溝の口『いろは』は昭和の香りで呑む線路脇の名店

■プレイバック昭和!

まだまだ世界のお先は真っ暗、いやすこし光は見えたのかな。世の興味はオリンピックの先行きでしょうか。

オリンピックは夢の舞台だし、オリンピアンも人間的に素晴らしいと思う。だけど、資本の力でバタバタと目の前の問題をなぎ倒していく感じは、どうにも好きになれません。

あれ、真面目な話をしてしまった。さて、今回は令和とは思えないロケーションの店からお送りします。

▲このすばらしいロケーションはどうだ!

目指す店は、東急田園都市線の改札を降りるとすぐ目の前、溝の口西口商店街にあります。入り口から圧倒されます。というのも、戦後かと見間違うほどの年季の入った建物の存在感。「映画のセットかよ」と言いたくなるほど完璧な雰囲気だけど、なかには飲食店や小売店があり、人が行き交います。

▲けむりとグチを吸いこんんだ赤ちょうちん

『いろは』は、駅から一番奥にある人気店。やきとりのちょうちんが目印ですが、豚も置いてある模様。こちらは創業50年以上。この一帯は戦後の混乱期から続く飲食店街でね。昔はたくさんのお店があったそうですが、今ではかなり減ってしまって、それでも残っているお店は連日多くのお客さんで賑わっています。

▲店の前にすぐ線路があります

店の中には座席があり、常連さんらしき人たちがスイスイと吸い込まれていきます。みんな心なしかウキウキしているように見えるのはなぜでしょう。そりゃ嬉しいか。私だってきっとニヤニヤしているはず。平日に昼間から飲める仕事に就いてよかったと思う瞬間です。

▲店内にではイスをどうぞ

店の隣にも比較的広めの立ち飲みスペースがあるのですが、私は焼き台前が気に入りました。焼き鳥を焼く大将の前に立つ私の背後は、駅から抜ける通路で多くの人が行き交います。ああ、吹き抜けで気持ちがいいな。

▲立ち飲みが性に合っているのです

コロナ対策で換気をする店も多いけど、ここはその心配もない。お日様が高いうちから、こんなところで飲んでいる私に対する子連れのお母さんの視線だって気になりません。おい坊や、こんな大人になると毎日が楽しいよ。さて飲みましょう。

■ガタンゴトンと揺れながら一杯

▲ホッピーセットを注文します

今日はなんだかホッピーが飲みたい気分だったのでね。とりあえず乾杯。いやあ、うめえうめえ。焼酎は小瓶に入って提供されます。ビンはリターナブルですので、開店前に下準備さえしてしまえば、店が混雑しても提供が楽でしょうね。これはいいアイデアかもしれない。“中”が少ないぞとか、多めにしてよ、なんて厚顔な客とも無縁だ。

▲焼きものは100円から。どれもおいしい

こういう店は馴染み客が支えています。滅多に足を運ばない客である自分は、分をわきまえる(どこかで聞いたね)ようにしています。偉そうにタメ口で注文するなんて論外。でも、それって萎縮しろという意味じゃない。他人様のホームに乗り込むわけだから、最低限の礼儀をもってくつろげばいい。初めて行く義理の実家で、家に入った途端に、靴下を脱いだりしないのと同じです。

▲中にいた常連さんは小鉢を中心にオーダー。これこそホーム感

そうしていると、常連さんがあれこれ教えてくれるわけです。「このお酒は自分でとってもいいんだよ」「ありがとうございます」ってな具合でね。その後、常連さんたちと親交が深まるかといえばそんなこともなく、みなまた一人の時間に戻っていく。

スポーツ新聞を読んで、テレビから流れるワイドショーのコメントに首を傾げて、そして酒を口に含む。この店で過ごす先輩たちは、自分の時間を楽しむ達人なんじゃないかって思うわけです。いつか自分も追いつけるかしら。

▲シールがついているのが甲類焼酎、無印が芋焼酎。どんどん空き瓶が溜まっていく

私が店に入ったときはまだ日が高かったけど、気がつけば夜の気配がします。うしろでガタンゴトンと走る電車が私を勇気づけてくれる。電車があれば家には帰れますから。

そして、昼間はあまり人気のなかった周囲にも活気が出てきました。夜になると輝き出す街というのは、飲んべぇをワクワクさせます。くいくいと酒が進んで気がついたらお外は真っ暗。さて、そろそろ帰ろうかしら。

焼き鳥もうまいし、なにより雰囲気が良かった。こういう店をなくしてしまうんだったらオリンピックなんていらないや、なんてね。いやあ楽しかったな。さて次はどの街へ行こうかしら。

▲こういう雰囲気ある店を大事にしたい

<店舗情報>
■いろは
住所:神奈川県川崎市高津区溝口2-4-3
営業時間:16:00〜23:00
定休日:日曜・祝日
電話:044-811-4881
※新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。来店前にご確認ください。

〈キンマサタカ〉

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