「日間賀島」名古屋から“半日で帰って来られる”おすすめスポット

本来は行楽の秋ですが今年はコロナ禍。どこかへ行きたいけれど、泊まりがけで出かけるのはちょっと……。かといって、家でマッタリするのもなんだかもったいない。そんなとき、名古屋から半日で行って帰ってこられる、近場でおもしろそうなスポットをご紹介します。

※本記事は、吉田友和:?著『名古屋発 半日旅』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■通称「タコの島」で汐風サイクリング

「ひまがじま」と打ったら変換できなくて「ひまかじま」と読むのだと知った。無知をさらけ出すようで恥ずかしいが、離島にはしばしば難読な地名が登場する。

実は地図で見て気になっていた。クワガタの角のような形をした愛知県の二つの半島のうち、知多半島側の先っぽ、三河湾の沖合いに位置する。

行き方は主に二通りあって、師崎(もろざき)港および河和(こうわ)港から高速船が出ている。近いのは師崎港で、片道約十分。ただし港までの移動がクルマ前提となるため、電車で行くなら河和港の方が便利だろう。こちらは片道約二十分。今回は師崎港から船に乗った。

▲師崎港から高速船で島へ、船に乗る瞬間はワクワクする

船で島旅というと大げさな感じもするが、実際には拍子抜けするほど近い。なにせ、海の向こう側に島が望めるほどで、まるで渡し船のような感覚である。?

▲わずか10分足らずで島に到着

日間賀島には港が二箇所あって、船は東港、西港に接岸していく。栄えているのは西港の方なので、観光客としては基本的には西港で降りることになる。

西港には、平屋の小綺麗な建物が立っており「ひまポ」という看板が出ていた。ひまポって何だろうか……と疑問に思ったが、なんてことはない。どうやら、英語訳の「HIMAKAJIMA PORT」を略す形で名付けた模様。

建物の中には切符売場があって、乗船客の待合室のようになっていた。観光用のチラシなども置かれていたので一通り物色し、とくに目を引かれたのが「きてみて! 日間賀島!!」と題した島内地図だった。

地図といっても、手書きの内容をコピーしたものである。ものすごくザックリした地図で、これだけだと場所を特定するのは不可能なレベルだが、各名所の説明書きと共にちょっとしたイラストが添えられていたりして、なかなか味があっていい。どうやらこれは島の中学生が作ったものなのだという。

この地図によると、日間賀島の面積は約770平方メートル、人口は1872人(2018年時点)とのこと。大きさの割には人が多いなあと感じたが、調べてみると、離島としては日本一の人口密度を誇ると分かり腑に落ちた。

さっそく島内を散策する。西港に近い「いこい」という店で、自転車が借りられるというので行ってみることにした。もちろん、これもその中学生の地図から得た情報である。旅行のときはなるべく予習をしない主義で、着いてからこういうローカルな情報ツールを活用するのが我が旅のセオリーなのだ。

レンタサイクルは1時間で550円だと言う。観光地で自転車を借りるのに1時間単位というのは珍しい。さらには、1時間の料金にしてはやや高い印象も受けたが「20分もあれば一周できますよ」と言われて納得した。

つまり、自転車で島を巡るなら、1時間もあれば十分ということだ。ちなみに歩いたとしても、一周するのに1時間ぐらいだという。やはり、それほど大きな島ではないらしい。

とくに理由はないが、なんとなく時計の反対回りで出発する。潮風を浴びながら、ペダルをきこきこ漕ぐのは心地いい。普段は保育園の送迎に子どもが乗せられる大きな電動自転車に乗っているので、非電動タイプのママチャリでゆるゆる走るのが新鮮だ。

▲のんびり自転車で巡りつつ、素敵な風景を見つけたら停まって写真を撮る。マイペースな島旅が心地いい

■食、建物、モニュメント…島中タコだらけ!

