仕事は「もっと楽したい!」の欲望がカイゼンに繋がる

決められた仕事をしているだけでつまらない。30代以上になって中堅社員になったり、役職がつけば、ルーティンワークから離れて「クリエイティブ」になり、大きな企画や仕事をすることが求められるようになりますが、若手時代は頼まれ仕事ばかりで、特にそう感じている人も多いでしょう。Perfume・きゃりーぱみゅぱみゅ・三戸なつめ等、数々の有名アーティストのクリエイティブに関わった音楽プロデューサーが、現代のビジネスマンにとって必須の能力である「クリエイティブ」の育て方を教えます。

※本記事は、中脇雅裕:著『あなたの仕事はなぜつまらないのか』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■感情にタグ付けしてみよう

例えば作曲家が「悲しい曲を作って欲しい」という依頼を受けたとします。

しかし、一口に「悲しい曲」といっても“悲しい”にはさまざまな悲しさがあります。それは例えば失恋の悲しさなのか、だとしたら、どんな人生を送った人が、どんな恋愛の結果別れた失恋なのか……そのパターンは無限にあるでしょう。

優れたクリエイターは、この「さまざまなタイプの悲しさ」を、たくさん引き出しに持っていることで、それらの中から選び、依頼された内容にあった感情の表現をすることができます。

よく、人生経験の豊富さが肥やしになる、というようなことを言いますが、これはこうした「さまざまな感情の引き出し」を持つ、という意味です。

ところが、どれだけのことを経験したり、見聞きしても、そのことを引き出しにしまっておけない人もたくさんいます。

この違いは一体どこから来るのでしょうか?

優れたクリエイターが、どのようにして、そうした「引き出し」を持っているか。それが、経験や見聞きしたことに、感情をタグ付けして保管している、ということになります。

■たくさん感動する人は「欲望」が強い

例えば、自分の好きな食べ物には“好き”という感情が紐づいています。好きではない食べ物でも、大好きな恋人と一緒に食べたものなら「楽しかった」「素敵な時間だった」という、好ましい感情が紐づいているかもしれません。

しかし、ただ何気なく日々の生活を過ごしていると、なにも感情が紐づかないまま、経験だけが通り過ぎていくことになります。よく言うことではありますが、たくさん感動している人ほど、感動を生み出すことができます。それは、こうした「感情がタグ付けされた記憶」がたくさんあるからこそです。

では「たくさん感動する人」と、そうでない人の違いはなんでしょうか? その答えは“欲望”を持っているかどうか。

潜在意識からワクワクするような欲望を持つことで、それを達成するために脳が情報を探すようになります。

▲経験を積むことで想像力も広がる イメージ:PIXTA

■経験を積むことで想像力も広がる

そもそも人間が感動するには、情報が必要です。例えば『失楽園』のような大人向け恋愛ドラマを、子どもが見ても全く面白くないでしょう。

しかし、ある程度経験を積んだ大人が見れば、そこで描かれた感情に共感し、感動することができるようになります。

例えば、同じ悲しい曲を聴いても、なにも欲望を持っていない人なら「なんか悲しい感じの曲調だね」と思うだけかもしれませんが「作曲家として成功する」という欲望を持った人が聴けば、メロディやアレンジに込められた、より深く細かい感情に気がつくことができるかもしれません。

好きなことにワクワクしながら、脳をフル回転させて情報を探しながら生活していると、普段は見過ごすようなちょっとした感動でも、そこに“感情”がタグ付けされ、引き出しにしまわれていきます。

そうして得た情報や感動の引き出しが、また新たなことへの感動を見出だす道筋となっていく。

そして「感情の紐づいた情報」の引き出しが多くなれば、本を読んだり映像を見たりという疑似的な体験からも、感動と感情の紐づいた情報を引き出すことができるようになり、リアリティーを感じることができます。

このようにして養われる「想像力」は、あらゆる場面で「クリエイティブ」となって発揮されていくようになるでしょう。

■頼まれ仕事の「資料作り」もスタンス次第

ミュージシャンを例に出しましたが、クリエイティブであるというのはなにも、いわゆる「クリエイター」と呼ばれる仕事に限った話ではありません。

“感動”の種類をたくさん持ち「感情のタグ付けがされた情報」をたくさん持っている人は、それを人に与えることで、人を感動させる手段を持つことになります。

例えば、資料作りひとつをとっても、ただ事務的に情報を書き連ねるのでなく、ストックされている「感情がタグ付けされた情報」を引っ張り出して、見た人をワクワクさせるような構成やレイアウトで資料を作る、などというスタンスは、とてもクリエイティブな仕事の仕方ではないでしょうか。

頼まれ仕事の「資料作り」もスタンス次第 イメージ:PIXTA

また「楽ならそれに越したことはない」という考え方、これも実は、非常にクリエイティブな考え方です。

決められたやり方に沿って仕事をしているだけでは、やはりつまらないし「仕事のための仕事」みたいなことばかりが増えて効率が悪くなっていく。

これに対して「もっと楽にやりたい」という“欲”を持つことは、すなわち業務改善やイノベーションへと繋がっていくことです。

楽したら売り上げが減るのではないか、という恐怖心を持つ経営者は少なくありません。であれば、楽もして売り上げも上がり、しかも皆が楽しい、そういう「全方位が満たされる欲望」を持ち、それを実現していけばいいのです。優れたイノベーションというのはそういうところから生まれていきます。

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