「ワクチンパスポート」で帰国時の2週間の隔離は 「Go To」復活の期待も?

「ワクチンパスポート」の申請受け付けが2021年7月26日から始まった。新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたことを証明するものだ。当面は、海外渡航の際の利用を想定しており、発行対象者は、海外渡航予定のある人だ。諸外国にスムーズに入国できるということで、航空業界などから歓迎の声が上がっているが、課題も多い。

■利用可能は5か国

一つは利用可能な国が、イタリアやトルコなどまだ多くないこと。日本にとって最重要な貿易相手国とは言えない。したがってただちに大きな効果は期待できそうにない。時事通信は、「影響は限定的」「企業にとって重要な国が(対象国として)増えれば経済活動の点でプラス」という大企業関係者の声を伝えている。

さらに、パスポートを利用しても、海外から日本に帰国するときの「2週間の隔離」については、変更がないことも課題として指摘されている。時事通信は、「日本入国時の緩和の実施も希望する」など、今後の運用拡大を求める企業の声も紹介している。

パスポートについては、ワクチン接種は個人の自由意思にゆだねられているにもかかわらず、その結果を公的に証明するという仕組みそのものについての疑問や批判もある。したがって、まだ導入した国は多くはない。また、他国が発行しているワクチン証明書を持参した入国者について、日本政府が隔離免除などの措置は取っていないこともあり、今のところ利用可能な国が急増しそうな気配はない。

■「ブレークスルー」が問題に

パスポートの有効期限もはっきりしない。発行実務を担当する各自治体ではQ&Aで疑問に答えているが、茨城県つくば市のウェブサイトは次のように説明している。

「ワクチン接種証明書については、あくまで接種を受けた本人の接種の事実を証明するものであることから、それ自体に有効期限を設けるものではありません。記載事項をどのように評価し活用するかは、一義的には証明書の提示を受ける側(相手国等)が判断することです」

そもそもワクチンの有効期間は明らかになっていない。米国などでは2回では足りず、3回目を接種する「ブースター接種」が検討されている。パスポートの有効期間の判断は相手国任せということのようだ。

また、このところワクチンを接種したのにもかかわらず感染するという「ブレークスルー」も問題になっている。パスポートによる保証は完ぺきとはいえないのが現状だ。

■経団連は「国内利用」を提言

ワクチンパスポートの利用は今のところ海外向けだが、国内でも活用できないかという声もある。経済界からは、このパスポートを通して、新型コロナで大きく落ち込んだ個人消費の回復につなげたいという期待が高まっている。経団連は6月24日の「提言」で具体案を示している。

NHKによると、1つは「各種割引」への利用。ワクチンパスポートを提示すれば、飲食の代金や施設の利用料が割り引かれたり、ポイントが付いたりするというもの。

もう一つは、「国内移動」。検査の陰性証明書も組み合わせて、国内ツアーの参加や移動の自粛制限を緩和するもの。このほか、イベント会場や競技場への「優先入場」や、介護施設や医療機関の面会制限を緩やかにするといった「活動制限の緩和」も盛り込まれている。

ワクチンパスポートを利用することで、批判を浴びた「Go To Eat」や「Go To トラベル」を復活させようとする狙いが経済界にはあるようだ。

7月1日のNHK「ニュース シブ5時」で経済部の永野博孝デスクは、解説している。

「ワクチンパスポートを国内で活用するとなると、ワクチン接種を『受けた人』と『受けていない人』との間で不公平感が生じかねません。さまざまな理由からワクチンを受けられない人、または受けたくない人もいます」
「そうした人たちにしっかり配慮することが大切ですし、差別や偏見、同調圧力につながらないようにしなければならないと思います」
「政府は、ワクチンパスポートの国内利用は想定していないという立場ですが、今後活用に向けてどのような議論が行われるのか、関心を向けながら注意深く見ていく必要がありそうです」


(2021年8月2日追記)内容を一部修正しました。

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