3999円のニセApple Pencilは使い物になるか?

筆者は、ニセモノ、コピー品を良しとしないスタンスである。

それは、本物の製品を開発した人に対する冒涜だと思うし、ThunderVoltでもオリジナリティのある、極力本物の製品を紹介しようと思っている。

しかし、今回に関してはその主義をちょっと曲げて、ニセApple Pencilについて、検証してみようと思う。

若い人に『Amazonで売ってるのって、使えるんですか?』と聞かれた

というのも、会社(ヘリテージ社)の若い女性スタッフに「Amazonで売ってるApple Pencilっぽいペンって使えるんですか?」と聞かれたからだ。

最初は「ニセモノに興味はないので、知らない」と答えた。けれど、筆者もいい歳なので、若い人の疑問は注意深く受け止めることにしているので、再考した。

確かに20代の若い人や、学生さんたちにとって、Apple Pencil(第2世代)の1万9880円という価格はあまりに高いのもよく分かる。円安もあって、アップル製品の価格は、他と較べて高価になってしまっている。

特に小中学生が約2万円のペンを使わなくちゃいけなくて、紛失したらメッチャ怒られるなんてかわいそうだ。子どもは物をなくすものだし、2万円というのが、どういう金額なのかも分からない。見た目が同じだから友達との取り違えなんかも起こるだろう。純正のApple Pencilはとても素晴らしいが、さすがに子どもが使うには高価すぎるのではないだろうか?

というわけで、今回は情にほだされてポリシーを少し曲げる。

「ほとんど同じに見えるし、3000〜4000円のジェネリックApple Pencilで済むなら、それでいい」と、若い人が考えるのももっともだ。では、そのジェネリックPencilはどんな機能を持っていて、本物と何が違うのか? それを確認してみよう。

外見は、ほとんど同じ

というわけで、筆者が買ってみたのはこちら。

STOUCHI iPadペンシル スタイラスペン
https://amzn.to/3Z2LR8t

商品名は『iPadペンシル スタイラスペン』となっている。さすがに、『Apple Pencil』とは言わないらしい。しかし、カタチはまったく同じだ。このあたりで意匠権を主張するのは難しいのだろうか? 3999円。プラスチックのケースと、USB-C接続の充電ケーブルが付属するなんて、本物より親切だ(笑)

ちなみに、この充電ケーブル、本物のApple Pencil(第2世代)を充電することもできる。便利(汗)

素材感もほとんど同じ。唯一の識別点は、『Pencil』ではなく、『Pencil』と書かれているということだ。おそらく、マークが入っていると、意匠権を主張されるのだろう。

先端のチップ部分もほぼ同様。同じように見える。

ペアリングは、純正と違ってひと手間かかる

さて、使ってみよう。

マグネットで貼り付けてみると、認識はするがこれではペアリングはしない。

単なるBluetoothデバイスとして認識させる必要がある。

ただし、Apple Pencilを認識していると、そちらを優先するので、Apple Pencilの認識をオフにする必要がある。

最大の違いは、筆圧検知機能がないこと

ペアリングすると、スタイラスとして使えるようになる。

そもそも、iPhoneなどのマルチタッチパネルは『静電容量方式』といって、タッチパネルの静電気に指先が触った時に感知することによって、指が触れた位置を認識する仕組みになっている。

それに対して、Apple Pencilは内蔵のバッテリーでわずかな電磁波を発生してそれをiPad側で感知する仕組みになっているようである(明確な記述はないけれど)。

このジェネリックPencilも、その点は同じ仕組みのようである。傾き検知もディスプレイ側の機能だから実装されている。

ただし、筆圧検知は、Apple PencilとiPad本体がBluetoothで通信しながら実現している機能なので、これは利用できない。

ジェネリックPencilと較べて、Apple Pencilの最大の特徴は、『筆圧検知で、多彩な太さの線を描く表現力がある』ということになる。

Apple Pencil

しかし、ジェネリックPencilは均等な幅の線しか引くことができない。

ジェネリックPencil

『筆圧を検知することができる』というのが、Apple Pencilの最大のメリットということになる。

Apple Pencil

前述した通り、ジェネリックPencilは、均等な線しか描けない。ただし、傾き検知は可能だから傾きによって線の太さをアレンジすることができる。

均等な太さの線を描くには、案外こちらの方が便利ということもあるかもしれない。

ジェネリックPencil

メモを取るだけなら、ジェネリックPencilでも使える

豊かな表現力こそがApple Pencilの魅力だとは思うが、単にメモを取るような用途ならあまり違いは感じられない。

Apple Pencil

同じような線を描いても、筆圧検知があるから、表現力豊になるのだ。

こちらが、ジェネリックPencilのタッチ。

ジェネリックPencil

細かいディテールを見たら、様子が違うのは分かると思うが、メモを取る程度の用途であれば使えることが分かる。

レイテンシーやバッテリーライフにもおそらく差がある

結論としては、ジェネリックPencilは筆圧検知が行えず、筆圧による表現ができないから、絵を描きたいと思う人は、絶対に正規のApple Pencilを使った方がいい。

また、サイドに磁力でくっつけることでペアリングする機能も使えない。パームリジェクションは働いているように思えるが、レイテンシーなどが純正品と同じなのかどうかは分からない。

Apple Pencilは第1世代から第2世代になる時にさらにレスポンスを上げていたりするので、素早くペン先を動かした時のレイテンシーには差があるかもしれない。筆者が試した程度では、感じられなかったが、マンガ家の方などプロの作業だと違いを感じるかも。

また、耐久性、故障しないかどうかなどについても、分からない。バッテリーライフも同様。文字通り、保証の限りでない。

というわけで、メモを取るのに使う程度なら、ジェネリックPencilでもいいもしれない。絵を描くなら、絶対にApple Pencilが必要だ。

あと、もうひとつのメリットとして、ジェネリックPencilは第1世代Apple Pencil対応の端末でも動作する(筆者は、iPad mini(第5世代で試した)。これは意外なメリット。

たとえば、筆者のように、iPad Pro(第3世代)とiPad mini(第5世代)を持ち歩く人なら、1本のPencilで賄えるというのもメリットではある。

もちろん、買えるなら純正品を買うべきだとは思う。しかし、学生さんや若い人で、どうしても純正品が高くて買えない……というような場合は、上記のような違いについて考えてみた上で、ジェネリックPencilを使ってみるのもひとつの選択肢かな……とは思う。

(村上タクタ)

こちらが本物。

こちらが、筆者が試してみたニセモノ。

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