新常識!? 犬に散歩は必要ない「良かれと思って…」がストレスに

■散歩が大好きな大ちゃんと大嫌いなモコちゃん

こんにちは。獣医師の北澤功です。皆さん、犬は必ず散歩させなければいけない、と思い込んでいませんか? 今回は「犬の散歩は、必ずしも必要ではない」理由をお話ししようと思います。まずは、私の実体験から――。

ある日のこと。診療を終えて帰宅途中、近所に住む大泉さんが僕の前をゆっくりと杖をつきながら歩いていました。

その横には、ゴールデンレトリバーの“大ちゃん”が口に散歩バッグをくわえ、大泉さんのスピードに合わせて歩いています。リードはついていますが、緩んでいて機能していません(笑)。

僕が後ろから声をかけると「お、先生」と言いながら、立ち止まって振り向いた大泉さん。僕たちが話をしている間、大ちゃんは大泉さんの横に座り会話を聞いていました。大ちゃんは大泉さんとのお散歩が大好き。とても微笑ましい風景です。

▲散歩は飼い主と犬との共同作業です イメージ:PIXTA

大泉さんと大ちゃんと別れ、しばらく歩いていると、今度は山田さんが歩いてきます。すぐ近くにはチワワの“モコちゃん”の姿も。先ほどの大ちゃんのお散歩とはうってかわって、モコちゃんはリードで山田さんに引っ張られて、ずるずると引きずられながら散歩していました。

山田さんは歩かせようと、モコちゃんは動くまいと、お互いに頑張っています。僕が近づくと、モコちゃんは「ウー」とうなりました。病院では僕を見ると喜んで尻尾フリフリなのに。

山田さんは、さっとモコちゃんを抱き上げました。すると今度は、僕に向かって尻尾を振りだしました。「先生、この子いつもこうなのよ」と山田さんは話し始めました。

「家では、とてもフレンドリーなのに、外を歩かせようとすると全く動かなくて……。人に会うと唸るし……。他のワンちゃんのことは、もっと嫌いみたいで、向こうから来ようものなら、腰を低くしてとにかく逃げようとするの。散歩の時は動かそうと引っ張るか、逃げようとするのを抑えるかのどっちかで、常にリードは引っ張られっぱなし」とのこと。なかなか大変な散歩風景です。

▲散歩を嫌がるワンちゃんもいます イメージ:PIXTA

■なぜ犬は散歩が好きなのか?

そもそも、どうして犬は散歩が好きなのでしょうか?

犬の祖先は、リーダーを筆頭に獲物を求め群れで行動していました。そして現代を生きる犬にとって、散歩はリーダーと一緒に獲物を探す行動にあたるわけです。大好きな飼い主の横を、飼い主の歩幅に合わせ命令を待ちながら一緒に歩く……それが楽しいのです。

自由に歩かせないなんて、可哀想だと言う方がいますが、飼い主を引っ張りながら歩くのは、犬がリーダーとなり引き連れていることになります。どちらがリーダーになるかは、飼い主次第というわけです。

そもそも、犬にとって散歩はなぜ必要なのでしょうか?

一日中、家の中にいては運動不足になってしまうのは事実です。性格にもよりますが、基本的にはいろいろな人に会ったり、他の犬と遊ぶなど外の刺激が大好き。散歩は犬にとってストレス発散になるのです。

一方で、散歩が嫌いな犬はどうすればいいのでしょうか? 外に出ると楽しいことがあるように工夫してみるのもいいですね。

怖がるところを通らないようにして、ちょっとでも怖がったら抱っこをして安心させてあげる。 苦手な犬が来たら、抱きあげておやつをあたえ興味をそらす。 散歩の途中で、とっておきのおやつをあげる。

などの対処法があります。

▲散歩途中に怖がったりしたら、抱っこしてあげましょう イメージ:PIXTA

話を戻しましょう。先ほどのモコちゃんですが、年齢は10歳。山田さんは「犬は散歩させなくてはいけない」「散歩をしないと犬は病気になってしまう」と考え、10年間毎日欠かさず散歩していました。

そこには山田さんとモコちゃんの戦いがありました。山田さんにとって、散歩はつらい時間でした。そしてモコちゃんにとっても、散歩は恐怖の時間でした。お互いにつらく恐怖の時間を、10年間も過ごしていたことになります。

家ではとてもいい子なのです。元気に走り回り、とても健康です。先ほども言いましたが、散歩の大きな目的はストレス発散です。散歩による外の刺激がストレスになるようなら、散歩はやめましょう。家で飼い主との関係ができていて、室内で十分な運動ができていれば、モコちゃんのような散歩嫌いな小型犬は、無理して外に連れ出さなくてもよいのです。

▲大切なのは、犬が楽しく元気に暮らすことです イメージ:PIXTA

自分の犬の性格を、よく見て判断してください。必ず散歩しなくてはいけない、ということはありません。ただし、散歩が大好きな犬やボーダーコリ―のように運動が大好きな犬は、散歩させる必要があります。

そんな話を伝えると、山田さんは散歩を止めました。散歩に費やしていた時間を、家の庭で一緒に遊ぶ時間にしました。山田さんもモコちゃんも、毎日がとても楽しくなったそうです。

いかがでしたでしょうか。犬を飼われている方は、いま一度その性格について考えてみてください。

一点、ご注意を。今まで散歩が大好きだったのに、急に行くのが嫌なそぶりを見せた時は、身体がだるい、足が痛いなど病気の可能性があります。そのような症状が見えたら、すぐに病院に行ってください。お近くの動物病院でもいいですし、僕もいつでもお待ちしています。

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