさんの「ガリガリ君」ヒット術』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

■ネーミングは7文字以内がベスト

ヒット商品の鍵を握るのはネーミングです。ポイントは「なるべく短く作ること」と「形容詞や一般名詞を使わないこと」です。

短く作ったほうがいいのは、口コミがしやすいからです。長いと、覚えられませんし、覚えられなければ、口コミで人に伝わっていきません。

▲ネーミングは7文字以内がベスト イメージ:PIXTA

2016年当時、赤城乳業で柱となっているのは次の5つの商品群でした。

『ガリガリ君』 『ガツン、とみかん』 『旨ミルク』 『ドルチェ Time』 他社とのコラボ商品

5番目は別として、どれも商品名が短い。『ガリガリ君』は5文字(6音)、『ガツン、とみかん』は「、」を除けば7文字です。私が初期に開発した『BLACK』で5文字でした。

商品のネーミングは経験上、7文字以内がベストだと思っています。

「形容詞や一般名詞を使わない」ほうがいい理由は、まねをされないためです。商標登録が基本的にできません。

私が入社当時に開発した『BLACK』というアイスも形容詞でした。『スーパーソフト』は、なおさらです。『BLACK』を出してすぐに、他社から似た名前の商品が販売された苦い経験があります。

■かき氷から商品開発が始まった『ガリガリ君』

とは言っても、かなり適当に名前を付けることもあります。何を隠そう『ガリガリ君』のネーミングを考えた時もそうでした。

当時の井上秀樹専務からは「ネーミングは斬新に」というオーダーが来ていました。『ガリガリ君』の場合、かき氷から商品開発が始まっています。カップからスプーンで削る時「ガリガリ」という音がしました。だから、みんなで考えて『ガリガリ』という商品名にしよう、とほぼ決まりかけていました。

ところが、発売直前になり「あれ、何かおかしくない? いいんだけど、ちょっと変じゃない?」という声が出て、井上専務のところに相談に行きました。すると「“君”をつければ、楽しくなるんじゃないか」と案が出され『ガリガリ君』になりました。

「ガリガリ」では、単なる修飾語で、なんだかよくわかりません。ですが、人の名前のように固有名詞にした瞬間から個性が生まれ、愛着も湧きやすくなり、覚えてもらえるようになったのだと思います。

▲かき氷から商品開発が始まった『ガリガリ君』 イメージ:PIXTA

「あの『ガリガリ』、おいしかったね」よりも「あの『ガリガリ君』、おいしかったね」と言ったほうが、断然クチコミに乗りやすいのです。

もし「ガリガリ」という修飾語のままでしたら、ここまでヒットはしなかったでしょう。

商品開発部で決めたネーミングでも「なんか、変」「なんか、違和感がある」「でも、どうすればいいかわからない」と感じた時には、いくら時間がなくても「まっ、いいか」とそのままにしないことです。納得いくまで話し合ったり、ほかの部署の人に相談したり、意見を聞いたりしたほうが、結局はうまくいきます。

■ネーミングは妥協せずに考える

食べ物やモノに人の名前を付けると、たちまち命を持つのをよく感じます。

2010年、本庄早稲田(ほんじょうわせだ)駅から車で15分ほどのところに、赤城乳業の「本庄千本さくら『5S』工場」という、新工場を作りました。一般の方々が見学もできるようになっています。この工場では、アイスを作る機械に「あいちゃん」「スザンヌ」「イチロー」「りょうくん」などの名前を付けています。

これも、赤城乳業流の“遊び心”ですが、名前を付けたことで、機械に愛着が湧きます。
「1号機の動きが悪い」というよりも「あいちゃんが、今日はご機嫌ななめだ」と言ったほうが、工場の中の雰囲気がソフトになります。

機械の名前は、みんなが聞きなれていて、呼びやすいものにしています。「どこかで聞いたことがある」「名前を聞くだけで、なんとなく、イメージが湧きやすい」ほうが、愛着も湧きやすいからです。

ネーミングは、商品に魂を吹き込むのと同じです。どんなにいい商品であっても、名前次第でヒットしない場合もありますので、妥協せずに考えたいものです。

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