史上初、全作女性作品で話題の第167回芥川賞。BOOKウォッチの「推し」候補作は?

 第167回芥川賞候補は、史上初めて5作品全てが女性の作品となった。注目を集めている今回の芥川賞、果たしてどの作品が受賞するのか。受賞作は2022年7月20日に発表される。 BOOKウォッチでは、候補作の中から「推し」作品をピックアップした。

◼️異彩を放つ経歴。夜の街の純文学

 BOOKウォッチの「推し」作品は、鈴木涼美さんの『ギフテッド』(文藝春秋)だ。

 歓楽街でホステスとして働く主人公。彼女には病をわずらった母がいる。ホスト、風俗、友人の自殺......歓楽街の"当たり前"の現実を生きる主人公と、詩を書き続けている浮世離れした母。二人はずっと、どこかすれ違い続けていた。 元AV女優の社会学者として、夜の街の女性たちにまつわるノンフィクションや論考を書いてきた鈴木さん。本作が小説家としてのデビュー作だ。初めての小説とは思えないほどその落ち着いた文体は確立されていて、情景や人物の描写も夜の街のリアルをくっきりととらえている。 夜の街で働く女性の文学、そして普遍的な母娘の文学として、とてもクオリティの高い作品。BOOKウォッチでは、本作の書評<元AV女優の社会学者が書いた、夜の街の文学。>を掲載している。

 そのほかの4作品も簡単に紹介しよう。

◼️憎しみ、違和感。ほとばしる若いエネルギー

山下紘加『あくてえ』(河出書房新社)

 19歳のゆめは小説家志望。90歳の憎たらしいばばあと母親と3人暮らしだ。「あくてえ」とは「悪態」がなまったもの。ままならない日々に、ゆめはあくてえばかりつく。

年森瑛『N/A』(文藝春秋)

 まどかは高校2年生。生理がめんどうで過度なダイエットをし、男子との恋愛がめんどうで女の人と付き合っている。カテゴライズに一石を投じる新時代の文学。 書評はこちら<金原ひとみ、村田沙耶香絶賛。"マイノリティーにも属せない"女子高生を描いた破格のデビュー作>

◼️これぞ芥川賞。一筋縄ではいかないワールド

高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)

 「わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」「いいね」職場にいる、自分と価値観が違う、ああなりたくない、"苦手"な人。そんな人に「いじわる」したら一体どうなる......? 書評はこちら<予定調和じゃ物足りないあなたに、この小説を。>

小砂川チト『家庭用安心坑夫』(講談社)

 廃坑テーマパークにある坑夫姿のマネキンが父親なのだと、母に言い聞かされて育った小波。大人になり東京で結婚した彼女の日常に、その坑夫が姿を現すようになり......。

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