5分も走ると、この島の名物が何であるかが理解できた。それをモチーフとしたあれこれが、あちこちに登場するからだ。

何かというと――タコである。日間賀島はタコの島として有名なのだ。

▲タコ好きにはたまらない? 写真映えしそうな被写体が島のあちこちに

たとえば、港の外れに立つ駐在所がタコの形をしていた。ユニークな見た目はつい写真に撮りたくなるほどで、同じ船に乗ってきた観光客は、みなここでカメラやスマホを向けていた。ほかにもタコの絵や、モニュメントなど島じゅうタコだらけだ。

▲タコのような外観をした可愛らしい建物はなんと駐在所。これは日本一ヘンテコな駐在所かもしれない。

日間賀島の秋の風物詩といえるのが軒先で風に揺られる干だこ。「引っぱりだこ」という言葉があるが、その語源になったともいわれている。実は密かにこの風景が見たかったのだが、訪れた11月初旬の時点ではすでに終わった後のようで、探し回ったがひとつも見られなかった。

タコのほかにもフグも名産のひとつ。タコとフグにかけて「多幸の島」「福の島」などと呼んだりもするそうで、なるほど上手いこと考えたものだと感心させられる。

ともあれ、ぐるりと島を巡ってみると、漁業が盛んな島であることが改めてわかる。島の北側は漁港になっているのだが、おびただしい数の漁船が停泊していた。その数なんと450隻にも及ぶと聞いて驚いた。約2千人という島の人口と比べると、いかに漁船が多いかが分かるはずだ。

▲西港周辺の食堂でランチタイム。日間賀島まで来たのなら、やはり本場のタコを味わいたいところだ

とはいえまあ、漁業中心なのは離島ならばそう珍しいことでもない。もうひとつ日間賀島が注目されている理由がある。

「インスタ映えするスポットもたくさん!」

これは例の中学生が作った地図に書かれていた文言だ。そう、近年流行りの「映え」でも売り出し中の島なのである。

一番の見どころとされるのが「恋人ブランコ」だ。場所は島の東側、海を見渡せる高台の上。大きな木の枝にロープを結び、ブランコを設けている。

せっかくなのでついでに一目見ようと立ち寄ったら、見事に若い女性二人組の先客がいたので、いい歳したおじさんとしては邪魔者になりそうなので素早く退散した。海抜けの絶景を前にしてブランコを漕ぐのは気持ちよさそうだが、ブランコがあるスペースはそれほど広くないため、順番待ちするのもなんだか感じが悪い。

というより、そもそも場違いな雰囲気だ。乗りながら好きな人の名前を叫ぶと恋人になれるのだとか。もちろん年齢制限などはないが、ここは自粛するのが賢明だろう。

別に水を差すつもりはないが、近頃日本全国で同じようなブランコが大増殖中である。それゆえ「ああ、またブランコか……」という感想を持ったのも正直なところなのだが、それが人が集まるきっかけになるのなら意義はあるのだろう。

ほかに気になったスポットとしては「タイルロード」と名付けられた道。海沿いの岩壁に、大きなタイル絵が何枚も並んでいる。それらは島の小学生による卒業制作で、作られた年度が記載されているので、見比べるのもなかなか楽しい。

▲島にはビーチもあって南国気分に浸れる。夏には多くの人々で賑わうという。ブランコも浜辺の近くだ

いわゆる観光名所ではないものの、こういう島のローカルな部分に触れられるスポットというのは、個人的にとても心に刺さるものがある。

もし自分がこの島に生まれていたとしたら、一体どんな人生を歩んだのだろうか――ついそんなことを想像してしまうのは歳のせいだろうか。

中学生が作った地図に導かれ、小学生が描いた絵に心を揺さぶられる島旅となった。そういえば、高校はあるのだろうかと疑問が生じたが、日間賀島には高校は存在せず、中学を卒業したあとは船で本土の高校へ通学するのだという。

実は検索したら、そんな高校生活を綴った作文がヒットしたのだ。これがまた想像をかき立てる内容で、読んでいるうちに感情移入してしまった。悪天候で船が欠航したら大変だろうなあ、部活とかどうするんだろう……などなど、とりとめのない思考が頭をよぎる。

沖縄などは、こういう本土に比較的近くて、それなりに人が住んでいる島ならば橋をかけて繋げたりする。仮に日間賀島が知多半島と陸続きになったとしたら、きっと生活が一変するのだろうなあ。無責任な観光客としては、そんな風に好き勝手に想像をめぐらせるひとときにもまた旅の醍醐味を感じるのだった。

▲あいにく写真が撮れなかったので、貼られていたポスターを。海へ向かって漕ぐのは気持ち良さそうだ

<日間賀島>
住所:愛知県知多郡南知多町
アクセス:名鉄河和駅から徒歩7分(河和港乗船センター)→河和港から名鉄観光船(高速船)で20分
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間などの情報が変更されている場合がございます。お出かけの際は、出発前にお調べください。
日間賀島観光ナビ: https://www.himaka.net/

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