肩や腰などの“長引く痛み”を放置することの危険性とは?

長年にわたって苦しめられる「痛み」。病院へ行っても原因がわからず、鍼灸やマッサージなどに行くと、一時的には緩和するものの根本的な解決にはならない……。体のどこかしらにそんな痛みを抱えている人は多いと思います。「痛いけど、まあ死にはしないから」と、諦めにも似た境地で付き合っているかもしれませんが、実はその痛み、あなたの寿命を縮めるかもしれないのです! 痛み治療を専門としている医師・奥野祐次氏が“長引く痛み”について、わかりやすく解説してくれました。

※本記事は、奥野祐次:著『長引く痛みの原因は、血管が9割』(ワニ・プラス:刊)より一部抜粋編集したものです。

■3か月以上続くのが“長引く痛み”

あまり知られていませんが、痛みには2種類あります。普通の痛みと“長引く痛み”です。

画びょうを踏んだり、タンスに小指をぶつけたりしたときの痛みは、普通の痛みです。そのときは痛くても、せいぜい数日で良くなります。食あたりになっておなかが痛い。これも普通の痛みです。骨折や打撲をしたときの痛みも、やはり普通の痛みに分類されます。このような痛みは、非常に強い痛みとなることもありますが“長引く痛み”とは別のものです。

“長引く痛み”とは、3か月以上続く痛みのことを言います。みなさんの周りにしょっちゅう腰痛で困っている人はいませんか? 去年も腰が痛いと言っていて、今年も痛い。五十肩もそうです。もうかれこれ2年以上も肩が痛いという人もたくさんいらっしゃいます。そのような痛みは“長引く痛み”です。

また、気圧が低いとひざが痛くなるとか、寒くなると古傷がうずくとか、それらの痛みもやはり“長引く痛み”です。ほかには肩こりや頭痛があります。仕事を長時間していると肩が重くなってくる、スマホやパソコンが普及して、そういう人も増えています。

あるいは、むち打ちというものもあります。交通事故から1年以上たっているのに首の痛みがとれない。これも“長引く痛み”です。またスポーツや仕事での一定の動作の繰り返しによる痛みもあります。ゴルフをして肩が痛い、ランニングをしてかかとが痛い、仕事で重いものを運んでいて手首が痛いなど。これらも“長引く痛み”と言えるでしょう。

3か月以上続く痛みで、特に腰・肩・首・ひざ・手・足など、体を動かす場所の痛みを“長引く痛み”と呼ぶことにします。

▲3か月以上続くのが“長引く痛み” イメージ:PIXTA

■治療法がたくさんあるのは原因が解明されてないから

医学は進歩しています。ですが、進歩の具合は分野によってまちまちです。ここ5年間で大幅な進歩を遂げ、検査方法や治療法が全く様変わりしている分野もあれば、20年も30年も大きな変化がなく本質的な進歩のない分野もあります。

ある病気に対する医療がどれほど進歩しているか、その病気の理解がどれほど進んでいるかを知るには、どうしたらよいでしょうか。

その答えは、実は簡単です。その病気の治療法の数を数えればよいのです。原因が解明され治療法が確立されている病気は、治療方法がひとつかふたつしかありません。原因がはっきりしているので、その治療法も非常にクリアなのです。

反対に治療法があれもこれもたくさんあるような病気は、原因が解明されていないため、さまざまな憶測や仮説が存在していて、さまざまな治療法が世にはびこる状態になっています。この場合はその病気への理解が進んでおらず、治療方法が確立されていないことを示しているのです。

「痛みに効果がある」とうたっている治療法だけでも、どれほどあるでしょうか?

飲み薬・湿布・注射・鍼・お灸・マッサージ・カイロプラクティック・減量・心理療法・温泉療法・ストレッチ・筋トレ・電気・指圧・磁気・気功……などなど。

もし“長引く痛み”の原因が解明され「これが“長引く痛み”の原因だ」ということがはっきりして、その原因を取り去ることで必ず痛みが改善するんだということがわかったら、たくさんの理論や治療法がひしめき合うことはなくなります。

逆に言うと、いろいろな治療法が世にあるということは、それだけ決定的な治療法が確立されていないということなのです。

■「痛み」というストレスが寿命を短くしてしまう

▲「痛み」というストレスが寿命を短くしてしまう イメージ:PIXTA

今までの“長引く痛み”の診療で一番の問題だったのは「あなたはこうだから痛いのですよ、でもいついつには痛みが取れますよ」とか「今から痛みの原因を取り除きますね」ということを医療者が言えないことにあるのです。

原因が特定していないので断言できません。ですから患者さんには「いつになったら痛みが取れるのかしら」という疑問が残されます。それを答えてくれる人がいない。これが一番の問題なのです。?

「痛くたって死にゃしないよ、お前!」なんて、ドラマかなにかで出てきそうなセリフですね。お医者さんでも昔は、頻繁に使っていたフレーズかもしれません。

しかしこの言葉、最近は病院で耳にすることは少なくなりました。その理由のひとつには、医療者が患者さんに横柄な態度を取らないように心がけていることが背景にあるのかもしれませんが、もうひとつ全く別の理由があります。

実は“長引く痛み”は、寿命を短くしてしまう可能性があることがわかってきたのです。

どうして“長引く痛み”があると寿命が短くなったり、がんや心臓病になりやすくなったりするのでしょうか。

一説には、精神的なストレスが増えることや気分の落ち込みが原因ではないかとされています。

痛みがあるということ自体が、私たちにとって非常にストレスとなります。特に“長引く痛み”には「いつ治るかわからない」という性質があります。とてつもなく強い痛みが1日だけあるのと、中程度の痛みが「いつまで続くかわからない」というのとでは、わけが違います。後者のほうが精神的な負担が大きいのは容易に想像できると思います。

実際に、2010年のインターネットでのアンケート研究で、“長引く痛み”を持つ人(5998名)のうち76.7%の人が「痛みを感じているときは、やる気がなくなる」と答えています。また「痛みのせいでイライラしたり、うんざりしたり、ストレスを感じている」という人が66.1%いました。

“長引く痛み”のほかに、発がんの原因として大きな位置を占めているのが、運動不足です。運動不足を甘く見てはいけません。喫煙や飲酒の影響はもちろん大きいですが、野菜不足と比べても、運動不足は発がん原因になりやすいことがわかります。

“長引く痛み”があれば、痛みで体を動かす気にならず、運動量が落ちることは想像に難くありません。そのようなことも原因として考えられてるのです。

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