【『インビジブル』感想4話】 それは利害か信頼か

Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2022年4月スタートのテレビドラマ『インビジブル』(TBS系)の見どころを連載していきます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

互いに大人同士であるならば、別に心の底から信用しているわけでもないけれど、ふと目の前の人の言動に小さな嘘を見つけたときに、背中がひやりとするような、なんとも言えない感覚がある。

おそらく(自分も含め)大多数の人間は、自身で思うよりも、嘘というものに強い耐性がないのだと思う。

過去に目の前で相棒だった後輩を殺されて、人生が変わってしまった刑事・志村貴文(高橋一生)の前に突然現れたのは、裏社会で犯罪のコーディネートを請け負う『インビジブル』と呼ばれる女・キリコ(柴咲コウ)だった。

女は犯罪の情報と引き換えに、様々な事件解決のための実働役を引き受けるよう刑事に取引を持ちかける。そんな異色のバディを描くインビジブル(TBS系 金曜22時)。

4話では、いよいよ志村の過去の事件と現在のキリコの思惑が交錯する。

今回、志村の後輩・安野(平埜生成)を殺した犯人と同じ特殊なナイフを持つ通り魔が現れ、同時期に窃盗団による名画の盗難が相次ぐ。

無関係に見える二つの事件は繋がっていると教えられ、志村はキリコに連れられて闇オークションの会場に赴く。

セレブリティに全く無縁な無骨者の志村が、キリコ相手に高価なタキシードをまとい、ぎこちなくマナーに悪戦苦闘する様子はロマンチックに、そしてユーモアに溢れていた。

警察の作戦開始までの時間稼ぎの為に50億円を超えるオークションにおろおろしながら入札しつづける志村を、最後にキリコは「はい、おしまい。よく、できました」と囁いて制止する。

志村の目をのぞき込みながらねぎらう艶のある声に、画面越しにでもぞくっとした。

善悪の境界線を越えて、ごく自然に他者を『褒める』立場の人間であり、褒めるその行為一つで、相手に報われたような幸福感をもたらすことができると知らしめる。

それがカリスマというものの一つの発現であるなら、柴咲コウという独特の神秘性をまとった俳優の、真骨頂のシーンだと思った。

更に毎回工夫を凝らしてある、銃を持たない刑事・志村のバックヤードのアクションも、今回もまたジャケットプレイあり、皿投げありで楽しく見応えがある。

この高揚感は、往年のジャッキー・チェンに代表される香港アクション映画の面白さだと思う。おそらく物語のトーンが暗くなるであろう後半でも是非継続して見てみたい。

だが、絵画の盗難事件も無事終結、本来の目的の相手は逃したもののキリコと志村の信頼は更に深まったように見え、今回は楽しかったなと思っていた矢先、ラストの3分でストーリーは一気に暗転する。

3年前、志村の後輩を殺害したと見られる通り魔殺人の容疑者が取り調べに応じ始め、3年前の殺人の依頼者がインビジブル、つまりキリコであると自供するのである。

説明しろと、不信に揺れながら声を押し殺す志村と、ただ黙って見つめ返すキリコの場面で今回は終わる。

信頼が揺らぎ、崩れようとする瞬間にこそ、これは信頼だったのだと改めて気づく。

特殊なナイフを使う通り魔、キリコが手にした米国の犯罪者のリスト、記者である安野の妹の東子(大野いと)が撮影して手元に持つキリコの写真。

キリコという人物の善悪自体とともに、果たして彼女は『本当に』インビジブルであるのか、そうだとして単独の存在であるのか、謎は広がっていくばかりだ。

点と点を繋いでいる粗い編み目のようなそれは、果たしてこの先、志村貴文を絡め取る罠に変わるのか、あるいは落下をすくいとるセーフティーネットたりうるのか、まだ見えてこない。その編み目を満たすものが、信頼なのか利害なのかも。

その答えは、これからである。

   

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[文・構成/grape編集部]

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