「マスクの下は笑顔です」 横浜中華街のホテルで始めた、コロナを乗り越える『取り組み』とは?
2021年02月19日 17時03分 grape
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)によって、私たちの日常は大きく変化しました。
感染対策を意識した行動を取るようになり、旅行や帰省などの遠出を自粛するようになった人も多いでしょう。
そんな中、ホテルや旅館などの宿泊施設では、宿泊客に安心して楽しんでもらえるよう、さまざまな工夫や新たなサービスを始めているようです。
2021年2月上旬、神奈川県横浜市中区にあるホテル『ローズホテル横浜』に取材をしました。
■横浜中華街エリアの老舗ホテル 『ローズホテル横浜』の新たな挑戦
『ローズホテル横浜』は、横浜中華街エリアの中にあり、国内外から多くの観光客が訪れる横浜を代表するホテルの1つです。

しかし、2020年から始まったコロナウイルスの流行によって、これまでにないピンチに陥ったといいます。
ホテルの総支配人である、渡部一樹さんにお話を伺いました。
――2020年からのコロナウイルス禍によって、ホテルにどんな影響がありましたか。
ローズホテル横浜は、国内のお客様が8割、外国人のお客様は2割程度いらっしゃいます。欧米系のお客様やアジア圏ですと、台湾からのお客さまが多いですね。
ちょうど1年前になりますけども、まず最初にコロナウイルスが中国の武漢から出たということで、「中華街=中国人が多いから危ない」といった風評被害にあいました。
でも実際、横浜中華街にいらっしゃる中国の方というのは、ずっとこちらに住んでいる方で、外からたくさん来ているわけではありません。
しかし、中華街は怖いから行かないという理由でのキャンセルが出てしまって、それに追い打ちをかけてダイヤモンド・プリンセス号の件がありまして…。中華街というより「横浜全体が危ない」となってしまった。
2020年1月、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の船内でコロナウイルス感染のクラスターが発生。横浜港に停泊したことで大きな騒動になりました。
また、中国でコロナウイルスが最初に見つかったこともあり、中華街エリア全体に対するイメージの低下は深刻だったといいます。
それから1年以上が経ちますが、中国の旧正月『春節』の時期にもかかわらず、中華街の人手は少なめ。にぎやかさを取り戻すまでは、まだ時間がかかるでしょう。

感染対策はもちろん力を入れていて、部屋の清掃にはかなりの時間をかけるようになりました。お客様が手に触れる場所はすべて消毒いたします。
テレビのリモコンは直接手で触れないように、ビニールをかけ、不特定多数の人が触れるボールペンやメモ帳は下げるようになりました。
客室だけでなくレストランについても、清掃は徹底しています。お客様が出た後は消毒剤でテーブルと椅子をすべて拭き取ります。
消毒液を置くだけでなく、体温チェックのための非接触の体温計、二酸化塩素が飛んで空間除菌をするための機械なども導入しました。
あとは社員についても、人と接触した後の消毒は徹底しています。いい意味で神経質にはなりましたよね。

渡部さんいわく、「感染対策は手間がかかるけれど、目に見えないことが多い」とのこと。
ローズホテル横浜では感染対策を実施していることを分かりやすく示すため、簡単な動画を作成してウェブサイト上に掲載しています。
This is the ROSE BRAND PROMISE.
■『おもてなし』の心を大切にしたい 従業員が身に付けているものとは?
「できる限り安心して泊まってもらいたい」という想いで感染対策を徹底していると話した渡部さん。
しかしこうした感染対策を重視することで、接客の部分でさまざまな課題が発生したそうです。
その中の1つが、マスク問題。
従業員は全員マスクを着用して接客をしていますが、これによって表情が隠れてしまうのが気になったといいます。
そこで、従業員が身に付けるようになったのは…。

