11人の成功例から「FIRE」の秘訣を知る

 日本が停滞している。給料はほとんど増えず、公的年金も危うい。未来に希望がない、と感じている人が少なくないことが各種調査で明らかになっている。若い世代ほどその傾向が強いようだ。ではどうすればいいか――。

 本書『絶対FIRE!』(宝島社)は、自分の人生を会社や政府に頼るのではなく、自力で開拓しようとする人への指南書だ。ムック版の実用書なので読みやすいが、なかなかハードルが高い話も盛り込まれているので、投資中級者向けといえそうだ。

??「定年まで働く」は、もう古い

 タイトルの「FIRE」は、「Financial(財政上の)」、「independence(自立)」、「Retire(退職する)」、「Early(早期に)」の頭文字を取った造語だ。要するに「経済的な自立を達成し早めに退職する」というもの。用語からも分かるように、米国で生まれた人生スタイルだ。成功者の実例などを記した本が翻訳され、さらに日本でも関連本が次々と発売されたことで、広く知られるようになった。「定年まで働く」は、もう古いのだという。

 ただし、本書によれば「FIRE」は単なる早期退職ではない。若いうちから積極的な貯蓄や投資を行い、退職後は運用益などで不労所得を形成して生活することを目指す。

 「ストレスから解放される」「お金に困らない」「時間の自由ができる」「好きなことができる」などのメリットがある。

 「FIRE」には大別して二つのスタイルがあるという。「フルFIRE」と「サイドFIRE」だ。「フル」はリタイア後に不労所得だけで生活するスタイル、「サイド」は投資収益だけでなく、副業やビジネスもやる。「フル」はそれなりの資産=元手が必要なのでハードルが高い。「サイド」はハードルが低い。

??貯蓄、不動産、投資、副業・・・

 本書は「PART1」で「フル」、「PART2」で「サイド」を解説。それぞれの計11の成功例を紹介する。

 「PART1」で登場するのは4人。「ブログアフィリエイトで自動的にもうかる仕組みを作り、資産3億円」など、話は大きいものの、相当の努力とスキルを要する。これに対し、「PART2」では、「45歳で6100万円を貯めてリタイア。その後は悠々自適のバイト生活」など、ひょっとしたら可能かも、というような実例が並ぶ。

 方式としては貯蓄、不動産、投資、副業が軸になる。以下のような、それぞれの成功者が心掛けたことなども記されている。

・コンビニに立ち寄る習慣は止める・ゲームを完全に封印した・不動産の本を約70冊読んだ・複数の店舗で使えるカードを利用する

 FIREを達成するには、会社員時代からの準備が必要だということも強調されている。実際にFIREを目指して投資を始めたものの、大失敗して大損したという話なども。「あなたのFIREタイプを診断」というチャートも掲載されているので、FIREにチャレンジする前にチェックしておくといいかもしれない。

??まずは「ほったらかし投資」から

 BOOKウォッチでは過去に投資関連書を多数紹介している。手堅い投資、慎重な投資を推奨する本が多い。

 例えば『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)は、「毎月3000円投資信託を買い続けよ」と説く。推奨しているのは「バランス型の投資信託」だ。知識のある人はご存じだと思うが、投資信託の中では地味な商品だ。それだけにリスクは少ない。

 『なぜあの人は「老後のお金」に困らないのか?』(クロスメディア・パブリッシング)も、株やFXについては消極的だ。投資信託の「ほったらかし投資」を優先している。

 荻原博子さんの『投資バカ――50歳を過ぎたら取ってはいけないお金のリスク』 (宝島社新書)は、金利が低いときは「投資」よりも「節約」を、と諭す。荻原さんの主張のポイントは「長く働けるスキルを、今日から身に付けよう」だ。

 もちろん、それが難しいから投資をやりたい、という人は少なくないだろう。荻原さんは『投資なんて、おやめなさい』(新潮社)で、「金機関と対等に渡り合えるだけの知識や経験があれば、おやりなさい」と書いている。

??不確定な要素が多い

 OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の平均賃金は、今やG7でイタリアと最下位を争い、2015年には韓国に抜かれている。日経新聞は、2021年10月16日の朝刊一面トップ横見出しで「日本の年収 30年横ばい」と書いていた。消費税や介護保険料の支払いなどもあり、可処分所得はさらに減っているのが21世紀の日本だ。

 岸田文雄首相は、賃金アップ政策を掲げているが、すぐに実現する見通しは暗い。一方で、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大、米国の金利、温暖化、脱炭素、米中関係、中国恒大集団の不動産危機など、景気の将来については不確定、不透明な要素が多い。エコノミストによる年頭の株価予想なども、昨年を振り返っても分かるように、想定外のことがいろいろと起きるので、アテにできない。

 まだ投資をやったことがない人が、将来への対策を始めるにはどうすればいいのか――。とりあえずは、本書なども含めてなるべく多くの関連書を読んだり、ネットなどの情報をチェックしたりして知識を増やしておくのがベターなのだろう。

(BOOKウォッチ編集部)

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