(笑)が昭和の国会議事録で使われていた!? かっこ文字の意外な歴史

SNSやチャットアプリで、気持ちや感情、ちょっとした付加的情報を文末に添えたいときは、絵文字を使うことが多いですよね。そして実は絵文字に限らず、句読点・文字・数字を使っても感情を込めることができます。その具体例を見ていきましょう。

■はてなマークとビックリマークを合体させるとどうなる?

SNSやチャットアプリで句点の使用が減っている、というテーマを取り上げたことがありました。その代わり、文末に感動・疑問を表す「?」や「!」を使うケースが増えているのではないでしょうか。そして、この二つを合体させた、ちょっと変わった句読点の存在を知っていましたか?

▲1962年に考案されたインテロバング

インテロバング(interrobang)と呼ばれますが「?」と書かれ、驚きと疑問を同時に表す記号です。文末に「!?」と複数の句読点が並ぶのは不格好ということで、1962年に広告代理店社長のマーティン・スペクターが考案して、一時期アメリカで流行っていました。[参考:“Shady characters”, pp. 25-26、The Economist, London, 2014/10/1]

めったにみかけないインテロバングですが、今でもマイクロソフトオフィスのデフォルトフォントに入っているそうです。実際にワードの「記号と特殊文字」を開いてみたら「一般句読点」のカテゴリーに載っていました。

▲「記号と特殊文字」から選択可能

もう一つ、ハートビックリマーク「?」というものを紹介しましょう。

1993年にUnicodeに収録され、2015年にEmoji 1.0バージョンに入りました。ちょっとしたアレンジでだいぶイメージが変わりますね。ただ、ハートビックリマーク?の解釈は人によって変わるようです。ハートを強調した使い方と、単にビックリマークを装飾的にアレンジしたものとに意見が分かれていて、こんなヤキモキした悩みも発見しました。

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?? (ハートのビックリマーク)の絵文字はハートとビックリマークどちらの…

[出典: https://qa.mamari.jp/question/1584210 ]

ビックリマークつながりで、英語には(!)のように、ビックリマークを丸括弧で囲んだ使い方もあります。みなさんは見かけたことがありますか? 実は書き言葉で皮肉を示したいときに使うのです。イギリスの公共放送BBCのHPの説明を引用しましょう。

If you want to be sarcastic in writing (for example in an email), try putting an exclamation mark in brackets after your sarcastic comment, like this:

So then we visited an enormous steam train museum and you can just imagine what fun that was(!)

日本語訳:メールなどで皮肉を表したいときは、皮肉を込めたフレーズの後に次の例のように (!) を入れてみるのがよい。 「それで、巨大な蒸気機関車博物館に行ったけど、どれほど楽しかったか想像できるだろう(!)」(※本当は全く楽しくなかったというニュアンスが込められている)

[出典: https://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/radio/specials/1210_how_to_converse/page13.shtml ]

■調べてわかった(かっこ)文字の意外に長い歴史

括弧を使った表現といえば、日本にも(笑)(汗)(爆)(泣)などがありますね。かっこ文字とも呼ばれますが、(笑)は笑える文章の後に、(汗)は焦っている時に、(爆)は「爆笑」の略として、(泣)は自分で泣きたくなるような文章の後につけて使います。(笑)(汗)(爆)(泣)は定番ですが、(怒)(嘘)(眠)(照)などのアレンジもSNSを中心に見かけます。

かっこ文字は、いつ頃から使われはじめたのでしょうか? もともとは雑誌の対談記事でした。現場の雰囲気が読者に伝わるように、文末に(笑)をつけて、そこで笑い声が起こったことを示すために使われていました。国会会議録にも「拍手」「笑聲」という記述があります。例えば、昭和2年3月25日付の国会会議録には(拍手起る)、昭和20年6月8日付の国会会議録には(拍手)を見つけました。そして、昭和2年11月28日付の国会会議録に(笑聲)という記述を発見。

