「鎌倉殿の13人」史実を知る歴史本6選。北条義時は転生者!?【2022年1月版】

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。鎌倉時代のパワーゲームを、三谷幸喜さんの脚本、主演・小栗旬さんをはじめとする豪華キャスト、そしてエバン・コールさんの音楽で描く。

 この記事では、歴史好きの記者が、「鎌倉殿の13人」をきっかけに、源平合戦〜鎌倉時代に興味を持った人向けに、その史実をより詳しく知れる本6冊を紹介したい。

??鎌倉武士の感性は「ヤクザ」そのもの!?

 まず1冊目は、『執権 北条氏と鎌倉幕府』(細川重男、講談社学術文庫)だ。

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 この本が面白いのは、真面目な本なのにもかかわらず、鎌倉武士たちの空気感が、ざっくばらんに描かれていることだ。ある武士2人が手紙のマナーをめぐって争い、ついには幕府に訴えた騒動を解説した一節では――。

「『当時の武士がいかに名誉を重んじたかが理解されよう』などと書けば、学問的な感じがしないでもないが、ようするに二人共、『オレを誰だと思ってやがる?! ナメるンじゃねェー!』ということであり、感性はヤクザのものである」

 なかなか面白そうでしょう?

 もちろん、本筋の内容は深い。小栗旬さんが演じる「鎌倉殿の13人」主人公、北条義時が属する「北条氏」。そんな北条氏の「はじまり」から、義時の生涯、そしてその後まで、じっくりと知ることができる。

 紹介される史実はどれも興味深いが、記者が印象に残ったのは、義時にまつわる、ある「噂」だ。義時が実は、古事記・日本書紀に登場するある人物の「生まれ変わり」だったらしい――という話が、死後50年ほどの間に広まっていたのだという。

 その人物というのは、「武内宿禰」だ。5代の天皇に仕え、死後には神として祀られた伝説的な名大臣である。「鎌倉殿の13人」でもたっぷり描かれるだろうが、一介の地方武士から、ついには日本最大の権力者に上り詰めたという数奇な人生は、「転生者」でもなければ考えられない――と当時の人は思ったのだろうか。

??木曽義仲ら「しくじり源氏」の奮闘

 「鎌倉殿の13人」で、源頼朝(演:大泉洋さん)のいとこにして、「源氏の棟梁の座を争う」ライバルとして登場するのが、木曽義仲だ。青木崇高さんが、ヒゲをたくわえた豪傑らしい風貌で演じる。

 平家を京から追い出す活躍を見せるものの、政争に翻弄されて身を亡ぼす――そんな「ついてない」名将の人生は、秋元才加さんの巴御前とのコンビで、前半の山場になりそうだ。

 その木曽義仲を取り上げたのが、『源頼政と木曽義仲 勝者になれなかった源氏』(永井晋、中公新書)だ。

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 義仲と頼朝の大きな違いとして挙げられるのが、貴族社会とのパイプの差である。頼朝は少年時代を京で過ごし、皇室や有力貴族との間にもツテがあった。「鎌倉殿の13人」でも登場する三善康信のように、京の情報を鎌倉に教えてくれる協力者もいた。

 一方の義仲は、幼いころから地方暮らしだ。そのため、良かれと思ってしたことが、都では「非常識」と見られてしまう。もちろん義仲も一筋縄ではなく、あえて「田舎者」ぶって、貴族らをやりこめたりもするのだが――。

 逆に都での人間関係に振り回されて破滅する源頼政とともに、彼ら「しくじり源氏」の奮闘を応援したくなってしまう。

??平清盛の苦労、後白河法皇の暴走

 「鎌倉殿の13人」では、松平健さん、西田敏行さんという大物俳優が、平清盛と後白河法皇という二大権力者を演じる。義時ら鎌倉武士たちに立ちふさがる、巨大な壁ともいうべき存在だ。

 『平清盛と後白河院』(元木泰雄、角川選書)は、そんな2人を中心にこの時代を描く。

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 「鎌倉殿の13人」のマツケン清盛はいかにも威厳たっぷりだが、この本から読み取れるのは、むしろ苦労性な姿だ。貴族社会の複雑に絡み合った利害関係の中で、清盛は慎重にバランスを保とうとする。しかし京の政界は曲者ぞろい。降りかかる無理難題。それをなんとか解決しながらも、同時に一歩ずつ権力を固めていく。その政治構想も含め、清盛の新しい側面が見えるだろう。

 そして、その清盛の頭痛の種が、誰あろう後白河法皇だ。利害が共通しているときはいいのだが、少しでも自分の立場が危ないと見ると、途端に暴走してしまう。とにかく困った御仁なのである。

 読んでいる側からすると、「そんなことやったら、相手を怒らすに決まってるだろ......」としか思えない行動ばかりで、実際に何度か絶体絶命のピンチに陥るのだが、ちゃっかり生き残り続ける。「鎌倉殿の13人」では「中世日本最大のトリックスター」というキャッチだが、西田敏行さんはまさに適任かも。

 同じ著者の『保元・平治の乱 平清盛 勝利への道』、『平清盛の闘い 幻の中世国家』(ともに角川ソフィア文庫)もあわせて。

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??後鳥羽上皇、源実朝...「鎌倉殿の13人」でのキャストは?

 「鎌倉殿の13人」、放送前の時点で発表された登場人物、キャストは、義時の前半生で関わる人々が中心だ。その後半生の、たとえば頼朝の息子で3代将軍となる源実朝、そして承久の乱で対決する後鳥羽上皇、といった関係者は、ドラマに登場するのか、またキャストは誰になるのか、など、2021年12月時点では明らかになっていない。

 とはいえ、この2人は登場すれば、物語のキーパーソンになることは間違いないだろう。特に後鳥羽上皇は、ドラマの「ラスボス」的存在になってもおかしくない。

 『承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱』(坂井孝一、中公新書)は、そんな義時後半生をめぐる史実が知れる一冊だ。

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 鎌倉幕府の成立とともに政治の実権は武士たちに移り、またその幕府は、早々に義時ら北条氏に牛耳られるようになった――というのが、一般的なイメージだと思う。だが実際には、京の朝廷は引き続き強力な権力を持っていた。リーダーである後鳥羽上皇は、政治・文化・軍事とさまざまな方向から立て直しを積極的に進め、また鎌倉でも、将軍・実朝が京と連携しつつ、一定のイニシアティブを握り続けていた。義時の権力は、まだ限定的だったのだ。

 ところが、実朝暗殺という、まさかの事件が起きてしまう。相互不信の連鎖から、後鳥羽上皇は、反抗的と見た義時を排除しようとする。幕府を滅ぼそうとまでしていたわけではないし、事前準備も決して怠らなかったのだが......。事態は「思いもよらない」方向へ転がっていく。

??三谷幸喜さんいわく、鎌倉時代は「本当におもしろい」

 鎌倉時代といっても、牛若丸伝説でおなじみの「源義経」(今作では菅田将暉さんが演じる)くらいしか聞いたことなかった――という人も多いかもしれない。

 しかし三谷さんは、こう断言している。

「この時代は本当におもしろい。おもしろいドラマ、おもしろい物語の要素が全部詰め込まれている時代です」(制作発表コメントより)

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、そしてこの記事で挙げた歴史本をきっかけに、あなたも「鎌倉時代沼」に足を踏み入れてみては。

(竹内 翔)

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