熊本に建設中のTSMCの工場を見てきた。将来iPhoneの心臓部もここで作る!?

熊本に建設中のTSMCの工場を見てきた。この工場建設には1兆1000億円以上が投資されており、現在は12ナノ、16ナノ、22ナノ、28ナノ製品が作られると言われているが、早くも第2工場の建設が決定しており、将来的に、iPhoneのAシリーズチップや、MacのMシリーズチップなど、世界最高峰の技術を持つ半導体の生産も行われるかもしれない。

実際に見てみると、本当に驚くほど巨大で、この工場がもたらす雇用や、熊本と台湾との交流などが楽しみになる。

阿蘇くまもと空港の整備に期待が集まる理由

筆者が熊本に取材に行ったのは、阿蘇くまもと空港新旅客ターミナルビルのオープンと、そこに設置されるYo-Kai Expressの自動調理販売機のためだが、そもそもその背後には熊本、台湾、シリコンバレーの結びつきと、将来的な展望があり、それを見ておきたかったのもある。

23日オープンの熊本空港 新旅客ターミナルビルに設置されたYo-Kai Expressが繋ぐ、熊本-台湾-シリコンバレー

23日オープンの熊本空港 新旅客ターミナルビルに設置されたYo-Kai Expressが繋ぐ、熊本-台湾-シリコンバレー

2023年03月27日

3月23日オープンの阿蘇くまもと空港新旅客ターミナルを公開直前に体験!

3月23日オープンの阿蘇くまもと空港新旅客ターミナルを公開直前に体験!

2023年03月27日

阿蘇くまもと空港新旅客ターミナルビルのオープン初日には、熊本-台北のチャーター機が飛んでいる。これはTSMCの工場新設にともない、TSMCやその関連会社の人たちが熊本 -台北の往復をする頻度が増えることを見越して、定期便を飛ばすことを見据えたテストフライトだと思われる。

IoT化の進行により、あらゆるデバイスにチップセットが搭載されるようになっているが、半導体の供給は不十分な状態だ。しかも、世界の95%の半導体は台湾で生産されているという偏った現状がある。そのうちの半分、特に最先端の高集積密度のチップの多くをTSMCが生産してる。

台中にあるTSMCの工場。

台湾海峡の緊張が高まりつつある今、中国が台湾に軍事侵攻するようなことがあれば、西側諸国は、半導体を手に入れることができなくなる。

台湾、テキサスに続く、 TSMCの半導体工場

その対策として、アメリカ・テキサス州にTSMCの最先端設備の工場が誘致され、さらには熊本にも工場が造られる……というわけである。

熊本の工場への投資はなんと1兆1000億円以上。現在は12ナノ、16ナノ、22ナノ、28ナノ製品が作られると言われているが、さらに集積度の高い製品を生産可能な第2工場の建設も決定している。そこで、3ナノ、4ナノレベルのチップセットを製造可能であれば、iPhoneに使われる Aシリーズチップや、Macに使われるMシリーズチップの製造も可能ということになる。

となると、昨年12月の来日の折りに、アップルのティム・クックCEOが熊本を訪れたという意味についても、つい深読みしてしまう。彼は将来、iPhoneやMacの心臓部が生産される場所を見ておきたかったのかもしれない。

Great to be back in Japan! Visited the historic Kumamoto Castle and learned about their work to restore this incredible landmark. 🇯🇵 pic.twitter.com/SOGAqnfud4

— Tim Cook (@tim_cook) December 12, 2022

ティム・クックが来日した理由と、日本への1,000億ドル以上の投資

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2022年12月13日

農業地帯に忽然と現われる巨大な工場

さて、そのTSMCの熊本工場の場所というのはこちらである。

場所は、熊本県菊池郡菊陽町。地図をご覧いただければ分かるように、阿蘇山の巨大なカルデラのふもとに広がる、熊本市街との間に広がる平地。また、熊本空港から8km。車で20分ほどの立地である。

ここであれば、東京からも簡単に来られるし、熊本 – 台湾の直行便が実現すれば、東京に出るのと、さほど変わらない時間で台湾から来ることができる。

というわけで、レンタカーを走らせて、現地に向かってみた。熊本空港から20分、熊本市街からも1時間かからないほどで、現場を見ることができる。のどかな田園風景の彼方に巨大な構造物が建築中であることが見て取れる。

このあたりは、熊本テクノポリス計画の一環として、『セミコンテクノパーク』として熊本県が造成した土地の一角となる。

近づくににつれ、その異様な巨大さが分かってくる。

ぐるりと周りを回ってみたが、建築に使われているのはこのあたりの土地。

航空写真で見ると、元々は田畑が広がっていた土地のようだ。

周りが広いので分かりにくいが、この土地、長辺が渋谷 – 原宿に匹敵するほどの大きさである。

そこに何棟かの建物が繋がったカタチで建築が進んでいた。

上に立って作業している人の大きさを見ると、この工場がいかに巨大かご理解いただけると思う。

TSMCの日本法人はJASM

ちなみに、現地には、今のところ『TSMC』という表記はない。 地図上にある『Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下 JASM)』というのが、 TSMCの子会社である。

アップルのマップにJASM工場と表記されている場所にはご覧のようなプレハブ建ての事務所が構築されている。

もう少しウロウロ走ってみると、フェンスに建築許可証が貼ってあった。この土地を工事する許可を受けているのは、 JASMであることが明記されいてる。

ティム・クックは隣の工場に来ている

この建設中の工場のすぐ横には、ソニーセミコンダクタソリューションズの工場がある。

ここは、カメラのセンサーを製造している工場である。ソニー他、何社かのカメラのセンサー、そしてすべてのiPhoneのセンサーはここで製造されている。

ティム・クックが熊本のソニーを訪れた理由と、脱炭素化コミット

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2022年12月15日

ティム・クックは訪日時にこの工場を訪れている。つまり、建設中の TSMCの工場の横も通っているはずだ。

半導体製造を支える豊かな水源

その後、阿蘇山の方にドライブしてみた。

この写真は白川水源というところだが、下の砂地からこんこんと水が湧き続けている(ブルーに見える部分。阿蘇山が巨大なろ過器となって、大量の美しい水を供給してるのだ。

きれいな水が大量に必要な半導体製造には適した土地だといえるだろう。

台湾、熊本、そしてシリコンバレーの交流は、今後、益々深まっていきそうである。

(村上タクタ)

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