「ドラクエY」2つの世界

ドラクエVIの全体像を考察

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▲オリジナルのスーパーファミコン版「ドラゴンクエストY 幻の大地」。パッケージはVHSのビデオテープほどもある大きなものだった・・・・・・。

「ドラゴンクエストY 幻の大地」は、スーパーファミコン用ソフトとして、1995年12月9日に発売になった。
結果的にスーパーファミコンで発売になったドラクエシリーズは、このYで最後となり、以降の作品はSONYのプレイステーションで発売されることになった。
ファミコン時代から続いていた、任天堂の快進撃に陰りが見え始めたのは、ちょうどこの頃からである・・・・・・。


ドラクエYのフィールドマップは、上下2層構造になっており、それぞれの世界を行き来しながら、物語を進めて行くことになる。
ちなみにゲーム開始直後の主人公がいるのは「上側の世界」になる。


そしてこの世界では、下側の世界のことを、「幻の大地」と呼んでいた。
「あれ、幻の大地って、どこかで聞いたことがあるなと思っていたら、ドラクエYのサブタイトルとして、パッケージにもしっかりと書かれているではないか。


ところが物語が進んで行くと、じつは下側の世界こそが「現実の世界」であり、ゲーム開始直後に主人公がいる上側の世界は、「人々の夢の世界=幻の大地」であることが判明するのだ。
なんともややこしい話である。


こうして1つ1つ順を追って説明してもらえれば、なんとなくこの世界の仕組みを理解出来る気もするのだが、実際には情報はストーリーの進行に伴って、少しずつ小出しにされて出て来るので、結局のところ最後までこの世界の構図を、きちんと理解出来なかった人も多かったようだ。
この点が不評だったのか、なんとリメイク版では大胆にも2つの世界の秘密が、はっきりと語られるイベントが追加されている。


ちなみに私はオリジナル世代なので、最後までこの構図について、分かったような、分からないような、もやもやとしたものを抱えながら、エンディングを迎えたのを覚えている。
そのせいなのかどうなのかは分からないが、個人的にはドラクエシリーズの中でYは、最も印象の薄い作品となっている・・・・・・。


ところで、そもそもYの世界は、なぜこのような二重構造になっているのだろう。
じつはこれ、元をたどればYのラスボス、大魔王デスタムーアが全ての原因を作り出していたのだ。


当初、デスタムーアは、下側の世界(現実の世界)で世界征服を企てる。
デスタムーアは、まずは自らの計画の前に立ちはだかる3つの施設を制圧する。


勇者を生み出す可能性のあるダーマ神殿、強力な武具や旅の大きな助けになるであろうお宝が眠るメダル王の城、そして究極魔法マダンテを継承する魔法都市カルベローナ。


デスタムーアはそれら3つの施設を滅ぼしても、人々の記憶として残り続けることを警戒した。
そしてそれならば、人々の心まで支配してしまおうと、夢の世界を具現化し、上側の世界を作り出したのである。


どうやらデスタムーアは、現実の世界と夢の世界の両方を支配しなければ、安心出来なかったということらしい。
大魔王とは言うものの、「いつか伝説の勇者が自分を倒しに来るかもしれない」という不安を抱え、常に怯え続けていたのかもしれない・・・・・・。


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▲パッケージの後ろ側には、物語についての簡単な解説が書かれている。これを見ただけでは、ドラクエYの世界観を理解することは出来ない。ドラクエYの世界観はストーリーが進むにつれて、ぼんやりと浮かび上がって来るのだ・・・・・・。

じつは現実の世界と、夢の世界は、何気なくフィールド上を歩いている時にも、その違いを実感することが出来る。
現実の世界は、草原は黄緑色で、まるで春の若葉のような印象になっている。
そして海の色は青く濃い色合いをしている。
更にBGMは夢の世界と比べるとテンポが早めになっている。


一方、夢の世界では、草の色は濃く、まるで夏の草原のような印象に。
そして海の色は水色の淡い色合いになっており、BGMはテンポが遅く音程が低く抑えられている。
また、フィールドマップを開いて見ると、現実の世界は角ばっているのに対して、夢の世界は丸みを帯びた印象になっている。


で、プレーヤーはこの2つの世界を行き来しながら、物語を進めて行く訳なのだが、2つの世界の移動方法がまた、なんともアナログなのである。


まず、1つ目の移動方法は井戸。
ドラクエの世界では井戸は非常にミステリアスな空間で、外見を真に受けて、ただの井戸だと思わない方がよい。


井戸は時にはモンスターの佇む広大なダンジョンになっていたり、いったい何のための空間なのかは不明だが、中で人が普通に歩き回っていることもある。
また、場合によっては、井戸の中に家を建てて、人が住んでいるなんてこともあるのだ。


もはや井戸本来の目的は、どこかへ行ってしまっていると言っていいだろう。
いったい何の目的で、町の中にそんなものを作る必要があるのか、全くもって意味が分からない。


だから井戸が2つの世界間を行き来する、移動手段になっていても、この世界では驚くには値しないのである。


そしてもう一つの移動方法はなんと階段。
普通に階段を登ったり、下ったりすることで、上側の世界と下側の世界を、行き来することが出来てしまうのだ。
なんて便利な階段なのだろう。


階段を上った先が別の世界になっているなんて、なんとも夢のある話ではないか。
しかし、そうとは知らずに階段を利用してしまったら、きっとパニックになるに違いない。
なんだか「恐怖の階段」とかいうタイトルで、学校の七不思議にありそうな話である・・・・・・。


しかし、上側の世界は、もともとは夢の世界である。
ということは、そもそも2つの世界間は、移動することが出来ないはずなのだ。


「上側の世界=夢の世界」が、大地として実体化していられるのは、大魔王デスタムーアがこの世に存在しているからに他ならない。
だから主人公一行が大魔王デスタムーアを倒してしまえば、「上側の世界=夢の世界」の実体化は解けてしまうことになる。
つまり、「下側の世界=現実の世界」からは、認識することが出来なくなってしまう訳だ。


そしてそれは上側の世界で暮らす人たちとの別れを意味することにもなる。
この構図こそが、ドラクエYのストーリーの肝であり、哀しくもぼんやりとした、独特の世界観を作り出していたのである・・・・・・。


ちなみに私は、この原稿をまとめることで、ようやくこの世界の全体像を、ちゃんと把握出来たような気がする。
そしてそれには、ドラクエY(オリジナル版)の発売から、じつに26年の歳月がかかったことになる。
なんだかなぁ・・・・・・。