飲食業界サバイバル戦線に異変! 話題の「ゴーストレストラン」とは?

■生き残りをかけて戦う中小飲食店

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、飲食店は営業スタイルの変化をかつてないスピード感で迫られています。大きな変化の一つに、ウーバーイーツによるデリバリーサービスの導入があるのではないでしょうか。

飲食店側は大まかに言うと、以下のような流れを経て、登録作業を進めます。

ウーバーイーツに加入申請をして、専用のタブレットを受け取る 店紹介のアピールコメントや、商品画像、価格の設定、商品代金の振込先銀行口座の登録などを行う テイクアウト用の容器を準備する

というような段取りです。配達用のスタッフを募集したり、チラシを作ってデリバリー開始を周知することを考えたら、ウーバーイーツの導入は圧倒的にお手軽。

しかし、誰もがスマホを使って注文するアプリだからこそ生まれる新たな苦労もあります。今回はそんなお話しをしたいと思います。

私がその苦労に気がついたのは、配達員となってから半年ぐらいたった頃のことでした。ピコンと配達依頼を受け、新橋に向かう私。仮にこの店を「焼き鳥一筋 陽ちゃん新橋店」としましょう。

店の注意書きの部分を見てみると「お店の正式な名前は『居酒屋陽ちゃん』です」と一言添えてあるのでした。普段は焼き鳥がメインの居酒屋なのでしょうね、焼き鳥丼の香ばしい匂いがおいしそうでした。

そしてその数日後、今度は「本場博多の味 もつ鍋陽ちゃん新橋店」からの受け取り依頼が入ります。商品を受け取るため指示された場所に行ってみると、例の「居酒屋陽ちゃん」だったのです。

さらに別の日には「お魚ランチ 陽ちゃん弁当新橋店」に取りに行くと、またまた受け取り先は「居酒屋陽ちゃん」でした……。

なぜ料理ごとに店の名前を変えるのか? 実はここに、中小の飲食店の企業努力があるのです。 

▲本場の味をデリバリー? イメージ:PIXTA

よくよく考えてみたら、ウーバーイーツで食べたい料理を探しているときに「居酒屋陽ちゃん」と書かれていても、私だったらまず間違いなくスルーします。居酒屋のランチは安いから食べるのであって、デリバリーするほどのものではありません。店側もそれがよくわかっているから、売りにしているメニューを店の名前に出すことで、注目を集めようとしたり「本場」といった言葉を使って付加価値をつけようとしているのです。

さすがに3回も同じ居酒屋から注文を受けた私は、そう推測するに至り、居酒屋陽ちゃんの店主にそれとなく聞いたところ「その通り」とのことでした。

実際の店舗の場合は、入り口に「もつ鍋やってます」と張り紙を出したり、焼き鳥の文字が入った赤ちょうちんを出したり、お昼には店の前にお弁当を並べるだけでいいのに、ウーバーイーツを始めるとなると、いろいろ苦労があるようです。

■ひとつのキッチンで数店舗分のメニューを作成

▲雑居ビルに「レストラン」が… イメージ:PIXTA

このように、1つの店がいくつもの名義で出店することは、お店側にとっての「ウーバーイーツあるある」だそうですが、その究極の形が“ゴーストレストラン”と呼ばれるお店です。

ゴーストレストランといって、なにも幽霊やおばけが出る店ではありません。ウーバーイーツや出前館といったアプリに、多彩な店舗を出店するデリバリー専門の業者を指します。

宅配に特化しているため、受け取り場所に行っても客席はありません。ひとつのキッチンで複数の店の料理を作っています。

「本場アメリカ直輸入 低脂肪赤身肉ステーキ店」「大分中津仕込みの秘伝のタレに一晩漬け込み からあげの匠」「国産ポークの旨味があふれるジューシーとんかつ」といったインパクトのあるメニューの注文を初めて受け、指示された場所に行ったところ、看板も出していなかったのには驚きました。ドアに各デリバリーアプリのステッカーが貼ってあるだけなので、まったく気づけなかったのです。

▲ひとつのキッチンでさまざまな店の料理を調理  イメージ:PIXTA

このようなゴーストレストランは、私がよく配達しているエリアには7〜8店ほどあり、なかには雑居ビルの3階にある一室に厨房を作って営業している、というところもあります。

アプリ上に表示される店名やメニューが派手なことや、牛肉の店・豚肉の店・鶏肉の店の看板を同時に掲げることから、ゴーストレストランの存在を知った当初は悪いイメージを抱いていました。

ですが、よくよく考えてみると、私の本業であるライターの仕事も「記事のタイトル」によって、同じ内容でも反響が大きく変動。キャッチーなタイトルがつけられたかどうかで閲覧数が明らかに変わります。

ゴーストレストランも、見てもらわないことには商売にならないので「専門店」などという、明らかなウソの表記がなければ問題ないのかなと思いました。また、飲食スペースがない分、内装などの費用が抑えられ、維持費も少なくて済みます。その節約できた分で食材のグレードを上げることもできる、というメリットもあります。

新型コロナで、飲食店は突然の営業時間短縮を要請される時代。テイクアウト専門ならその影響を受けることがないですから、今後はゴーストレストランのようなスタイルのお店がどんどん増えていくかもしれませんね。

〈Uber Eats配達員W〉

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