松下幸之助は週刊誌から情報収集。成功者の“仕込み”時間の使い方

経営コンサルタントとして約30年間、3万人以上の経営者や起業家、エグゼクティブと接してきた上野光夫氏によると、成功者の基礎にあるのは「知性・教養」だったと言います。成功者は限られた時間の中で、仕事でも生きていくうえでも、活用できる知恵や知識を多くの分野から幅広く独学で身につけているのです。

※本記事は、上野光夫:著『成功者の自分の時間研究』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです​。

■知性と教養がなければ「ステージ」には立てない

ビジネスでもプライベートな人づき合いでも、人としてのレベルを低く見られると損してしまうものです。話の内容や使う言葉なども、稚拙な表現では相手も不安になってしまいます。

「社会人としてのレベルが低い」と思われたら、他人に影響力がなくなり、自分の人生目標の大半を達成することはできないことになります。そのため、成功する人は知性と教養のレベルを高めます。人としてのレベルを低く見積もられないためには、知性と教養を磨くことが大切なのです。

相手にいい印象を与えるためには、日頃から知性と教養を磨く努力が欠かせません。会話のテクニックだけでつくろっても、知性と教養がなければ「底の浅い人だ」と見透かされます。知性と教養とは、次のような意味があります。

【知性】
1 物事を知り、考え、判断する能力。人間の、知的作用を営む能力。
2 比較・抽象・概念化・判断・推理などの機能によって、感覚的所与を認識にまでつくりあげる精神的能力。
【教養】
1 学問、幅広い知識、精神の修養などを通して得られる創造的活力や心の豊かさ、物事に対する理解力。また、その手段としての学問・芸術・宗教などの精神活動。
2 社会生活を営む上で必要な文化に関する広い知識。

[参考:『デジタル大辞泉』(小学館)]

知性と教養は、本や新聞を読む、講演を聞く、人との会話など多種多様な方法で積み重ねて身につくものです。自分の時間を活用して、日々習得できるよう努力を続けることによって、徐々に知性と教養をレベルアップすることができるのです。知性と教養があれば、創造力も高まります。

▲知性と教養がなければ「ステージ」には立てない イメージ:PIXTA

■自分なりの基準を明確にして身につける

成功者は、知性と教養を磨くための独学を行なっています。仕事でも生きていくうえでも、活用できる知恵や知識は、多くの分野から幅広く独学で身につけていくのです。

それでは、成功する人は、どんな分野について独学をするのでしょうか。

勉強のために費やせる「自分の時間」には限りがあるので、何を勉強するかを厳選する必要があります。成功者が分野を選ぶ基準は「興味を持って楽しく取り組める分野」「ナンバーワンになれる分野」「長期間にわたり継続して勉強できる分野」になります。

▲自分なりの基準を明確にして身につける イメージ:PIXTA

1.興味を持って楽しく取り組める分野

貴重な「自分の時間」ですから、好きなことや興味のあることの独学に時間を費やします。勉強するのが苦痛では知識が身につきにくいからです。

ただし、今、興味あることだけに限定するのではなく、好奇心を持ってかじってみるということも行ないます。これまで全く知らなかった分野でも、学んでみたら「こんなに楽しいことがあったのか!」と、人生を変えるほどの出会いになることがあります。

たとえば、文系の学部を卒業して金融機関に勤めていた人が、ITに強く興味を持って勉強した結果、インターネットを活用したビジネスで起業したといった事例もあります。

2.ナンバーワンになれる分野

「他の人にはない自分ならではの強み」と言えるほど、知識豊富になれる分野があれば最適です。たとえば、銀行に勤めている人なら「貿易実務の知識なら行内で負けない」と言えるくらいまで専門知識を高めると重宝されます。