やはり、我々がお客様に第一印象を与えられるのが、笑顔です。
しかし、それがこのマスクによって半減してしまう。お客様に伝える意味でこの名札を始めました。
また、社員に対してもコロナ禍では元気がなくなってモチベーションが下がってしまいがちになりますので、このバッチを付けてみることによって「笑顔を忘れてはいけない」という意識付けにもなればと思っています。
もう1つは、ホテルの新入社員に対してなのですが、彼らは入社してからずっとマスクを着けています。
お互いの素顔が分からないことがあったので、社員同士がお互いに顔を覚えるという意味でも大切なのです。
新しく入った社員のコミュニケーションのためにも、取り入れたという『笑顔付きの名札』。宿泊客や同業者の人たちからも好評を得ているそうで、「これは良い取り組みだね」と言葉をかけてもらえるといいます。
「表情はやっぱりホテルマンとしては大事なところです」と渡部さんは語っていました。
ローズホテル横浜では、2021年2月現在、密を避けて楽しめるさまざまなホテルの楽しみ方を提案しています。
その1つが、ルームサービスで楽しめる食事。館内にある中華料理店『重慶飯店』のコースメニューを楽しめるほか、季節ごとにメニューの変わる『アフタヌーンティ』も人気です。

重慶飯店のルームサービスは人気が出て、コースメニューをさらに増やしたとのこと。
また、テイクアウト需要も高まっており、随時新しいメニューを更新しています。お祝いごとや、ちょっと豪華な食事を食べたい時などに利用する人は多いようです。
ほかには春節の時期に合わせて、『春節タルト』も販売。2021年はなんと3種類のカラーのタルトを作り話題になりました。


新色のグリーンはピスタチオのムースで作られているのだとか!かわいい上に、おいしそうですね。こちらは同年2月23日まで数量限定で販売しています。
また、同年3月末まで、人力舎で中華街の二大廟『関帝廟(かんていびょう)』と『媽祖廟(まそびょう)』を周り、ルームサービスで重慶飯店の食事を楽しめる宿泊プラン『横浜中華街のイルミネーションとパワースポット寺院巡りの旅』も実施中。
華やかな春節の中華街をゆっくり周って、おいしい食事も味わえるので、週末のちょっとした観光にぴったりですね。
■お得な情報が随時見れる『ドラゴンポイントカード』
ローズホテル横浜では、政府による経済支援政策『GoToキャンペーン』の実施期間中、神奈川県や東京都、千葉、埼玉といった近隣地域から新規の宿泊客が多く訪れたといいます。
そこで、新たな顧客にリピーターになってもらうべく、『ドラゴンポイントカード』というポイントカードの案内をしているとのこと。
こちらのカードはローズホテル横浜の系列店で使えるもので、全国の重慶飯店の店舗でも利用可能です。
ドラゴン電子マネーをチャージすると、還元率2%がキャッシュバックされたり、1円1ポイント換算で3万ポイントたまると、翌日に電子マネーが千円分もらえたりと、お得なサービスが付いてきます!

また、ドラゴンポイントカードのスマホアプリをダウンロードすれば、アプリ限定のクーポンやお得情報などがお知らせで流れてきますよ。
コロナ禍で環境が大きく変化する中で、できる工夫をして苦境を乗り越えようと努力する、ローズホテル横浜。
渡部さんは、インタビューの終わりに社内で行っていることについて、教えてくれました。
5年ほど前から、従業員がマルチタスクで仕事をできるように進めています。
これまでは決まった部署で決まった仕事をそれぞれしていましたが、各自がどこでも手伝えるようになれば、緊急時に、無駄なく効率よく仕事が進められるので。
こういった環境下で時間に余裕がある時に、ほかの部署や仕事を経験できれば、従業員の自信が付き、忙しくなった時にすごく力が付いていると思うんです。
「苦しい時でも、その状況をできるだけ楽しみ、新しいアイディアやチャレンジに結び付けることが大事」と話してくれた渡部さん。
ローズホテル横浜をはじめ、多くのホテルが、今できる『おもてなしの形』を考え続けているのでしょう。
ステイホームに疲れた時は、地元を応援する気持ちを込めて、近場のホテルでゆったりとした時間を過ごすのもいいかもしれません。
横浜中華街の近くまで来たら、ローズホテル横浜に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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[文・構成/grape編集部]