ひみつ道具「自動万能工事マシン」を使ったような家が現実に建てられていた

アニメ『ドラえもん』が始まった当初は、四次元ポケットから出るひみつ道具はすべてSF世界のものでした。しかしそれから40年が経ち、ひみつ道具のいくつかは実用化されています。しかも、ただ実現されているだけでなく、使い方次第で無限の可能性を秘めているのです。テックビジネスを成功させた吉角裕一朗氏に、すでに実装されている新技術を、ドラえもんのひみつ道具に照らし合わせて紹介してもらいました。

※本記事は、吉角裕一朗:著『「まだない仕事」で稼ぐ方法』(ワニ・プラス:刊)より一部抜粋編集したものです。

■ひみつ道具:室内旅行機/実物立体日光写真→ VR/AR

「室内旅行機」は、いろいろなロケーションの立体映像と環境音を出すことで、部屋に居ながらにして、旅行気分を味わえるひみつ道具です。現実と見分けがつかないほど優れた立体映像で周囲の視覚的な環境を上書きするため、あたかもそこが旅先かのように錯覚してしまう仮想現実を作り出します。

アニメでは、アフリカのジャングルや大浴場、旅館の宴会場などのロケーションが紹介されていました。

これまで旅行に行くには、飛行機や新幹線など、人間が何かの乗り物で移動するという手段が主流でしたが、このアイテムのように空間がやってくるほうが、実に効率が良いですよね。

同じ場所で待っていても、望む環境・音・空気感・匂いといったものがやってくる……これから5Gが開始されることで、送信データ量も多くなりますから、タイムラグもなくなり、さらにリアリティが増すでしょう。

人は良くも悪くも環境に影響される生き物です。いつもと同じ部屋でコーヒーを飲むより、オシャレなカフェや絶景を前に飲むコーヒーのほうが美味しく感じます。たとえ仮想現実だとしても、リフレッシュ効果は高いはず。また、病気の人やお金がない人でも、簡単に望みの空間が手に入り、どこへでも行けるでしょう。

YouTubeなどで動画コンテンツが無料で視聴できるようになったように、人と会うのも、旅行をするのも、移動することでさえ、新しいテクノロジーによりもっと手軽に、そして無料に近づいていくのではないでしょうか。

そう考えると、移動手段が進化するよりも早く、移動の概念自体が変わる時代が訪れる気がしてなりません。

また、同様のアイテムに、横幅が2メートルほどの長方形のカメラ型をした日光写真機を用いた「実物立体日光写真」というひみつ道具があります。カメラを被写体に向けて置いておくと、幅2メートルほどの大きさの感光紙に写ります。そして、そのでき上がった写真を裏から叩くと、写ったものが立体となって飛び出します。

ちなみに、木など感光紙より大きなものは縮小されて撮影されますし、被写体は人物や木、車など単体で、背景は写らない仕組みです。立体写真は風が吹くと飛ばされるほど軽い素材でできており、動物を撮影しても本物のように動くことはありません。

このひみつ道具も、空間が自分のもとにやってくるという概念は、室内旅行機と同じでしょう。空間のほうが移動してくる未来には、好きなアーティストのライブを最前列で楽しむような活用法だってできるようになります。

▲ひみつ道具:室内旅行機/実物立体日光写真→ VR/AR イメージ:PIXTA

■ひみつ道具「自動万能工事マシン」→ 3Dプリンター

「自動万能工事マシン」は、マシンの中に設計図を挿入するだけで、設計図通りのものを作ってくれるというひみつ道具です。

アニメでは広場に神殿を建てたいという、のび太の要望により、ギリシャのパルテノン神殿のような神殿を建築しています。

従来の建築は、部品を調達して現地で組み立てるといった、大変手間のかかる作業を行っていました。しかしテクノロジーの進化によって、パソコンで建物を設計し、3Dプリンターで自動で組み立てるといった「自動万能工事マシン」さながらの工程が実現しています。

例えば、アメリカのニューヨークでは、市が抱えるホームレス問題の解決策として、窓のないビルの壁面に、3Dプリンターで作った6角形の住宅ユニットを取りつけて、人の住める空間を作り出すという取り組みをFramlabという会社が行いました。

6角形の住宅ユニットの外装には、スチールやアルミニウムが使われているそうで、内装は3Dプリンターで印刷されたモジュールによって、間取りを柔軟に配置できる仕様になっています。

また、同じくアメリカのテキサス州オースティンに本拠を置くICONと、カリフォルニア州サンフランシスコにある非営利団体New Storyによる、発展途上国の住宅問題を解決するための移動式の3Dプリンター「Vulcan(バルカン)」を利用した事例が報告されています。

ICONのホームページによると、建設費用は約45万円とリーズナブルなうえ、24時間未満で床面積55平方メートルから75平方メートルくらいの平屋を建てることができるそうです。動画を見ると「Vulcan」が家を印刷するかのように、建材を積み重ねていく様子が印象的でした。

他にも、ロシアやフランスといった世界各国で同様の事例が次々と報告されています。

移動式の3Dプリンターで家を建てることで、建材の廃棄ロスが生じず、一般的な住宅建設に比べて余分な工具や材料も発生しないため、建築費用を抑えられるばかりでなく、物流コストも減らせると言います。

残念ながら、日本国内では住宅メーカーが営業や商談などで活躍する住宅模型の造形に3Dプリンターを活用するレベルが現状ではありますが、海外でこれだけ事例が増えていることを考えると、国内でも導入される日は近いでしょう。

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