生きたまま火をつけられ、窓から投げられた...壮絶なDV体験も。「話すことを選んだ女性たち」の60の物語

 「男女格差後進国」の日本。しかし世界を見回せば、「女性であること」で今、この瞬間も苦しんでいる人は数えきれないほど存在している。そうした現状を圧倒的な迫力で突き付けるのが、本書、『話すことを選んだ女性たち 60人の社会・性・家・自立・暴力』(日経ナショナル ジオグラフィック社)だ。

book_20220307113131.jpg

 本書は、映像ジャーナリストのアナスタシア・ミコバさんと世界的写真家・映像監督のヤン・アルテュス=ベルトランさんが、「女性の声を聞く」ために世界50カ国・地域で2000人にインタビューを敢行したプロジェクトをもとに、およそ60人の声を紹介することで現代女性の現在地をあぶりだした意欲作。カメラの前で語る女性は、無名の個人から大統領まで国や地位も多岐にわたる。

 下の画像の4人の女性は、いずれもDV被害者だ。左ページの一番上、ブラジルのバルバラさんは、夫からのDVに耐えかね、子ども達と一緒に家を出て、経済的に自立しようとした。しかし数日後、夫はバルバラさんに火をつけ、窓から投げたという。バルバラさんは全身の40%にやけどを負い、あちこち骨折して計224回も手術を受けた。そして、2人の子どもたちは夫に殺された。それでも、5年経った今も、夫はまだ有罪判決を受けていないという。

book_20220307113207.jpg

??逃れられないのは「そうされるのが好きだから」ではない

 フランスのシャノンさんもDV被害者の一人。「ロマ」というコミュニティーに生まれたシャノンさんは、夫となる男性は生涯1人だけと決められていたため、結婚は一度しか許されない。2人目のパートナーに出会ったとき、すでに子どもが1人いたシャノンさんは、彼に対する負い目があったという。

book_20220307113236.jpg

 そんなシャノンさんの気持ちにつけこみ、「お前のように醜い女を愛する男など、ほかにはいない」とさげすみ、暴力をふるうパートナー。「こぶしで殴る段階を過ぎると、暴力はエスカレートする一方だった」とシャノンさんは振り返る。8年間に及ぶ生き地獄の末にとうとう限界を感じ、彼のもとから逃げ出した。

「彼を愛していたからすべてを受け入れたが、私が愛していたのは彼であり、暴力ではない。暴力を振るうパートナーから離れないのは『そうされるのが好きだからだろう』などと言わないでほしい。そんなことはあり得ない。殴られるのが好きな女性などいないのだ。」

 まっすぐな視線を向けている写真からは、背景にそんな悲劇があったとはとても想像ができない。

??なぜ女性だけ...?の疑問・不満は世界でも。

 本書ではテーマを大きく7つに分けている。

・女であること・自分の体を生きる・性を探求する・母になること・結婚について・暴力に対して声を上げる・自立すること

 日本の女性たちと共通の悩みもあるし、他の国や立場の人だからこそ抱える深刻な悩みも。

 たとえば、カザフ系ロシア人のナタリアさん(下の画像の右側)にとって、カザフ人の伝統を守ることはとても大切だ。「子どもを抱く女だけが、本物の女になれる」という価値観の中で育った。

「私たちの務めは、まずは子どもを産み、育て、家事をして......それからお金を稼ぐこと。」

book_20220307113336.jpg

 アイルランドの元大統領、メアリー・ロビンソンさんにもインタビューを敢行。カトリックの両親の反対を押し切ってプロテスタント男性と結婚し、アイルランド初の女性大統領となった彼女の「妥協しない生き方」とは?

book_20220307113356.jpg

??夫の許可なくパスポート取得できない国が32か国も

 女性がおかれた現状を示す統計データや、関係する論説も豊富に掲載されている。インドや中国では、1970年以来、2300万人もの女の子が、「女児を望まない」という理由による人口中絶の犠牲になっている。

book_20220307113426.jpg

 「もしも女性に生まれたら」、155の国で就業の機会が法律により制限され、104の国で男性のものとされる職業に就くことが禁じられる。さらに、32の国でパスポートの取得に夫の許可が必要で、22の国で自分の子に同じ国籍を持たせることができない。18の国では夫の許可なく働くことさえ許されず、7つの国で土地の所有を認められない。

 3月8日は国際女性デーだ。日本でも女性ならではの差別や痛みに苦しむ人たちの声を耳にすることは増えてきた。世界規模に目を向けると私たちが気づくことのできない痛みを語る人もいる。リアルな体験談を知ることで、一人ひとりが声を上げていくことの大切さを学ぶことができる一冊。

※画像提供:日経ナショナル ジオグラフィック社

(BOOKウォッチ編集部)

関連記事(外部サイト)