「察する」とは遠慮することではない。「凛とした心」を、茶道でそだてる。<第10回>

 何にも乱されず、凛として穏やか。そんな内面をつくってくれるのが、茶道だ。しんとした空間で、相手のことだけを思ってお茶を点てる。その心得と礼儀作法が、美しい心を育ててくれる。 さらには、生活習慣・所作・コミュニケーション力・「和」の知識・健康などなど......お茶は、私たちにさまざまなよいことをもたらしてくれるのだ。 でも、茶道ってなんだか敷居が高そう......。そんなあなたにおすすめしたいのが、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている 凛として美しい内面の磨き方』(実務教育出版)。裏千家茶道家の竹田理絵さんが、心を育てる茶道の本質を、ていねいにわかりやすく教えてくれる。 ここでは特別に、第1章全文を11回の連載形式でご紹介する。第10回は、「察する力」について。相手の気持ちを察する力が茶道で身につく、その理由とは。1回目から読む

(以下、本文より)相手の気持ちを推し量る ――誠実な心になる「相手の気持ちを想像して行動する」というのは、日本人らしい思いやりの気持ちを含む言葉だと思います。 日本は島国ということもあり、言葉を用いなくても、相手の気持ちを察する能力が長けていると言われます。 茶道では、静けさの美を大切にしているため、最低限の言葉しか交わしません。ですから、お茶会の場ではこの「察する」「推し量る」場面が随所に見られます。 言葉に出して言わなくとも、表情や所作からお客様の気持ちを推し量ることが大切なので、茶道を通じて「察する力」が鍛えられるのです。 よく、海外には察する文化がないといわれます。 五年ほど前、ミラノのある国際展示会でのイベントとしてお茶会を行う際、始まる直前になっても、茶道を披露する舞台ができ上がっていないことがありました。 最初のうちは「皆忙しいのだから、邪魔をしてはいけない」と催促を遠慮していましたが、一向に急ぐ気配がありません。さすがにしびれを切らして「時間がないのでなるべく早くお願いします」と伝えたところ、「なるべく早くね」とおっしゃるだけで、結局、最終日になっても舞台はでき上がりませんでした。 それからははっきりと「何時までに仕上げてください」と伝えるようにしたところ、スムーズにいくようになりました。 相手の心をより深く捉えるためには、こちらも誠実で真っすぐな心で対応することが必要です。日常生活でも、相手の気持ちを推し量り、誠実な心で相手に向き合うことで、良好な人間関係を築くことができるでしょう。

■竹田理絵(たけだ・りえ)さんプロフィール 茶道家(裏千家教授)、株式会社茶禅代表取締役。 神楽坂生まれの三代目江戸っ子。青山学院大学文学部卒業後、日本IBMに入社。日本の伝統文化の素晴らしさを伝えるため、退社後、株式会社茶禅を設立。銀座と浅草に、敷居は低いが本格的な茶道を体験できる茶室を開設する。世界30ヵ国の人々に日本の伝統文化を伝え、のべ生徒数は3万人超。また、10ヵ国以上の国々に赴き、さまざまな場所で茶道の点前を披露してきた。2017年、ブルネイ国王即位50周年時にブルネイにて茶会を披露。各国首相や大使館、官庁、VIP、一部上場企業からの信頼も厚く、お茶会を多数実施。千利休から学ぶビジネス研修は経営者が注目し、企業研修にも取り入れられている。ハーバード大学等、茶道を取り入れた教育・教養研修実績多数。初めての著書『世界のビジネスエリートが知っている 教養としての茶道』(自由国民社)は3.3万部を超えるベストセラーになった。

竹田理絵さん

竹田理絵さん

※画像提供:実務教育出版

(BOOKウォッチ編集部)

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