映画界の性暴力は、どのように暴かれたのか。世界を変えた2人の戦い。

 映画監督の園子温さん、榊英雄さん、俳優の木下ほうかさんらが、複数の女性から「性的関係を強要された」と告発され、女優の水原希子さんも自らがプロデューサーから受けたハラスメントについて声を上げるなど、いま日本の映画界で#MeToo運動が盛り上がっている。 #MeTooに火をつけたのは、ハリウッドの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインに対する告発だ。俳優や自社の従業員など、数々の女性に対し長年にわたって性的虐待をはたらいたワインスタインは、2020年3月に禁錮23年の判決を受けた。しかし、この判決に至るまでの道のりは、途方もなく困難だった。 『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い(原題:SHE SAID)』(新潮社)の著者、ジョディ・カンターさんとミーガン・トゥーイーさんは、ともに「ニューヨーク・タイムズ」紙の記者であり、ワインスタインの性的虐待を明るみに出した張本人だ。この本には、二人が被害者の女性たちに接触を試み、説得し、取材を重ねて、真実に近づいていく足取りが克明に記されている。2020年刊行の本書は、2022年4月26日に待望の文庫判が発売された。

 ワインスタインの性暴力は、ハリウッドでは公然の秘密だった。彼は業界における権力を利用し、キャリアを積もうとする女性たちに口をつぐませていたからだ。そのせいで、ジョディさんとミーガンさんが被害者の女性たちに接触しようとしてもなかなか口を開いてもらえず、さらに調査を嗅ぎつけたワインスタインの横槍も入り、取材は困難を極めた。 それでも二人は諦めずに調査を進め、とうとう真実を明るみに引きずり出した。報道は世間に大きな影響を与えた。アメリカ中、世界中の女性たちが、自分の受けた性被害について声を上げ、#MeToo運動が爆発的に広がっていった。 この告発の背景を追うことで、改めて#MeTooの信念を見つめ直すことができるのではないだろうか。#MeTooに関心を抱いている人もそうでない人も、いまの時代を生きるすべての人に読んでもらいたい一冊だ。また本作はアメリカで映画化され、日本では2023年に公開が予定されている。本と映画で、このルポルタージュが一人でも多くの人に届くことを願っている。

■ジョディ・カンターさん、ミーガン・トゥーイーさんプロフィールともに「ニューヨーク・タイムズ」紙の調査報道記者。カンターは職場問題が専門、2度の大統領選挙の取材に従事。著書に『The Obamas』がある。トゥーイーは女性や子供の問題を得意分野とし、2014年にピュリッツァー賞調査報道部門の最終候補者に。二人は本書の基となったワインスタインについての調査報道で多くの賞を受賞し、ジャーナリズムの分野で最高の名誉とされるジョージ・ポルク賞や、「ニューヨーク・タイムズ」としてピュリッツァー賞公益部門を受賞している。

※画像提供:新潮社

(BOOKウォッチ編集部)

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