【『インビジブル』感想2話】複雑なその魅力の通底音

Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2022年4月スタートのテレビドラマ『インビジブル』(TBS系)の見どころを連載していきます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

『その人』に望む魅力とは何だろうと考える。

洋菓子店に行くなら上質な甘味を。天ぷらの専門店に行くなら、からりと揚がった極上のエビやサクサクのかき揚げを私たちはごく当たり前に求めている。

高橋一生という役者に私たちが求めているものはなにか。この変幻自在の俳優には、一見でそれと分かるような看板はかけられない。

まるでどの国の料理がベースなのか想像もつかないが、何を頼んでも極上の一皿が現れる、路地裏にそっと開いた無国籍料理のレストランのようだ。

だが一言で言い表せなくても、例えばそこに漂うスパイスの香り、シナモンであったりジンジャーであったり、高橋一生らしいと私たちが唸る何かの共通項、複雑な香りは確かにある。それは何だろうとこのドラマを見ながら考えていた。

犯人逮捕の為なら違法な捜査も厭(いと)わない武闘派の刑事・志村貴文(高橋一生)と、インビジブルと呼ばれる闇社会の犯罪コーディネーター・キリコ(柴咲コウ)が、バディとなって見えざる犯罪者をあぶり出す『インビジブル』(TBS系金曜日22時)。

2話では、少しずつ互いの信頼関係が強まる様子が描かれていた。

今回の犯罪者は『調教師』と呼ばれる人物で、非行や家庭環境から行き場を無くした若者を取り込んで犯罪に追い込んだ上に、警察の捜査が及ぼうとすれば即座に殺して証拠を隠滅してしまう。

キリコから情報を得て、志村が捜査に奔走するものの、志村自身の認識の甘さやタイミングのずれで、『調教師』に取り込まれた二人の若者を犠牲にしてしまう。

このドラマで、高橋一生はこれまでにない激しいアクションシーンをいくつも演じているが、これまで捜査過程で問題ばかり起こしてきた志村は銃を持つことを許されていないという設定で、アクションは主に何かを振り回したり、椅子や家具で防御することがメインになっている。

2話では武器として台所のフライパンを勢いよく振り回し、小麦粉で粉塵爆発を引き起こしてネイルガン(釘打ち銃)に対抗しており、常にアクションはキレまくってるが、同時にほんのりと可笑しみが漂っている。

更に志村本人は常に眉間にしわを寄せ、一言一言の声音は荒んでいるけれども、どこか本来の甘さや生真面目さを隠しきれない瞬間があって、見ていてつい頬が緩んでしまう。

そして今回の白眉は、やはり『調教師』の犯行を止められない上に志村との間に信頼関係が得られないことに落胆しつつ、紅茶を飲もうとするキリコを制して「調教師は必ず捕まえる。だからお前も力を貸せ」と目を見ながら語りかけるシーンだろう。

キリコがカップを持とうとする手をそっと制する仕草に、「ああ、高橋一生の演技だな、それっぽいな」と思う。

敵のように振る舞いながら幼なじみの領主を守る選択(NHKの大河ドラマ『おんな城主直虎』)も、レモンを搾ることに無造作になれない青年(TBS系のドラマ『カルテット』)も、面倒くさがりつつ怪異から編集者を守る漫画家(NHKのドラマ『岸辺露伴は動かない』)も、連続殺人犯に見せながら必死に着地点を探り続ける青年実業家(TBS系のドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』)も、セクシュアルマイノリティとして人生を妥協せずに生きる青年(NHKの『恋せぬふたり』)も…。

高橋一生の演技の魅力は『柔らかなその本音を包み隠す、面倒くささとの答え合わせ』にあると思う。

複雑で分かりにくい分、更に目をこらして魅力的に見える。いったん捕らわれれば、その底深い魅力、本当に罪深いと思う。

そして今回、インビジブルのキリコは、自らの偽名を中国人の名前で『聶小倩(シッ・シウシン)』と名乗っている。

これは中国の古典短編集『聊斎志異(りょうさいしい)』に出てくる幽霊の女であり、悪い妖怪に捕らわれ、人の魂を吸い取る悪事に無理矢理荷担させられている悲しくも美しい幽霊である。幽霊の女は物語の中で、実直な男の真心と苦闘によって最後には解放される。

『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』として映画化されたこの短い文芸作品は、『聊斎志異』の本編と映画で実はラストシーンが違う。

もしもキリコ自身が選んで名乗っているこの偽名にインビジブル、つまりゴーストという意味以上の何かが込められているのなら、彼女はどんな道を選びたいのか、その道に志村貴文はどう絡んでいるのか。

そんなことを感慨深く思う2話だった。

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[文・構成/grape編集部]

かな

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