自分にとって都合がいい快適な世界はどこ?

自分にとって都合がいい快適な世界はどこ?

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 ステイホームで、ラジオをBGMに過ごすことが増えた。その中で「メタバース」の話題が増えてきているように感じる。気になって調べてみると、日本でも伊勢丹デパートや凸版印刷など、すでに多くの企業がメタバース事業に取り組んでいるようだ。どんどん耳にする機会が増えたメタバースとはいったい何なのか、まさにその疑問に向き合った書籍が『メタバースとは何か〜ネット上の「もう一つの世界」〜』(岡嶋裕史 著、光文社)だ。

 本書の帯には「フェイスブックはなぜ社名を「メタ(Meta)」に変えたのか?」とある。それはまさに、世界的な巨大企業GAFAMの一角をなすフェイスブック社も、メタバースが次のキラーサービスになることを想定しているためだという。

 そのメタバースとは何か、著者の岡嶋裕史さんは本書で次のように定義している。

「現実とは少し異なる理(ことわり)で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」――本書ではこれをメタバースと呼ぶ。だから、ゲームやSNS、VRと親和性が高く、これらの延長線上にメタバースを構築しようとしている企業が多いが、メタバースにゲーム性が必須というわけではない。(本文より)

 

 本書の中では、理解しやすくするための具体例として人気ゲームの「フォートナイト」を挙げている。プレイヤーは自分のアバター(ゲーム中の自分キャラクター)で、フォートナイトの世界で行動する。シューティングゲームとして武器を探して使用したり、車やヘリコプターを操縦することもできるほか、仲間を助けるなどアバター同士のコミュニケーション機能も取り入れられている。

 そして、シューティングしないモードもあり、2020年には米津玄師さんがフォートナイト内でコンサートに出演していたりもする。さらに、エモートと呼ばれる自分のアバターに表情を加えたり、ダンスをさせたりするアイテムもあり、エモートの多くは有料で販売されている。このように、ユーザーは、フォートナイトの世界の中で、シューティングゲームをしたり、コンサートに行ったり、買い物も楽しんでいるのである。

 岡嶋さんは、本書の中でVR(仮想現実)やAR(拡張現実)についても説明している。VRを仮想空間と翻訳したのがもともとマッチしていないということにも触れているが、そもそも、VRは現実の代替物ではなくてVRならではの価値があり、さらに、ARは現実だけでは体験できないことも提供できる価値があるという。そして、メタバースは、その先にある世界ということになる。その先と言っても、岡島さんによると、メタバースは手を伸ばせばもうすぐ指がひっかかるような位置まで近づいてきているというのだ。

 著者の岡嶋裕史さんは、中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程を修了した政策に関する博士号をもつ政策の専門家。富士総合研究所、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授。

 本書には、なぜ今メタバースなのか?という問いに向き合ったパートや、GAFAMをはじめ日本企業の取り組みについても多くのページが用意されている。

 政策の専門家から見ても、「現実とは少し異なる理(ことわり)で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」がもうすぐ来るというから、基本を知る上でも今読んでおくべき一冊と言えるのではないだろうか。

(BOOKウォッチ編集部)

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