▲「国務大臣の演説に対する三田村君の質疑」昭和2年11月28日 出典:国会会議録

現場の臨場感を伝えるために使われ始めたかっこ文字。転じて、書き手の気持ちを示すのに使われるようになりました。

絵文字が流行りだしてから、かっこ文字はツイッターで「化石」と呼ばれることもあるくらい、ちょっと古っぽく感じられるようになりましたが、(笑)は相変わらず健在ですね。笑と、かっこなしで使われたり、ローマ字表記のwaraiから頭文字をとった「w」もよく見かけます。英語圏のlol(laugh out loud)と似たような使い方ですね。

wwwwwが続くと草にみえることから「草」「草が生える」なんていう言い方も広まりました。

形からすれば「草」より「w」の方が笑っているように見えるなど、もともと同じ意味なのに、それぞれの表記のイメージが微妙に違うと感じる人もいます。

一応、私は「草」より「www」の方が好き、っていう画像も作ったんだけど……。
私は「www」の方が笑って見えるけど、最近のイメージでは「草」の方が好きなのかな?
スマホなら「草」は出しやすいのかもね。 pic.twitter.com/Ga69b1Tnf1

? 夏川 ひかり (@natukawahikari) June 6, 2019

■「8」を連続させると日本では拍手、中国ではバイバイ

現代のインターネット文化では、アラビア数字も文末表現として活用されています。

例えば、ニコニコ動画では、先ほどの「wwwww 」や数字の連続「888888888」 もよく流れますが、この「888」の意味はわかりますか? そうなんです「パチパチパチ」という拍手音を指しています。

こうしたアラビア数字を使った当て字は、インターネットのあちこちで見かけます。が、国によって全然意味が変わる場合があるので注意が必要です。

例えば、先ほどの「8」は日本では拍手音を表しますが、中国では「88」=「バイバイ」を意味します。

タイでは、笑いを表すのに「5」という数字がよく使われています。5は「ハー」のように発音されるので「555」は「ハハハ」という笑い声を表しています。5555555や555+などと書かれると、笑いの勢いが増していることが感じ取れますね。ところが、同じ「555」は、中国では「泣く」という反対の意味で使われています。(「???」という泣き声と発音が同じため)

ちなみに、日本で数字の当て字文化は歴史が意外に深く、万葉集にまでさかのぼります。

例えば、この歌が有名ですが、何か所も数字を当てていますね。?

言云者(ことにいへば)

三々みみ二に田た八や酢す四し 小すくな九く毛も 心中こころのうち二に 我念羽奈わがおもはな九二くに(巻十一・二五八一)

口で言えば 無造作に聞こえるのですが 一方ならず 心の中では 私は思っているのです

その他に、戯書と呼ばれますが「十六」と書いて「獅子(しし)」と読ませる例や「八十一」と書いて「クク」と読ませる例など、九九を活かしたことば遊びも多く見られます。

情(こころ)八十一[グク](巻四・七八九)
心が晴れないで

二八十一[ニクク]あらなくに(巻一一・二五四二)
憎くないのに

[出典: https://japanknowledge.com/articles/asobi/14.html ]

もっと身近な例に「よろしく」を「4649」とする、ポケベル時代に流行っていた独特な当て数字があります。携帯電話の普及以前で、ポケベルでは数字しか送れなかったため、数字の語呂合わせでメッセージのやり取りをする、という使い方が広まっていました。

ちなみに「4649」は「四六四九」の形で、江戸時代にすでに使われていました。 滝沢馬琴によって当て字にされ、4x6+4x9=60、なんと「60回もよろしく」という意味まで込められていたとされています。[笹原宏之『当て字・当て読み辞典』三省堂/2010年]

私が知っていたのは「4649」ぐらいですが、あらためて調べてみると、他にもさまざまな組み合わせがあってビックリしました。みなさんは読めますか?

0840(おはよう) 0906(遅れる) 3476(さよなら) 724106(何してる) 3614(さむいよ) 4510(しごと) 999(サンキュー)

なかなか難解ですね。これを見ると最初のwwwwや888888がシンプルに見えてきます(笑)。

〈シャルコ・アンナ〉

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