「お取込み中、失礼しました!」――間の悪い配達員の失敗談

世の中には“間が悪い”人がごまんといらっしゃいます。人の悪口を言っていたら後ろからその当人が来たり、頼みごとをしようとしたら相手が忙しかったり、などと言い出したらキリがありません。

かくいう私も、人生の節目節目をタイミングよく選択していれば、45歳間近でペダルを踏む人生を歩んでいなかったでしょう。今日はウーバーイーツで出会った、間の悪い注文者のお話しをしましょう。

ウーバーイーツは注文してから料理が届くまでに1時間、場合によっては1時間30分以上かかってしまうことがあります。そんなときに「食事は後回し!」と切り替えて仕事をしてくれている分にはいいのですが、仕事じゃなかった場合、ものすごく気まずいことになるのです……。

■脱ぎ捨てられた黒いパンスト

▲脱ぎ捨てられた黒いパンスト イメージ:PIXTA

昨年末、配達依頼が入ったのは深夜の1時すぎ。宅配ピザのチェーン店でLサイズのピザを1枚受け取り、指定されたビジネスホテルに向かいます。ホテルへ配達する場合、普通はフロントに「●●号室への配達で参りました」と声をかけると「では、こちらでお預かりします」となって配達終了となるのですが、あらかじめフロントにウーバーイーツの配達が来ることを伝えていたのでしょう。「では、お部屋に直接どうぞ」とのこと。

エレベーターで上の階へ上がり、部屋の前でノックをすると……返事がありません。もう一度ノックをしても返事がありません。そこでお客様にお電話をしたのですがつながりません。

フロントの方が通してくれたのだから不在ということはないはずなのに……と思いながら、サポートダイヤルに電話連絡。「お客様に確認しますので、少しお待ちください」と言われ、少し待っていると、果たして「ガチャリ」と部屋の扉が開けられました。

そこにいたのは、腰からバスタオルを巻いた半裸の男性。年は30歳前後でしょうか。顔は汗ばみ、息も上がっています。伏し目がちにピザを渡して頭を下げると、脱ぎ捨てられた黒いストッキングが目に入りました。いかんいかんと目を背けてあわてて部屋をあとにします。どうやら到着まで待ちきれず、いろいろ始まってしまっていたようです。お取り込み中に失礼しました!

■不思議な香りが漂う部屋から現れたのは?

夏の暑い季節に、古いアパートが立ち並ぶ下町エリアの住宅地へ、うどんを運んだときも複雑な思いを抱きました。

晩ごはんのピークタイムがそろそろ終わろうかという夜9時ごろ。うどん屋さんで渡された商品は、受け取った時点でつゆが少し冷えていました。つゆと麺はセパレートされていたので麺がのびる心配はありませんが、スープのぬるさから推測するに、配達員が決まるのに想定以上の時間がかかったと思われます。

そんな商品をリュックに入れて配達先の建物に到着。指定されたフロアにたどり着くと、なんだか独特の香りが漂っています。届け先の部屋が近づくにつれ、その香りはどんどん濃いものに……。部屋の前に着くと、冷房を入れているため窓は閉じているものの、窓や玄関のドアから香りがあふれ出しています。

ストレスの多い現代。リラックスするためにアロマなんぞ焚いているのだろうな。なんて思いながらインターホンを押すと、出てきたのは真っ白な装束をきた女性。女性は何かブツクサ言いながら商品を受け取り、部屋の扉を閉めました。その時、見てしまいました。魔法陣のような変な紋章が部屋の奥に掲げられているのを!

うーん、誰かを呪う儀式をしていたのでしょうか? いやいや、そんな時にうどんなんて食べないか? なにはともあれ、お取り込み中に失礼しました!

誰かを召喚する儀式を行なっているようでしたら、あなたが全身全霊を込めた儀式で召喚されたのが、ウーバーイーツの中年男性配達員で申し訳ございません!

■誕生日に痴話ゲンカしていた原因は・・・

去年の秋のこと。この日に運んだのは洋菓子店のケーキ。ホールサイズのものなので、何かお祝いごとかなと思いながら、デコレーションが崩れないよう慎重に運んでおりました。

目的のフロアに着くと、私と同じ中年男性のウーバーイーツの配達員が立ち尽くしております。「どうしたの?」と声をかけると窓の方を指さしました。どうやら部屋の中で男女が揉めているようです。

「誕生日を自宅で祝うのはいいわよ! こんなご時世だし。だけど、このグチャグチャの料理はなに?」
「自転車で運んでいた衝撃でフタの部分に料理がくっついてしまうことくらいあるだろう……」
「私が言いたいのはそこじゃないの! どうしてテイクアウトの容器のまま食卓に出そうとするの? 大切な日なんだから、お皿に盛り付けるぐらいのことは考えなさいよ!」
「ごめんな」
「それに、料理に合うお酒とか準備しておくでしょう?」
「それも、ウーバーイーツに頼んで……」

▲慎重に運んだきたケーキ イメージ:PIXTA

一緒にいた男性のリュックを見せてもらうと、ワインが入っていました。男性はこう話します。

「お客さんはけっこう前に注文したみたいだけど、配達員がつかまらなくて、料理が先にきて、ワインが全然こなかったみたいでさ」

私たちのせいではないことはわかっているのですが、どうしてこんなにも間が悪いのでしょう。嫌になります。部屋からは、女性の大きな声が続きます。

「あなたが私の好きそうなものを考えて選んでいるのはわかるけど、結局家でスマホをいじって注文しているだけじゃない! あなたはただスマホで検索しているだけ。お祝いをする気持ちはあるの? どうせこのあともウーバーイーツで頼んだケーキが届くんじゃないの? 自分で買い物に行ってくるとか、気持ちの込める工夫はいろいろあるでしょ!」

ドキリとしました。そう、私のリュックの中には「お誕生日おめでとう?」と書かれたプレートがケーキの上にのっています。

配達方法が「お客様に直接渡す」となっているので、ドアの前に商品を置いて立ち去るわけにはいきません。仕方ないのでワインを持っている配達員とジャンケン。負けた私がインターホンを押し、ワインとケーキを渡すことに。

インターホンを押すと、注文した男性ではなく、女性の方が出てきました。その笑顔はとても美しく声も上品でした。

▲輝く笑顔でお出迎え イメージ:PIXTA

「配達ご苦労様です。またよろしくお願いします」

窓越しに聞こえてきたものとはまったく違うトーンで話しかけられ、商品を受け取ると、そっとドアを閉じたふたりの配達員。別れたアイツも、怒らせたらこうだったな……。

1時間後、配達員用のアプリを確認すると、先ほどの方から500円のチップが支払われたという通知がありました。女性の逆鱗のツボってどこにあるのか。男性にはなかなかわからないものです。ケーキをご注文したお客様に対してそんなことを思いながら、この日は深夜まで配達を続けました。

〈Uber Eats配達員W〉

関連記事(外部サイト)