すでに自分がある程度の知識を持っている分野の中で、他に際立って詳しい人がいない、と思われるものを探して勉強することには意味があります。

3.長期間にわたり継続して勉強できる分野

長い期間をかけて、継続して勉強あるいは研究したいと思える分野が見つかると、それは知性と教養を輝かせます。勉強すればするほど深みがあることに気がついて、ライフワークと言えるほど長期的に勉強を続ける人もいます。

仕事と関係のない趣味の分野でも、長期間にわたって勉強を続けて詳しくなれば、その知識を活用して収入を得ることも可能です。

■自分にあったツールや環境で「知性・教養」を磨く

独学は、本で行なう人が多いのが現状ですが、今はやる気さえあれば、どんな分野でも学べる環境やツールが整っています。通信教育やWEB講座などがたくさんあるからです。

本から学ぶことが理想ではありますが、有料のもの以外でも、特定の分野について無料で教えてくれる動画や音声があります。スマホのアプリを検索すると「こんなものまであるのか」と驚くほど、勉強を助けてくれるものが見つかります。

外山滋比古氏は、著書『ちょっとした勉強のコツ』(PHP研究所)の中で、

「勉強はどれくらい長い時間、机に向かっているかではなく、どれだけ集中しているかによって成果が決まってくる」

と述べています。

集中しやすい勉強法は、人によって異なります。時間・場所・ツールなど、自分に合うスタイルを確立することが続けるためのコツです。

たとえば場所は、自分の部屋の机に向かって勉強するよりも、カフェなど少しざわざわしている所で勉強したほうがいい、という人が多いように感じます。静かな環境よりも、何か音があるほうが集中できることが多いのです。

「自分の時間」の中で、時間・場所・ツールを試行錯誤して、自分が集中できる方法を見つけてください。

▲自分にあったツールや環境で「知性・教養」を磨く イメージ:PIXTA

■ゴシップネタから人間心理を学ぶことも

「経営の神様」と言われるパナソニック創業者の松下幸之助は、社長を務めていた頃、車にたくさんの週刊誌を持ち込んで読んでいたそうです。今と同様に週刊誌には、一般大衆が興味を持ちそうな芸能情報など、少し下世話な記事が多く掲載されていました。

松下氏は、そうした記事をパラパラとめくって読んでいたそうです。一番の目的は、一般消費者向けの家電製品をつくっていたので、大衆の興味を理解しておくためだったようです。

今も、週刊誌やテレビのワイドショーでは、芸能人や著名人の熱愛や不倫などの、ゴシップネタで盛り上がっています。ワイドショーでは、ゴシップネタだけではなく、さまざまな情報を毎日のように流しています。

こうしたネタは、知らなくても大して影響はないので、一切気にしない人がいます。しかし、少し下世話な情報も、人間心理を知るということでは、知性のひとつです。細かいところまで知る必要はありませんが、概略を把握して自分なりのコメントや意見を言えるようにしておくことも大切です。

▲ゴシップネタから人間心理を学ぶことも イメージ:PIXTA

私には行きつけの焼き鳥店が赤坂にあります。その店は、場所柄、普通の会社員のほか、政治家や芸能人、新聞記者といった人たちが来て繁盛しています。

店主は、お客さんがどんな人でも、どんな話のネタが出ても、気の利いたコメントや質問をして場を盛り上げることができます。話題は芸能情報から政治のこと、経済問題に国際問題、地域情報に至るまで、どんなことでも詳しく話す能力を持っています。

その店が繁盛している要因のひとつは、店主が博学であることです。学歴が高いとか、新聞記者だったとかいうわけではなく、30年以上前から焼き鳥店の店主です。

どうしてこんなに知識が広いのだろうと思った私は、店主に「情報源はなんですか?」と質問してみました。すると、カウンターの下からタブロイド紙を取り出したのです。毎日、そのタブロイド紙をじっくり読んで、自分なりに考え方をまとめておくのが、店を開ける前の大事な仕込み作業のひとつだというのです。

店主は、もともと芸能情報などは興味ないそうですが、お客様へのサービスのひとつに会話があると考えているので、情報収集をしていたのです。

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